読者です 読者をやめる 読者になる 読者になる

傍線部Aより愛を込めて ~映画の傍線部解釈~

主にひとり映画反省会。人の嫌いなものが好きらしい。

感想「おおかみこどもの雨と雪」

 最近「風立ちぬ」見て号泣したのですよ。いつも通り、このブログタイトルの下のコメントに全てがあるので「風立ちぬ」が万人受けする面白いものだとは全く思っていません。今夜もう一回「風立ちぬ」見に行く予定なのでそれが終わったら映画の感想書きたいと思うんですよ。


 その前に、あまりにもつまらなすぎて「金返せ」と思ったコイツをやっつけておこうかと思う。見終わった後冷静になれなくて「映像はよかった」とかそんなコメントしかできなかったんだよね。

 

おおかみこどもの雨と雪(本編1枚+特典ディスクDVD1枚)

おおかみこどもの雨と雪(本編1枚+特典ディスクDVD1枚)

 



 今まで人並みにいろんな映画を見てきたけど、「金と時間を返してほしい」と真剣に思ったのはこれが初めてかもね。B級ならB級で「うわーwクソだわーwなかったわーw」という感想を持つタイプなので基本「つまらない」という感想を抱かないのですが、この映画に関しては……。

 


・つまらない

・途中のドヤ顔がすけて見える

・むしろ途中からイライラする


 とりあえず誉めるところを先に褒めておきます。


 映像は確かにきれいだった。雨が降っている感じとか、雪原をかけていくところとか、最後の山の感じとか。映像はキレイだったなぁ。あとジジデレは素晴らしい。じいさんはよかった。


以下暴言に近い素直な感想です。



【子供産まれるまで】

 多分いろんな人が既に言及してるのでいいかな、とは思うけれども

「学生なのに子供作るなよ……」

 とりあえず例のセックスシーンは「狼男!ケモノ!ケモナー!わふぅ!」という脳内スパイスで乗り切ったのですが、はっきり言って序盤にアレを持ってくるのは悪趣味。冒頭でセックスしてる奴はその後ジェイソンに頭かち割られるというジンクスがあってな。


 これ監督がケモナーセックス描きたかっただけじゃん! 別に子供が出来る展開に、セックスシーンはなくてもいいよ! 朝チュンとかそういうのもいらないよ! ねるねるねるね作るのに水道から水を汲んでくるくだりまで丁寧に描写しなくていいよ!


 あと花の性格「泣きそうな時も笑顔で乗り切る」っていうのがあまりにも漫画的すぎる性格で等身大の世界に一人だけ二頭身のゆるキャラがいて気持ち悪い感じ。オオカミ男以上に、このヒロインが人間離れしているのがすんごい気になった。その人間離れがその後化け物染みていくのが軽くホラーだし。


【子供生まれてから田舎に行くまで】


 まず疑惑のオオカミ男の死因。あの死体遺棄シーンを「美しい」とか「泣ける」と表現する人は、普段何を考えているのか人格を疑う。どう見ても「この後の展開にいらないから殺した」としか見えなかった。オオカミ男は社会の無理解や差別などに殺されたのではなく、映画の都合上、製作者によって殺されたんですよ。どう考えてもあのサイズの犬の死骸があったら生物学者来るだろう、とかオオカミ男も戸籍くらいあるだろうに、行方不明者扱い? とかゴミ収集車にボン、はただただグロテスクとか。この辺りから「ああ、この映画つまんないわ」と確信しました。

 結局最後までオオカミ男の死因は全くわかりませんでした。「全てを描かないのが映画だ」とか「その辺は他メディアで補完が」とか、映画の理屈は映画の中で全て語るべきだと思う。例えばそれが歴史や社会的出来事に基づく事実やメタ表現だったら、「わかる奴はわかればいいよ」という裏メッセージとして楽しむこともできる。でも、この世界のオオカミ男の設定はこの映画の中にしかない。それを説明しないでただまるっと丸投げは、あまりにも美しくない。


 そして子育て中のお母さん絶賛の育児あるあるゾーンなんですが、事象に共感する前に

「コレ大変でしょ?でしょでしょ?」「わかるわかる、子育て大変だよねー(ドヤ」

 という監督のドヤ顔がチラついて見ていられなかった。


 確かに大変だよ。急に熱出したり、騒いだり、ミルク吐いたり、グズったり、駄々こねたり。「ミルク吐くシーンが斬新」みたいなコメントも見たけど、映画アニメの嘔吐シーンだけだったら「千と千尋」とか「鷹の爪」とかのが露骨だし。(アニメだけならヒロインが排泄物を棒で拾い上げて見せびらかす作品も存在するし)確かに赤ん坊がミルクを吐くということは子育てをしたことがなければわからないかもしれない。赤ん坊はよく吐くしよくこぼすしよく散らかす。それは残念だけどストーリーに直接関係がなければ「あーあるある」でしかない。あとあと「あの嘔吐シーンが後でこのシーンに繋がるとは!?」となれば素晴らしいんだけど、実はこの都会の子育てシーンで後で振り返ることのできるシーンはほとんどない。

