傍線部Aより愛を込めて ~映画の傍線部解釈~

主にひとり映画反省会。人の嫌いなものが好きらしい。

感想「オールド・ボーイ」

 恨みって言うのは、どこで商売しているかわからない。

※この映画の感想は読んだだけで気分が悪くなる可能性があるので体調が悪い人は読まないに限ります。

 

 

【あらすじ】

 平凡なサラリーマンだったはずのオ・デスは急に何者かにさらわれ、15年間どこかに監禁される。何故か妻殺しの犯人とされ、娘もどこかへ行ってしまった。それから急に解放された彼は何故自身が閉じ込められたのかを解明しないかというゲームを持ちかけられる。

 

 【感想(深刻なネタバレあり)】

 エグっ。うわエグっ。聞いてはいたけどエグっ。後味が悪いとかそういう次元をはるかに超えて、もうエグい以外の言葉がない。とにかく救いがどこにもない。

 

 まずオ・デスの監禁生活の救いの無さがすさまじい。監禁生活とはいえテレビも食事も保障されていて悲壮感ただよう檻の中という感じではないけれど、まず「何故閉じ込められたのか」がわからないというところに不条理を感じるので、多少の自由があったほうがオ・デスの絶望が伝わりやすいかなと思いました。そして何故か突然解放され、何故か入った日本料理屋。そこにいる女の子ミドと何故か仲良くなり、監禁の謎の解明に突き合わせることになります。

 

 まずオ・デスが向かったのは自分が監禁されていた場所です。そこは非合法な手段で厄介な人を監禁する施設でした。そこにいた男の歯をバッキバキに折ったりその辺のチンピラをバッタバッタとなぎ倒したりと、この辺は痛いとかアクション要素とかあったりします。あとは終始こんな感じで話が進むのかと思ったら大間違いで、実はこの後アクション以上に痛々しい展開が待っていました。

 

 いろんな調査の結果わかってきたのは、どうやら高校時代に秘密があるようで途中で転校した母校へミドと赴くことになります。その途中想いを共にする二人は結ばれます。「えっこのシーン要るの?おっぱい枠?」とか思ったのですが実は非常に重要なシーンでした。

 

 そこでいろいろわかってきたこと。監禁した男はイ・ウジンというオ・デスの同級生。オ・デスはイ・ウジンが彼の姉と教室でセックスしているところを見てしまい、それを親友にだけ「こんなの見ちゃった」と告げて引っ越してしまいます。それから噂が広まり、彼の姉は自殺してしまいます。イ・ウジンはオ・デスを逆恨みして監禁したのだという物語がわかり、オ・デスは怒りとも悲しみともやるせなさともわからない気持ちに襲われます。とにかくイ・ウジンに会うしかないわけです。

 

 それからオ・デスはイ・ウジンに詰め寄ります。妻を殺され、娘と離され、自身の人生も潰された男の身としてはイ・ウジンをどうにかしてやりたいという気持ちはよーくわかるのです。そこでイ・ウジンは彼を監禁した真の理由を明かします。妻殺しの際になくなったはずの家族アルバム。外国へ養子に出されたと思っていた娘の15年間が写っていて、成長した娘はミドになりました。

 

 催眠術によって、オ・デスは実の娘と交わりをもつことになったのです。

 

 この事実を知ったオ・デスは非常にうろたえ、イ・ウジンに「このことをミドには言わないでくれ」と懇願し、遂には二度と喋らないという誓いを立てて舌を切り落とします。その様子を見て満足したイ・ウジンは自ら命を絶ちます。その後オ・デスは正体を明かさないまま、何も知らないミドと暮らしていくという結末を迎えます。

 

 とにかくこの結末を見ると「オ・デス悪くなくね?」一点に尽きます。「近親相姦の恨みは近親相姦で」みたいなイ・ウジンの考え方はわからなくはないのですが、元はと言えば我慢できず誰が見ているかわからない教室でおっ始めたイ・ウジンが全面的に悪い。もう完全に逆恨みです。やり場のない怒りを完全に責任転嫁した感じです。

 

 それにしても気の長い復讐です。姉の復讐とはいえ、そもそも身から出た錆を逆恨みして「アイツにも近親相姦させたろ!」と15年娘と隔離して、そんで人生をかけた復讐を成功させて死んでいく。このイ・ウジンという男が心底怖いです。何を食べてたらそういう発想ができるんだろう。この映画の原作である漫画版も相当イカれた理由らしいけど、この映画のほうが適度に狂気が強化されてていいと思いました。

 

 この結末もなかなか味わい深いのですが、映像も重ったるくて適度に暗くて、でもどこかギラギラした感じが非常に雰囲気出していてなかなか素敵でした。個人的に好きな映画です。おしまい。