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傍線部Aより愛を込めて ~映画の傍線部解釈~

主にひとり映画反省会。人の嫌いなものが好きらしい。

感想「1984」

 親愛なるビッグブラザーへ。

 

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【あらすじ】

 超全体主義国家オセアニア。真理省に勤めるウィンストンは日記を密かにつけ始める。この国では情報は国家によって統制され、都合の悪い情報は全て改竄されるために個人が日記を付けることを禁止しているのだった。それ以外にもたくさんの窮屈なことがあり、ウィンストンは知り合った女性ジュリアと打倒ビッグブラザーの志を持つ。

 

 【感想】

 あの「1984年」の映画です。中身は原作とほぼ変わらないのですがどうしてもお話が動くウィンストンとジュリアのロマンスが中心になっていて、原作のキモである「なんてことを」というレベルの真理省とか愛情省とかのムチャクチャな統制具合がわかりにくいというのが残念です。

 

 多分この映画だけを見ても「全体主義は恐ろしい」というのが見えにくい。どうしても「革命に関わった人が情報ごと消される」という不条理が見えにくいからだと思う。どうしたって原作を読んでいない人からは「何か知らないけどガチガチな世界に反抗しようとした恋人同士が当局に捕まって残念でした」というようにしか見えない。原作のあの強烈なディストピア感覚が半端になってしまったではないか! これは大層遺憾であると思う反面、どうしたって90分程度の映画であの絶望的な組織の前に個人など風の前のティッシュに同じということを伝えるのは非常に難しいです。それならわかりやすいジュリアとのロマンスを全体に散りばめるのは悪くない。

 

 それで観終わった後に「結局バッドエンドなんじゃん」と思い、「あれ、これって因習や国家などの圧力に押しつぶされる若者」というアメリカンニューシネマの世界に似ているなぁと思ったのです。もちろん全部が全部一緒なわけではないし割と方向性は違うと思うけど、構造が似ているなぁと。映画にするとあの原作の絶望感のテイストがかなり軽くなる。

 

 もうこれは映画と言う媒体の性質を考えてしまうわけで。どうしても「映画化」というと情報量を少なくしなくてはいけないし、話も大幅に端折らなくてはいけない。その代わり視覚的な新しい情報が付与されるわけで。映像で「2分間憎悪」を見れたのはよかったです、ハイ。