 
 だからこそかわいそうなシーンを畳み掛ければ畳み掛けるほど「俺はわかってわざと冷たくしてやってるんだぜぇ? ワイルドだろぉ?」みたいなそういう自意識が透けてきて、花がかわいそうになった。物議を醸しだしている児童相談所のシーンも、特にストーリーがどうとかではなく「都会で暮らす花がかわいそう」という演出のひとつでしかないと思うと非常に薄っぺらいシーンにしか見えないんですね。


 つまり、この映画全体の難点のひとつが

意味深に見えるイベントが実はストーリーに関係するのではなく、ヒロインの役割を補強するだけにすぎないという点。


 オオカミ男が死んじゃうシーンも雪が誤飲して小児科に電話するシーンもあの児童相談所訪問のシーンも実はすべて「花がエライんですよ」というだけのイベントだったわけで。ここまでが壮大な「前フリ」という正直お話の構造としては要らないシーンだったのです。つまりここまでのお話は中二病小説のよくある「○○地方にある○○山のなんとかドラゴンは何とかという宝石を隠し持っていてその宝石のいわれはうんたらかんたらでほんにゃらはんにゃらが魔法を用いて魔法の歴史はふんたらどーたらで……そんなわけで主人公たちは旅に出たのでした」みたいなただの解説なんですよ。いいからさっさと本編に入れ、と何度思ったことか。


【田舎に住んでから就学まで】

 「家の修理や農作業舐めんじゃねぇ」という野暮なツッコミはもうしません。ああこれはファンタジーなんだ、全てのイベントは「花最強」を補完するだけのイベントなんだと思うとどうでもよくなってきました。「子供を小学校に上げないのは虐待なのではないか」という野暮なツッコミもしません。全ては「花最強賛歌」なのですから。


 このころから雨と雪が少しずつ物語に関わってくるのですが、雪はお転婆、雨は引っ込み思案とやっぱり性格が漫画臭い。わかりやすい性格のほうが見ているほうはラクかもしれないけど、この後の展開がある程度予想できてしまい逆に非常に不安になってしまう。あとできっとこの二人は喧嘩するんだろうなぁ、と。


 雪原をかけるシーンはいいんだけど、雨が野生に目覚めるシーン(?)が本当に微妙。あれは大人になる通過儀礼か何かで、野性に目覚めるのとは何か違うんでないかなぁ。まあすべてが「子供を助ける花最強」イベントなのであんまり詳しくしてもなぁ、ってことだったんだろうか。


【子供たちの自立(?)まで】

 ここまで如何にこの映画が「花という女性賛歌」なのかをうんざりするほど取り上げてきましたが、この辺りから「子供たちの自立」というイベントがやってきます。雪は小学校で女の子としての自覚が芽生え、人間として生きることを選択する。雨は山の主になることでオオカミとして生きることを選択する。成長した雨と雪がオオカミの姿で本気で喧嘩をしているシーンはうまいな、と思いました。そのあと雪がお風呂で泣いているシーンはキレイでしたね。


 その決断自体は、「ああそうかぁ」くらいなんですけど、やっぱりその決断に持っていくまでの花がうざったいくらい「母親」をしている。特に、雨が山に入っていくことを選択するシーン。あれは、いろいろおかしい。映画を見ながら、「いつ雨は花にサヨナラを言うんだろう」とわくわくしていたのですが結局雨は「行かなきゃ」ってほぼ花を見捨てるように出ていくんですよね。ここまで「女性賛美」「花という人格最強」をテーマにしてきたのに、気がついたら森の中で迷子になってクマに食われかけるという残念な展開に。そこは本当に強い女性を貫くのであれば、中途半端に追いかけないほうがよかったんじゃないでしょうか。しかもなぜか死んだオオカミ男が出てくる臨死体験をして「お前は頑張ったよ」とさりげなく「花肯定」。それで山に消えていった雨に対して「頑張ってね!」と山に言って終わり。


工エエェェ(´д`)ェェエエ工


 結局「(強引に)息子離れした花エライ!」という展開か!!


 その間、学校で待たされた雪も迷惑です。雪の学校でのイベントは全く想定の範囲内だったので割愛。「花最強」を補完するために悩む娘が必要なので、先が読めるイベントは退屈です。しかし「犬臭い」というのはこの辺も漫画的であまりにも失礼ですね。「犬の毛がついている」とかもう少しわかりやすいほうがよかったのに。しかし学校や戸籍は「山に帰りました」と言って通用するんですかね……? 「子育てノイローゼの花が殺して埋めた」と言われていてもおかしくないですよね。


【まとめ】

 「花最強」を言いたいためにオオカミ男が死んで、雪が悩んで、雨がグレて出て行ったという話。花に感情移入ができないと、本当に花がクソにしか見えないんだよね。男に流され子供を設けて大学を休学し、田舎に移り住んで気が付いたら子供が一人行方不明になるわけですよ。このへんのファンタジーをうまく補うのがイベントなんですが、そのイベントをすべて「花最強」の演出に使ってしまったのが残念なんですよ。


 つまりイベントのまとまりがない。物語の練りこみが非常に薄い。ただ根拠なく「花最強」がやりたいだけというわけのわからない展開。


総評すると「金返せ」です。


 というわけで「風立ちぬ」見てきます。いろいろ「風立ちぬ」と比べたいところもあるので。