傍線部Aより愛を込めて ~映画の傍線部解釈~

主にひとり映画反省会。人の嫌いなものが好きらしい。

感想「源氏物語 ~千年の謎~」

 前半10分で心が離れ、途中で平安チックな作業用BGMと成り果てた究極の作品。
源氏物語 千年の謎 通常版 [DVD]
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【あらすじ】

 藤原道長の愛人として源氏物語を執筆した紫式部。式部はその物語の主人公の栄華を極めるまでの半生を藤原道長になぞらえて執筆することを求められる。
 

【感想】

 エロい(感想が中学生並)。


 エロいです。エロいですが官能的ではありません。生々しいのに何故か白々しい。多分求めていたのが『源氏物語』のあの豊かなエロスだったから、過剰な期待をしてしまっていたのかもしれない。しかし白々しいセックスシーンだなぁと思いました。

 源氏物語の映像化ってすごいハードルが高くて、多分チートな光源氏の設定についてこれる人材がなかなかいないのと、元々の話の精神性が高すぎるのが失敗の原因だと思う。ただ単に物語だけを追いかけていたのでは面白くなくて、源氏物語って人間関係の相関図を眺めているのが面白い作品だから映像化すると本当に「セックス」シーンくらいしかない。最初にも書いたけど、ただセックスシーンだけ書いたって面白くない。そこに至るまでの葛藤が面白いのだけれど、やっぱり映像化してもそこは面白くないので仕方がない。

 あと、やっぱり千年前の風俗をそのまま現代に持ってきてもわかりにくっていうところが大きい。初っ端で弘徽殿女御が直接桐壷更衣に直接危害を加えるシーンとか、どう考えてもあり得ない。弘徽殿女御とあろう方がいくら憎くても更衣ごときのために御簾の内側から出てこられるのだろうか。「直接描くことで嫉妬関係をわかりやすくした」ということなのだろうけど、平安文学的には逆に興ざめしてしまう。当時の風俗を皆が理解している前提で話を作れないのが難しいところかもしれない。

 その辺から見る気を亡くしたのですが、やっぱり夕顔との邂逅は人気のあるシーンだけあって美しかったですね。そして葵上の出産シーンもなかなかセットにこだわっていて、見るところがたくさんありました。女房たちが全員白い着物を着ているところで平安時代らしさが出ていてよかったです。

 結局、源氏物語の実写化というより「平安時代っぽいムービー」だなぁというのが正直な感想です。役者がかっこいいとかいい演技しているとか、そういうところまでいかないのは世界を作りきれていないからだと思う。やっぱりあの独特の世界を2時間ちょいの映画にするのは難しいんだよ。かろうじて紫式部藤原道長のパートが息をしていたから、源氏物語を挟まずにここだけで2時間じっくりやったほうがよかったんじゃないだろうか。

 そんなわけでいつか大河ドラマで平安ロマンを取り上げてくれるならどんなクソ仕上がりでも毎週頑張って見るので検討してくれるといいなぁ。