傍線部Aより愛を込めて ~映画の傍線部解釈~

主にひとり映画反省会。人の嫌いなものが好きらしい。

感想「少年と犬」

 ビバB級!ビバディストピア


少年と犬 [DVD]

少年と犬 [DVD]

 

 

【あらすじ】

 2024年、世界は核の炎に包まれて人類はそれまでの文明とはほど遠い生活を送っていた。少年ヴィックは相棒の犬のブラッドと超能力を通じて心を通わせ、食糧と女を求めて一緒に生きていた。ある日、ブラッドが女を見つけ、彼女を後から狙ってきた襲撃団を撃退してヴィックは少女クィラを手に入れる。クィラは荒廃した地上ではなく、地下世界の住人で、ヴィックを地下に連れて行こうとする。手負いのブラッドは「行くな」とヴィックに忠告するが、ヴィックは食糧を得るため地下世界に降りていく。そこでヴィックは、地上と隔絶した秩序に満ち足りた生活を送っている地下世界に驚愕する。女性がいなくなった地上と打って変わって地下世界では男性が生まれなくなっていた。そこでヴィックは新しい血を混ぜるために種馬になるよう言われ、狂喜するが囚われの身になってしまう。クィラの手助けもあり、地上に逃げ帰ってきたヴィックははらぺこで瀕死のブラッドを見つける。しかしクィラは少年と犬の絆を理解することはなく……。

 【感想】

 ハーラン・エリスンの短編が原作のこの映画。「B級カルト」の烙印からは逃れられないけど、ラストのオチが秀逸過ぎて泣ける。犬を飼っている人にはたまらない一作。

 

 原作の方も読んでいますが、映画にする中でドラマティックに盛り上げるところがきれいに脚色されていてどっちも大好きです。前半は「北斗の拳」も真っ青の世紀末覇者が跋扈するような荒涼とした世界。そして後半は、独自に進化した地下の不気味な管理社会。どっちを見てもロクな世界じゃないというところが素晴らしい。


 特に原作では味わえなかった地下世界の不気味さが強調されている部分は背筋が凍るような演出にびっくり。男女ともに化粧をして、男性を女性にしようとしているような場面はある意味恐怖。あと追加キャラのマイケルも結構好き。前半は前半で画面から出てきそうな砂っぽい感じや、原作では読めていた「ビーツ」が微妙に読めていなかったりする点で地上の文明がきれいに滅んでしまっているのがわかって良いです。


 そして衝撃のラスト。これは原作の最後のオチが秀逸過ぎて映画ではいまいちそのカタルシスがなかったかももちろん、そこにいたるまでの過程は全く一緒ですが、これが文字だけと映像の違いなんだなぁと痛感。ただ、映画はEDロールが素晴らしくてちょっと泣きそうになりました。どこかでこのシチュエーション見たことあるなと思ったら、筋肉少女帯の「サボテンとバントライン」ですね。少年が犬と行くのか猫と行くのかの違いですがこういう構図って絵になりますねー