傍線部Aより愛を込めて ~映画の傍線部解釈~

主にひとり映画反省会。人の嫌いなものが好きらしい。

感想「えいがのおそ松さん」

待たせたな全国のカラ松ガールズ!

 


「えいがのおそ松さん」本予告【2019年3月15日全国ロードショー】


【あらすじ】

高校の同窓会に参加した6つ子たち。久しぶりに友人に会って楽しんでいたが、ニートであることがバレて気まずくなってしまう。家に帰り飲み直すが、誰も高校時代について語ろうとしない。そのまま寝てしまい、気がつくと6つ子たちは高校の卒業式の前日にやってきていた。

 

【感想(ネタバレなし)】

カラ松ガールズは見に行かないとダメな奴。

最初は劇場に行く予定はなかったのですが、思いがけずチャンスがあったので見てきました。見に行く予定もなかったのでほぼ前情報を入れていかなかったのですが、それはそれで正解だったと思います。

今回は高校時代の彼らがメインなのですが、直球に高校時代のエピソードをやるのではなく、相変わらずいやらしいメタ視点で話が進んでいきます。1発ネタや細切れのネタが多かった本編と違い、ちゃんと1本の映画として話がまとまっていたのはとてもよかったです。

 

アニメ本編ではギャグに加えて「これから俺たちどうなるんだろう」という未来への漠然とした不安があったのですが、映画では「俺たち今まで何してたんだっけ」と初めて過去を振り返ることになりました。そういう意味でも新鮮な話でした。

 

もちろんギャグは健在で、劇場でお客さんみんなが笑って泣いてをしていたのでなんというか、ひとつの体験をしたという意味ですごくよかったです。この映画は「おそ松さん」というコンテンツを楽しんだ人達に向けてのひとつのアンサーだと思うのです。

 

以下物語の核心にかなり触れるので鑑賞予定の方はお帰りください。

 

 

【感想(ネタバレ)】

まず高橋さんが何なのかって言われたら、懸命な人はすぐに「ファンの象徴」だってわかる気がする。誰が好きとかそういうのではなく、ずっと六つ子の関係性に癒しを貰っていた高橋さん。高橋さんは彼らの中に入ることはありませんでしたが、思い出を共有したいという望みを持ち、崩れゆく思い出の中でもずっと6つ子を待っていました。

 

そんなことは置いておいて、期待を裏切らないギャグの切れ味に安心しました。幽霊もたまにでる赤塚ホテルやニート村に始まり、ストロンガーゼロに寝相など序盤から飛ばしまくっていましたが、やはり18歳六つ子との遭遇は強烈でした。特に「てんてい!」はあまりにもインパクト強すぎて劇場出てからもしばらく「てんてい!」に毒されていました。すごいぞ「てんてい!」のアレは。

 

そんで後悔を抱えたカラ松の思い出の世界を旅するわけなんですが、この世界がなんとも不気味でグロテスク。ノリとしては1期のブラック工場みたいな感じ。「思い出の世界だから覚えていないことは曖昧」ということであちこちにモザイクがかかり通行人の顔は全部へのへのもへじになっている。へのへの横丁かっての。

 

この「思い出の世界」っていうのが今回一番の仕掛けで、単なる過去ではなく「思い出」にすればとりあえず(制作陣が)やりたい放題できるっていうのが名案というか、ズルいというか、すごいなぁと。だから今後続編などが作られたとして多少の齟齬が出ても「思い出の世界だから」で全部片付くし、いっそなかったことにも出来る。この仕掛けにまずは感動しました。

 

映画を見終わってから「カラ松だったら自分のことを相当美化した思い出にしているのではないか」とか思ったのですが、後悔を抱えている人間が美しい思い出なんて持っているわけがなく、カラ松どころか六つ子全員が高校時代を「なかったこと」にしていたのが印象的でした。「なかったこと」にしていたから「てんてー!」が面白かったのですがね。

 

