傍線部Aより愛を込めて ~映画の傍線部解釈~

主にひとり映画反省会。人の嫌いなものが好きらしい。

感想「シュガー・ラッシュ:オンライン」

 ヒーローって何なんだろう。

 

 


【あらすじ】

 前作の冒険から6年。ラルフは変わらない毎日に退屈していたヴァネロペの望みを叶えようとしたが、手違いでシュガーラッシュの筐体を壊してしまう結果になる。シュガーラッシュのハンドルを探しにインターネットの世界へ行くが、もちろんハンドルを買うにはお金が必要。ラルフとヴァネロペはネットの世界でお金を稼ぐことになる。

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感想「ブルース・ブラザーズ」

 勝手にごめんなさい。

 

 

【あらすじ】

 ジェイクは刑期を終えて出所したばかり。弟のエルウッドとかつて世話になった孤児院へ挨拶に行くと5000ドルの税金を用意できなければ立ち退くしかないという惨状を聞く。何とか支払いはできないかと考えていたジェイクは思いつく。「そうだ、バンドをやろう」。そしてかつてのバンド仲間を探し、5000ドル稼ぐ旅が始まった。

 

【感想】

 タイトルは有名だけど詳しくは知らなかった映画。だから勝手に「ブルース・ブラザーズを名乗るバンドが孤児院を救うハチャメチャドタバタハートフルストーリー」だと思ってました。まぁ間違ってないけど。

 

 ぶっちゃけハートフルの部分が大きいと思ってました。「ぼくたちのおうちがなくなっちゃうよー」「今夜は歌って楽しい気分になろうぜ!」みたいな。まぁ間違ってないけど。そんなわけで序盤のカーチェイスで度肝を抜かれ、終盤のカーチェイスで大笑いしました。特に終盤のカーチェイスは「よくこんなの撮影したなぁ」という上を下にの大騒動で、パトカーがレゴブロックみたいにどんどん積まれていくのはとにかく爽快でした。

 

 下品な笑いにドタバタというよりハチャメチャなシーンが続くたびに「この映画にすごく偏見を持っていたんだなぁ」と申し訳なくなってきました。施設のみんなでレモネードを売ったり近くの公民館でチャリティーコンサートをやったりしてそこで主役の二人がけんかをするんだけど施設の子供たちのおかげで仲直りできました、みたいな映画を勝手に思い描いていてものすごく勝手な「ブルース・ブラザーズ」ができあがっていました。そんな偏見は最初の刑務所のシーンで怪しくなってきて、序盤のカーチェイスで「もしかしたらこの映画はそういう映画じゃないのかもしれない」と思いはじめてレイ・チャールズが出てきたあたりでもうどうでもよくなってしまいました。あのポスターを逆に貼るところはかなりひどいよな。

 

 内容的に現代リメイクするのは難しいかもしれないけど、是非あのカーチェイスを現代風にアレンジしたのを見たい。カーチェイスだけじゃなくて、豪華なキャストも現代風になってたら面白いよね。でも内容が無理だよなぁ。あの下品さが消えたら「ブルース・ブラザーズ」じゃないもんなぁ。おしまい。

 

感想「ネオン・デーモン」

 おまえうまそうだな

 

 

【あらすじ】

 ジェシーはその美貌でトップモデルになるためにロスへやってきた。すぐにカメラマンやデザイナーに気に入られるが、同業の女性からは嫉妬の目で見られる。そしてファッション業界の暗部の深みに嵌まっていく。

 

【感想】

 ポスターがキレイで面白そうだなと思ったので見てみました。露悪的な内容とは聞いていたのである程度覚悟を決めて見てみたのですが、なんか想像以上でした。

 

 この映画ブログの人の特徴として、気になった映画の前情報やあらすじは極力見ないようにして映画を見るという癖があります。ひとことで紹介した「ファッション業界でシノギを削る女の戦い」みたいなのをマイルドに想像していたら、結構ドギツイ奴でした。勝手に「待望の新人!」「なによむかつく!(靴に画鋲入れる)」「何するのよ!(SNSで怪情報を流す)」くらいの奴だと思っていたら、結構この辺ガチでした。ほのぼの女の戦いを想像して見たらアカン奴です。ちゃんと「グロ注意」と書いておかないと、ぷんぷん(いやちゃんと調べないで見るから……)。

 

 そんで華麗な前半のファッション事情みたいなのが終わると、いよいよドギツイ描写の始まりです。直接的なシーンはないものの、「ああヤッチマッターだな」という描写が続きます。しかしかなり観念的な世界にイッチマッタ感じなのでただぼんやり見ているだけだと「??」という感じです。まぁ部屋にでっかい猫がいる時点で不思議の国のアリス的なアレだよなあという感じはしていたけど。月が昇る部屋で致してるのは「うわぁ」という感じです。うわぁです。

 

 そしてラスト。いきなり目玉を生み出して「丸尾かな」とか思いながらもなかなか冷ややかな終わり方だと思いました。人を喰った末路が中から罪悪感(?)に苛まれて潰れていくけど誰も彼女を心配していないっていうのがちょっと怖いなと。誰も他人を人として扱っていないというか、思い通りに動くモノかなんかだと思っているようなところがリアルなのか虚構なのかわからないのもグラグラして怖いなと。

