傍線部Aより愛を込めて ~映画の傍線部解釈~

主にひとり映画反省会。人の嫌いなものが好きらしい。

感想「ゼロの未来」

 ギリアム的おじショタ。

 

ゼロの未来(字幕版)

ゼロの未来(字幕版)

 

 

【あらすじ】

 近未来。優秀だが孤独なプログラマー、コーエンは人生を導いてくれる電話を待つために在宅勤務を希望する。会社によって監視されることになったコーエンは「ゼロの定理」を解くことを求められる。パーティーで知り合った女性ベインスリーや天才プログラマー、ボブとの出会いを通してコーエンは人間と触れ合うことを学んでいく。

 

 【感想】

 鬼才ギリアム監督の絶望未来です。鑑賞後の印象は「スタイリッシュな未来世紀ブラジル」という感じです。スタイリッシュなのでこちらのほうがよく練られている感じがするのですが、やっぱり『未来世紀ブラジル』の圧倒的パワーには敵わないのかな、と思いました。

 

 どちらもイケてない男が架空の世界で女性といちゃいちゃしているうちに現実と架空の世界の区別が曖昧になって結局世界が変貌してしまうみたいな感じの話です。そして『未来世紀ブラジル』では女性は途中まで本気で架空の女性でしたが、『ゼロの未来』では実在の女性と仮想空間であんなことやこんなことをしています。でもこの辺は割と『未来世紀ブラジル』だなぁと思ってしまうとあんまり感慨がありません。

 

 この映画の特色は、女性だけでなく少年が出ていることでしょうか。コーエンの仕事を手伝うという名目でやってきている少年ボブと触れ合ううちに、孤独なコーエンの心が少しずつ溶けていくのがわかります。ベインスリーはあくまでもコーエンの中では理想の女性で、それが裏切られたとわかると絶望してしまうくらいのものです。ところがボブは理想ではなく現実世界の人間で、勝手にピザを頼んだり散歩に連れ出したりと、面倒をかけているようでコーエンの人としての振る舞いをサポートしている気がしました。

 

 途中でボブが病に倒れ、コーエンが風呂場で彼の介抱をしているシーンがあるのですが、何故かボブが異様に色っぽくて「ソッチ」の匂いがぷんぷんしていました。少年美っていうのかな。なんていうか、仕事は出来るけど基本的にドジっ子なおじさんとぐったりした少年っていう組み合わせはなんかそそります。すごく狭い性癖ですね。多分この映画をそんな風に見ている人は少数でしょう。

 

 そんな風にボブを見ていたせいで「ゼロの定理」とかその辺は何度も見返さないとよくわからない感じでした。結局コーエンは自身の生み出した虚無へと突き進み、その向こう側へと到達します。

 

 すごくスケールが壮大なんですが、結局コーエン個人の問題になったりして小さく物語が終わってしまうことが気になるのですが作中のギミックとか凝った背景とかそういうの楽しむだけでも面白いと思いました。おわり。