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傍線部Aより愛を込めて ~映画の傍線部解釈~

主にひとり映画反省会。人の嫌いなものが好きらしい。

感想「ムカデ人間3」

洋画 ホラー

 常人お断り映画、ついに感動のフィナーレ!! デス・レイプ! デス・レイプ!

 

※この映画はあらすじ及び感想を読むだけでも気分を害する可能性が限りなく高いので、それでもどうしても読みたい人だけ読んでください。

 

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映画『ムカデ人間3』予告編 - YouTube

  

※いや、本当に気分の悪い方は帰ってください。

 

【あらすじ】

 アメリカにあるジョージ・ブッシュ刑務所では暴動、再収監、医療費、離職率などがずば抜けて高かった。知事から解雇をちらつかされて、刑務所の独裁者にして所長のビル・ボスは囚人の去勢など改善を試みるが効果がない。そこで会計士でありボスの右腕のドワイトは『ムカデ人間』を所長に見せ「これを囚人たちに実行しましょう」と言う。このようにして囚人500人をつなぎ合わせる空前絶後の「ムカデ人間監獄」が作られることになる。

 

 【感想(ネタバレなし)】

 3部作堂々のフィナーレと言うことですが、本当にフィナーレにふさわしいです。そしてこの映画は1と2が好きな観客へのボーナストラック的扱いです。これ単品でも楽しめるのですが、1と2を見てから見ることを強くお勧めします。

 

 1はいわゆる「殺人鬼活躍モノ」として楽しめると思うのです。そしてそこから映像の気持ち悪さのエッセンスを濃縮したのが2で、この3は前2作を踏まえた完全なブラックコメディになっています。まさか「ムカデ人間」でこんなに笑うとは思っていませんでした。前評判でコメディとは聞いていましたが、これは完全にコメディです。画面の気持ち悪さを見に行ったのですが、いい意味で裏切られました。逆にグロやスプラッタを目的に行った人には消化不良かもしれません。映像のグロ路線は1くらいのものです。場内は絶えず笑いが飛び交い、上映終了後は「あのシーン最高だった」と笑い過ぎて涙を流す勢いで感想を語り合う人もいるくらいでした。

 

 それに加えてムカデシーンもそれほど多くありません。今回は何せ500人いるのでつなげるのに時間がかかるのです……でも、ムカデ以上にこのシリーズの魅力は「つなげる人」の狂気です。1のハイタ―博士役のディーター・ラーザーさんがビル・ボス所長、2のマーティン役のローレンス・R・ハーヴェイさんが会計士ドワイトと、1と2の主役がタッグを組んでムカデをくみ上げていくわけです。もうね、この2人が一緒にいるだけでめちゃくちゃ面白い。

 

 それでこの映画イチバンの見どころは、実は500人のムカデではなくてディーター氏の体当たり狂気演技です。ハイタ―博士も十分イッちゃった系の人だったのですが、何か限界突破をしたようなおぞましさとか不謹慎さとかそういうのを全部どこかに忘れてきたくらいの清々しい狂いっぷりが最高でした。彼のキレっぷりを見るためにもう一回映画館に行ってもいいと思いました。

 

 そんなわけで、単純にグロを期待して見に行くものではありません。1と2を見たうえで、かつどこまでも下品でブラックシュールギャグに大笑いできるセンスがある人が滅茶苦茶ツボにハマればいいなぁというものです。

 

 もう一度言います。グロを期待して見に行くものではありません。だけど、出発点が非常にエグいのでグロ耐性のない人は観に行ってはいけません。1と2を踏まえた公式のパロディだと思うとすっごく楽しいです。

 

 以下ネタバレ感想(胸糞シーンあり)行きます。その前に前作の感想リンクをどうぞ。

 

 

sidelinea.hatenablog.jp

 

sidelinea.hatenablog.jp

 

 

【感想(ネタバレあり・鑑賞前提です)】

 映画が始まって一番の感想は「マーティン君が喋ったあああ」なのですが、この二人が夢の競演をしているというだけで始終面白く観られました。2の冒頭が1のラストシーンから始まるのと同じく、3も2のラストシーンから始まり「この主役はお前に似ているな」とビル・ボス所長がドワイトに言うところで完全なメタ世界が構築されていて吹き出しそうになりました。このノリ、何かに似ていると思ったら『かまいたちの夜2』なんですよね。電波具合とかは全体的にかまいたちの夜2に雰囲気は似ているかもしれません。

