傍線部Aより愛を込めて ~映画の傍線部解釈~

主にひとり映画反省会。人の嫌いなものが好きらしい。

感想「竹取物語」

 かぐや姫=エイリアン。

 

竹取物語 [DVD]

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【あらすじ】

 平安の世。空から火の玉が落下し、竹取の造は亡くなった娘の墓を心配して竹林に入る。すると光る何かから娘そっくりの幼児が姿を現した。竹取の造は幼児を娘の生き返りと思い、加耶として育てる。加耶の入っていたものの残骸である金を売り、豊かになった竹取の造は美しい娘に育った加耶の嫁ぎ先を探す。

 

 【感想】

 かぐや姫=エイリアンをどストレートに表現した結果、いろんな方向で豪華な感じになったという感じです。公開当時は「映像が最新技術!」という触れ込みでいた割には大したことないと製作費ばかりの駄作と評されていたらしいですが、時代が一周くらい捻じれた今見るとある意味「挑戦作だったんだなぁ」という感じがあります。

 

 映像表現ばかりに目を向けると確かに「時代の限界」みたいなものを感じるのですが、「かぐや姫=エイリアン」に仕立てるための話の内容の改変みたいなものはなかなかよくできていると思います。『かぐや姫の物語』みたいに姫の内面を徹底的に掘り下げるのではなく、一人の女性として等身大の恋愛を描いた、みたいなのはよかったです。その中でSF要素もさりげなく入れてくるのはかなり脚本頑張っていると思いました。

 

 原作の竹取物語から繰り返されている話ですが、やはり月世界は黄泉の国のメタファーなんだろうと思います。「月に帰る」というのはこの世と決別する、ということでやはり永遠の別れ=死を彷彿とさせるなぁと。そう考えると求婚してきた貴公子が現世に執着して失敗作を掴まされるのと対象に、大伴の大納言が竜の首の玉を求めて大海で龍と対決するのも「死」に近いところのものに惹かれたからなんだろうかとか思ってしまいます。原作だと「燕の子安貝」のチャレンジャーも最終的に死んでしまいますが、難題へ挑んだ結果死んだと言うには少し微妙なのでノーカンですかね。映画には出てきませんし。

 

 この映画にはオリジナル登場人物として盲目の少女明野が登場します。一応主人公を導く役割を持っているのですが、これがなかなかうるさくならない感じでよかったです。オリジナルキャラクターが出張ってストーリーが崩壊しないのはひとつの成功の形だと思います。

 

  平安時代の装束なども結構凝っていて、「竹取物語」として見てもそれほど変ではないと思いました。では何がウケなかったのかというと、多分ポスターだろうなぁと思うのです。何より時代を先取りしすぎたというか、当世風ではなかったのが痛かったんだろうなあ。そう言えば昔時代を先取りしすぎた忍者ってジャニーズグループがあったなぁ……。