感想「舟を編む」
【あらすじ】
【感想】
辞書を作る地味にロマンあふれる話なのだけれど、気になったのがどうしても登場人物が漫画っぽいってこと。どうしてあんなに極端なキャラクターでストーリーを展開させようとするんだろう。最初から最後まで主人公やその直近のキャラクターに感情移入が全くできなくて困ってしまった。後で調べたら原作と馬締の性格が結構違うみたいで、どういう狙いだったんだろう。
辞書作りの地道な作業の在り方は素晴らしいと思うんだけど、原作と違うとわかるとどうしても松田龍平のあのキャラクターは何のための存在なのかわからなくなってくる。「コミュニケーションが苦手で真面目な青年」を演出するのに、あそこまでオーバーな表現は必要だったのだろうか。あと、取ってつけたようなラブシーンは一体何なんだろうか。別になくても最後まで行くんじゃないのかと。
多分「馬締」という人物を描きたいのではなく、辞書作りの現場を描きたかったのだと思う。だからわかりやすいテンプレ的なキャラクターを配置してしまったのだと思う。その結果現実にいそうでいない人物と言うより、「あるあるキャラ」の乱発になってしまったのだろうと思う。チャラ男に突然現れるヒロイン、理解ある大家のおばあさんに頼りがいのある先生など、物語を細かく見ていけばピースはハマっているのだけれど、全体で考えると「出来過ぎ」な配置だと思う。ご都合主義と言うか、先が容易に読めてしまう。
もう一度言うと、辞書作りの情熱やそれに関する関係者の頑張りは面白い。だけど、映画全体としてこの作品を見ると「うまく出来過ぎていて」何かが足りない。登場人物に人間としての幅がないのだと思う。この映画の外で登場人物たちが生きていく場面が想像できない。映画の幅として話が終わっていて、広がりがない。だからと言って徹頭徹尾のコメディと違って「あー面白かった!」というところまでスカッとしないものがある。こういう気持ち、辞書には載ってないですねかね。