 

 全体的にひどい差別用語の飛び交う世界なのですが、嫌悪感というよりバカバカしさしかないのです。秘書のデイジーはタマ吸い器扱いされるし知事はキューバ葉巻を吸うと言うことで共産主義者になるし、囚人の国籍や人種でありとあらゆる偏見や差別がバンバン飛び交うと、もう逆にみんな平等という感じがしてくるのです。多分これは『フルメタル・ジャケット』のハートマン軍曹の勢いと同じような物だと思います。

 

 ビル・ボスは独裁者として監獄の頂点に君臨しているのですが、怪しげな精力剤を取り寄せたり酒浸りだったり、いざとなったら窓から自分だけ脱出するなど意外と肝は小さいのです。そのせいで変な夢を見るわけなのですが、多分ムカデよりもひどいシーンだと思います。だってねぇ奥さん、アソコをレイプされるんですもの。なんてひどい夢なんでしょう。あと個人的にこのシーン、「あ、これは現実ではありえないから夢だ」というのが筋をよく見ていればわかるあたり結構考えて作られていると思いました。だって局部切除されたばかりの人がそんなファックできるわけないものね、ね。

 

 そして本人役で登場するトム・シックス監督が面白い。「是非本物のムカデを見たい」と言うのに実際にやってきてすっごく気まずい表情。更にムカデ以上のゴアなシーンを見せられて嘔吐して退場と言う小物感がビル・ボス所長の狂気を引き立てるのにいい味出してました。

 

 更に小ネタが満載で何を書いたらいいかわからないのですが、繰り返し登場する割礼されたクリトリスとかタマ焼きランチとか、ムカデ人間の製造過程で「人工肛門はどうする」とか単発のネタが畳み掛けるように襲ってくるのが意外でした。こんなにポンポンと下品なことがよく出てくるなあと感心します。

 

 小ネタと言うかカメオ出演として前作に登場した面々が囚人役として登場します。一番面白かったのは、1でムカデの先頭をやった北村昭博さんが囚人たちに予告と言うことでムカデ人間を見せられているシーンでめちゃくちゃ怒っていたこと。1の画面の中でムカデの先頭で虐待されている北村さんが3の世界の囚人服を着て「あり得ない」と滅茶苦茶怒っている。この光景がとんでもなくシュール。多分この映画で一番笑った。この映画はそういったところを突っつくと奥が深い。

 

 最後にラストシーンについて。大風呂敷を広げまくった結果、果たしてどう閉じるのか不安だったのですが、まさかまさかの「ご都合主義」でした。そしてそのご都合主義ですら急速にブラックユーモアに転換して終わる幕切れ。1や2のじんわりした終わり方ではなく、完全に物語を閉じたのはよかったです。

 

 それにしてもラストのビル・ボスとドワイトの抱擁シーンは1と2を見てからだとアツい。ハイタ―博士とマーティン君の抱擁だと思うと心に沁みるものがある。マーティン君はハイタ―博士を信奉していたからね……マーティン君は感無量だと思うよ。例え結末がそういうものであったとしても……。

 

 笑いあり(笑い過ぎて)涙ありのレイトショーだったのですが、今から日本語吹き替えが楽しみで仕方ないです。1のハイタ―博士を若本規夫が務めていると言うことで少し話題になっていたのですが、今度のビル・ボス所長もまた若本氏が起用されるんでしょうか……? それなら楽しみ以外の何物でもないです。つーかDVDで家でゆっくり小ネタを確認しながら見たい映画かもしれない。1~3のBOXとか出るんじゃないだろうか。それはちょっと欲しいかもしれないぞ。

 

 このシリーズ、ただ悪趣味なだけじゃなくてそれなりに哲学的なので「人間の尊厳とは何か」というものを徹底的に考えられます。それが割と好きなところであり、あと狂気の主人公の突っ走り方が面白いというのもありますね。ただ人を殺したいとかそういうのではなく、もっとドロドロとした何かを感じさせるのです。そんなわけで気持ち悪い映画の気持ち悪い感想はおしまいです。ぞろぞろとおつかれさまでした。