傍線部Aより愛を込めて ~映画の傍線部解釈~

主にひとり映画反省会。人の嫌いなものが好きらしい。

感想「ショーシャンクの空に」

 俺は自由だ!

 

 

【あらすじ】

 銀行副頭取のアンディは妻とその愛人殺しの容疑で逮捕され、刑務所に入れられてしまう。過酷な獄中生活で知り合った調達屋のレッドと友人になる。やがてアンディはかつての敏腕を生かしていつの間にか刑務所中の信頼を集めるようになる。

 

 【感想】

 「名作だよ! ラストがいいよ!」

 

 映画が好きだと言ったらそんなことを言われたので「とりあえず見とくか」という感じで観ました。いいですね。ただ個人的に「ラストが最高!」かと言われれば「もっとすっきりする奴あるよなぁ」という感じなので「とりあえずの鉄板」という印象です。いいけどね、ラスト。

 

 前半はアンディが一方的に可哀想だけど、まだ「妻殺し」の容疑が晴れていなかったので「まーしょうがないだろう」という気分で見ていました。レッドからハンマーやポスターをもらったときも「どうせ穴掘るんだろうな」くらいの気持ちでした。

 

 次第に慕われていくアンディを見ている一方、前半のメインキャラであるブルックスが登場します。刑務所に50年いた彼は急に仮釈放となりましたが、外の世界に馴染めず首を吊ってしまいます。これは彼が浦島太郎状態だったということもありますが、やはり出所した人が社会に居場所を持つのは難しいということなんだと思います。TVでそういう人を集めて飲食店を経営している人の特集をやってましたが、こういうところまでなかなか世間の注目は集まらないよねと思いました。うーん、難しい。

 

 そして刑務所内の信頼を集めた後のアンディの元に不良少年トミーがやってきます。彼は読み書きができないためにやむを得ず犯罪に走っていたようでした。アンディの元で勉強をし、塀の中で高校卒業程度の学力を身に着けることができました。この辺も「犯罪が起こる背景とは」というところに言及している感じでよかったです。学があれば犯罪なんかしないという人は多いだろうし、日本の刑務所に収監されている囚人の多くは何らかの困難を抱えている人が多いというし……。

 

 ところがトミーの話を聞いているうちに、アンディの冤罪を晴らせるような証言があることがわかりました。その話を聞いてアンディは裁判のやり直しを訴えますが、アンディに不正会計などをさせていた所長たちはアンディを懲罰房送りにし、その間にトミーをうまいこと殺してしまいます。いろんなことに絶望したアンディはついに脱獄を決行。成功します。この脱獄シーンが何とも言えない緊迫感があっていいです。刑務所から脱出した時の「俺は自由だ!」という感情と「アイツらザマアミロ!」という感情の混ざったような複雑な歓喜の表現はなかなかできるものではないと思います。

 

 その後レッドも仮釈放が認められ、40年ぶりに刑務所の外へ出ることができました。かつてブルックスがそうだったように、レッドも外の世界に怯えていました。しかしアンディの言葉を思い出して指定の場所へ行くと、そこに自由になったアンディがいて美しい青い海があったというところでおしまい。

 

 確かに終始灰色だった刑務所の内部から一転、ラストの砂浜の美しさはなかなか趣があると思いました。登場人物の心情にも飛躍がなく、細かい伏線もきちんと回収していて一本の映画としての完成度は高いと思います。

 

 ただ、この映画は「復讐譚」だと思うのですよ。無実の罪で刑務所暮らしを余儀なくされたアンディが長い年月をかけて行った復讐です。自分を救えなかった司法や刑務所、さらに不正の片棒を担がせた刑務所長たち含めた社会に対して盛大に後足で砂をかけていったというのが自分の見た『ショーシャンクの空に』でした。確かにスカッとするんだけど、その方法が脱獄というのはやはりどこか納得できないんですよ。心情的に寄り添いたいけど、不正な方法で脱獄をしているというのは、ねぇ。

 

 まぁ「名作名作!」言われているからそんなことも言いたくなるのかもしれません。でもモーガン・フリーマンがかっこいいのでとりあえず全部よし、という感じです。彼が出てくれば基本的に何でもOKです。モーガン無双です。おしまい。