 

 ポスターがキレイなので見ようと思ったけど、ちょっと想像と中身が違っていい意味で期待外れな作品でした。もっと人間的な話も見たかったなぁと言うのは欲張りの感想ですね、はい。

感想「アヒルと鴨のコインロッカー」

 瑛太マジ瑛太

※この映画は結末を知らない方が楽しめる映画なので鑑賞予定のある方はお帰りください。

 

 

【あらすじ】

大学に入るのに越してきた椎名はボブ・ディランの「風に吹かれて」を口ずさむ。すると隣の部屋から現れたカワサキと名乗る男は、隣の隣の部屋に住む日本語が読めないブータン人ドルジのために椎名に本屋で辞書を強盗するよう持ちかける。

 

【感想】

 なんとなく話題の邦画だよなあと思いながら鑑賞。よく結末がすごいみたいなところで出てくるので期待しないで見たけど、最初は本当に辛かった。小学生が学芸会で発表するような発声に時系列がバラバラで登場人物の一貫性がない。これで90分以上見るのは辛いなぁと思っているうちに話はどんどん進行していく。

 

 そもそも濱田岳がそんなに好きじゃないのでうーむうーーむと濱田岳が翻弄されまくるところをぼんやりと眺めていた。瑛太が怪しい人物炸裂しててとにかくちぐはぐ。「何だろ前衛的な雰囲気を出したいのかな」と我慢して見ていくと、ひとつひとつ怪しいベールが剥がれていく。そして疑惑のシーンで疑問は氷解する。そして思う「瑛太頑張ったなぁ」と。

 

 この謎の男カワサキは椎名にカワサキを名乗っていただけで、実は話に出てくるブータン人のドルジだったのです。そのための伏線は違和感たっぷりの前半にちりばめられていて、後半は答え合わせのようにするすると進んでいきます。ああそうかああそうか、ああそうだったのか。そんな感じで映画は終わります。

 

 しかしスカッとする映画なのかといえばそうでもなく、ドルジが果たした復讐は後味の悪いものだし、音楽の神様を閉じ込めるというのもなんだかうやむやにしている感じがして無理矢理終わらせようとしているなという感じもする。小説だとあまり気にならないのかもしれない。

 

 とにかく瑛太がすごい。前半の怪しいカワサキから後半の悲哀漂うドルジになる瞬間がすごい。この難しい役をよくやったなあという印象。瑛太すごいよ瑛太、というのが一番の感想です。忘れた頃にもう一度見たい映画だなと思いました。おしまい。

 

 

感想「宇宙人王さんとの遭遇」

 おまえバカだな。

※この映画はどちらかというとネタバレしないで見た方が面白いので鑑賞予定のある方はお帰りください。

 

宇宙人王さんとの遭遇 [DVD]
 

 

【あらすじ】

 ローマに住む中国語通訳のガイアは高額の報酬に誘われて得体の知れない依頼を受ける。いくつかの質問の通訳をするが、相手の姿を見ることが出来ない。やっと見ることができた姿は、イカによく似た宇宙人だった。

 

【感想】

 タイトルだけやたらと頭に残っていたので鑑賞。想像した通りの話ではあったけど、予算が低そうな映画にしては結構面白かったと思う。

 

 何より基本的に密室劇で、映画の三分の二以上が宇宙人王さんのいる部屋とその周辺で登場人物も過不足があまりない。拘束された宇宙人王さんと通訳と役人。その他として役人その2と最初に宇宙人王さんが侵入した家の人くらい。そして展開されるのは宇宙人王さんと役人の全くかみ合わない話。その展望の間に挟まれた通訳のとった行動は、宇宙人の側に立つことでした。

 

 この映画の面白いところは痛快なラストや中国人批判につながるブラックな話もですが、密室で怒鳴られ続けると人間がどうなるかということも暗に描いているところだと思う。映画の途中、密室でひたすら怒鳴っているシーンは見ていて辛いものがあった。ずっと見ていると本当に宇宙人の言っていることが正しくて、恫喝を続ける役人が悪者のように見えてくる。この「怒鳴る=悪」「責められている=善」という感覚も万国共通かもしれない。

 

 そういうわけで場面のほとんどが地下の一室で、しかも登場人物はたったの数人。王さんもそこまで手の込んだ作りでもないし、映像だけ見ていれば非常に退屈な映画。ただそうすることで「王さんは本当のことを言っているのだろうか」という一点に観客の思考を向かわせるという高度なことをしているのかもしれない。

 

 ある意味スカッとするラストはそのモヤモヤが一気に解決するからかもしれない。途中で「いやでも宇宙人のこと全面に信用していいいの?」と不安に思う人もいるだろうし、「いいぞ正義の宇宙人を助けてやれ」と思う人もいるだろう。前者なら「ほーらやっぱり!」となるし、後者なら「やられた!」と思うだろう。そんな映画に振り回されてこそ、ラストの一言がしみてくると思います。おまえ、バカだな。