傍線部Aより愛を込めて ~映画の傍線部解釈~

主にひとり映画反省会。人の嫌いなものが好きらしい。

感想「31」

 これが俺たちのハロウィンだ!!

 


ロブ・ゾンビ監督最新作 『31』 <サーティーワン>予告編 NEW

 

【あらすじ】

 70年代のアメリカ。サーカスとして興行をしているらしい一行が、あるとき襲撃される。気が付くと怪しげな館に監禁されている。そして「12時間生き残れば君たちの勝ち」というゲームに強制的に参加させられることになる。

 

 【感想(ネタバレなし)】

 ロブ・ゾンビ最新作と言うことでウキウキして見に行きました。彼の魅力は露悪的なところだけでなく「俺がこう思ったからこういう映像なんだ!」というビジュアルが鮮明になっているというところです。そういう人の作る映画は例えシナリオが適当でもすっごく面白いのです。

 

 今回は「誰が生き残るのかな?」ということでデス・ゲームの要素を入れたいつも通りのヒャッハーパーティーになっていました。ただ「一人一人殺されていく」くらいしか話の内容は本当にないので、ロブ・ゾンビの世界をとことん堪能するのがこの映画の目的です。新たな知見などは一切得られないのでそこのところは注意です。

 

 今回は本当にお祭り騒ぎのようなオールスター感謝祭みたいなキャラクターがたくさんでお腹いっぱいになります。めちゃんこ怪しいゲームの主催者に「狩人」と呼ばれるヒャッハー要員もひとりずつキャラが濃いですし、何より被害者になるサーカスの一行たちも存在感が半端ないです。そんなキャラクター映画です。

 

 そしていつも通り「ロブ・ゾンビの嫁さん」ことシェリ・ムーン・ゾンビ無双になります。前半から飛ばしまくりの彼女も今作の見どころのひとつですね!

 

 以下ネタバレ感想になりますので、この映画ネタバレがあっても困ることは特にないと思うのですが気になる人はお帰りください。

 

 

 

【感想(ネタバレ)】

 ドゥーム・ヘッド!

 

 何だろうこの新しい感じのサイコ殺人鬼、惚れる。中盤ボスキャラの「いかにも~」な感じのヒャッハーピエロチェーンソー兄弟も最高なんだけど、ドゥーム・ヘッドの正気っぽい狂気のセクシーさに及びません。

 

 本作に登場する死神は「小人ナチ野郎」「ヒャッハーピエロチェーンソー兄弟」「なんかアニメっぽいコンビ」「ドゥーム・ヘッド」で構成されています。どれもこれも癖があって、「ああこいつらにヒャッハーさせたかったんだなぁ」というのが全面に出ていて最高です。

 

 小人ナチ野郎はところどころ英語になるけど、基本的にドイツ語らしい言葉で喋っていて字幕が反映されない。「何言ってるかわかんねーよ!」というのも恐怖心をかきたてる。その演出がまた憎らしい。ヒャッハーピエロチェーンソー兄弟はチェーンソーを使った演出がこれでもかと詰まっていました。素敵ですね。

 

 なんかアニメっぽいコンビは「ロブ・ゾンビさんジャパニメーションの影響受けた?」と思うような出で立ち。筋骨隆々のオッサンにかわいい女の子の組み合わせなんだけど、オッサンは胸に「DEATH」って書かれた白いレオタードっぽい恰好でなんとなくこち亀の月光刑事みたいな格好。女の子は胸に「SEX」って書かれていて髪の毛が初音ミク色で歌を歌いながら登場。この二人がバキバキに殺しに来ているのですから観客として「ワッショイ!」と心の中で盛り上がらせていただきました。

 

 そして本命のドゥーム・ヘッドさんなのですが、この人は映画が始まってすぐにカメラ目線で延々と何事かを観客に語りかけてきます。しばらく「なんだろ……?」と聞いているのですがどうやら仕事の真っ最中のようで、これから死んでいく人に自説を聞いてもらっているようでした。この一連のシーンが緊張感たっぷりで大好きです。

 

 そして再登場シーンがまたすごくて、女のケツを掘っているそのときに仕事の電話が来るというかなりイカした展開になっていました。最後までできなかったせいでイライラしていたのか、微妙に仕事に私情を挟みながら殺していくのはなかなかお茶目でした。狂気がある中に人間味を非常に感じる温かいキャラクターです。

 

 そして予告にもあるドーランを塗りたくるシーン。メイクが終わった後、鏡に向かって「俺は正気だ!」と叫びながら自分を何度も殴りつけてわざと鼻血を出して、顔の下半分を血に染めるのが彼の流儀。この「狂気」と「正気」のぎりぎりの綱渡り加減が最高です。狂気に染められてヒャッハー状態になることもなく、かといって人殺しという仕事を楽しんでいないかと言うとそうでもない。新しいサイコ殺人鬼像だなあと思いました。

 

 とりあえず全体的にシェリ・ムーン・ゾンビ無双な話で間違いないので細かいシーンなどは劇場などで確認してもらえればと思います。ラストの感じは『デビルズ・リジェクト』っぽいのですが、後味は『マーダー・ライド・ショー』に近いかなぁ。面白かったです、ハイ。