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傍線部Aより愛を込めて ~映画の傍線部解釈~

主にひとり映画反省会。人の嫌いなものが好きらしい。

感想「ソイレント・グリーン」

洋画 SF カルト

 ビバディストピア! シリーズ。

 

ソイレント・グリーン 特別版 [DVD]

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 【あらすじ】

 環境破壊と人口爆発により文明がめちゃめちゃになった西暦2023年。通路のいたるところに人があふれ、貧民は合成食糧と水を配給され、金持ちは昔の新鮮な食物を懐かしみながら味わう世界。主人公のソーン刑事はとある弁護士の殺人事件の捜査を担当するが、どうにも暗殺されたようで事件の背後を追っていくとかなりきな臭い現状があるようだ。それはソイレント社から新しく出た海中プランクトンから出来た合成食糧の「ソイレント・グリーン」に関係しているようで……。

 

【感想】

 とっても有名だし、オチも知っていたけど「終末観」を映像で見るにはなかなかいい映画です。ストーリーだけ見ていくと人々が飢えて食糧がない、ということの危機感がイマイチ伝わってきませんが、後半に行くにつれてぐいぐいと世界に引き込まれます。


 とにかく近未来ディストピア感は最高です。階段に折り重なるように人は寝ているわ、配給日に暴動が起こるのが前提になっているわ、牛肉が宝石以上の貴重品になっているわ……そのほこりっぽい世界でわちゃわちゃと動く人間を撮っているのが本当に好きです。「職権乱用」で金持ちの家からくすねてきた食材を食べるシーンは、これでもかというくらいおいしそうです。よく「戦争中は食べ物がなかったのだから残さず食べなさい」と言いますが、過去のことを言われても「今がよければいいじゃん」と何の説得力もありません。しかしこれは訪れるだろう未来の話なので切実です。お肉や野菜を大切に食べようと思いました。

 そして面白いのが知識を蓄えた老人を「本」、一緒に住む美しい女性を「家具」と呼ぶなど、人間性が否定されていること。「人権尊重!」なんていうのは腹がいっぱいの連中だけの話で、食うか食われるかの階級にはそもそも人間性よりも生きるか死ぬかのほうが大問題なのですよ。この辺の価値観もかなり好き。

 そんで、ジャケットにもなったパワーショベルで人間をざっくざっくと除けていくシーンは当時を思えば迫力満点。暴動鎮圧のために駆り出された主人公たちと配給がもらえなくて暴徒化する一般市民。マンパワーを存分に感じるシーンです。教会で人々がひしめいているシーンも「人!」「人!」って感じで好きですね。

 さらに合法的な安楽死施設のシーンも興味深い。失われてしまった四季折々の映像と共にどんどん意識が薄れていくという死に方は倫理観とかナシにしたら結構いいものがあると思う。でも自分なら好きな色は青で、ハードロックがガンガンかかったまま死にたいと思う。それでも映像はあの自然のシーンなんだろうか?

 そしてあの有名なオチ。言及するまでもない古典的なオチですが今でも色あせることのない素晴らしさですね。思わず原作の「人間がいっぱい」も中古で買ってしまいました。もう絶版みたいですね、今だからこそこういう本売れないのかな? 似たテーマで「赤ちゃんよ永遠に」も見てみたいけれど、日本ではDVDで出ていない模様……今後に期待。

 とりあえず「夢のない未来万歳!」がやりたい人は絶対に押さえておかなければいけない作品だと思う。超管理社会とか、北斗の拳みたいな世界にしびれてしまう人に強くオススメします。