大きな話をすると高橋さんに尽きるのですが、小さな話をしても尽きないのがこの映画の魅力ですかね。個人的にダヨーンでかなり笑いました。あとリフレインハタ坊。ハタ坊の使い方分かってる~。

 

そんな感じでおそ松さんも映画になったし、天才バカボンも深夜になったから次はモーレツア太郎を何らか展開して欲しいな。いやア太郎を大人設定にしたら松以上に生々しくなるんじゃないの? とか。アッコちゃんでもいいですよ。すごくどうでもいいんですけどßźの「HOME」って曲の中で「鏡を除けば自信の欠片も見えないくらい顔が見えたよ」ってところでさりげなく「テクマクマヤコン~」ってコーラスが入ってるのね。芸が細かいね。終わり。

感想「シュガー・ラッシュ:オンライン」

 ヒーローって何なんだろう。

 

 


【あらすじ】

 前作の冒険から6年。ラルフは変わらない毎日に退屈していたヴァネロペの望みを叶えようとしたが、手違いでシュガーラッシュの筐体を壊してしまう結果になる。シュガーラッシュのハンドルを探しにインターネットの世界へ行くが、もちろんハンドルを買うにはお金が必要。ラルフとヴァネロペはネットの世界でお金を稼ぐことになる。

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感想「ブルース・ブラザーズ」

 勝手にごめんなさい。

 

 

【あらすじ】

 ジェイクは刑期を終えて出所したばかり。弟のエルウッドとかつて世話になった孤児院へ挨拶に行くと5000ドルの税金を用意できなければ立ち退くしかないという惨状を聞く。何とか支払いはできないかと考えていたジェイクは思いつく。「そうだ、バンドをやろう」。そしてかつてのバンド仲間を探し、5000ドル稼ぐ旅が始まった。

 

【感想】

 タイトルは有名だけど詳しくは知らなかった映画。だから勝手に「ブルース・ブラザーズを名乗るバンドが孤児院を救うハチャメチャドタバタハートフルストーリー」だと思ってました。まぁ間違ってないけど。

 

 ぶっちゃけハートフルの部分が大きいと思ってました。「ぼくたちのおうちがなくなっちゃうよー」「今夜は歌って楽しい気分になろうぜ!」みたいな。まぁ間違ってないけど。そんなわけで序盤のカーチェイスで度肝を抜かれ、終盤のカーチェイスで大笑いしました。特に終盤のカーチェイスは「よくこんなの撮影したなぁ」という上を下にの大騒動で、パトカーがレゴブロックみたいにどんどん積まれていくのはとにかく爽快でした。

 

 下品な笑いにドタバタというよりハチャメチャなシーンが続くたびに「この映画にすごく偏見を持っていたんだなぁ」と申し訳なくなってきました。施設のみんなでレモネードを売ったり近くの公民館でチャリティーコンサートをやったりしてそこで主役の二人がけんかをするんだけど施設の子供たちのおかげで仲直りできました、みたいな映画を勝手に思い描いていてものすごく勝手な「ブルース・ブラザーズ」ができあがっていました。そんな偏見は最初の刑務所のシーンで怪しくなってきて、序盤のカーチェイスで「もしかしたらこの映画はそういう映画じゃないのかもしれない」と思いはじめてレイ・チャールズが出てきたあたりでもうどうでもよくなってしまいました。あのポスターを逆に貼るところはかなりひどいよな。

 

 内容的に現代リメイクするのは難しいかもしれないけど、是非あのカーチェイスを現代風にアレンジしたのを見たい。カーチェイスだけじゃなくて、豪華なキャストも現代風になってたら面白いよね。でも内容が無理だよなぁ。あの下品さが消えたら「ブルース・ブラザーズ」じゃないもんなぁ。おしまい。

 

感想「ネオン・デーモン」

 おまえうまそうだな

 

 

【あらすじ】

 ジェシーはその美貌でトップモデルになるためにロスへやってきた。すぐにカメラマンやデザイナーに気に入られるが、同業の女性からは嫉妬の目で見られる。そしてファッション業界の暗部の深みに嵌まっていく。

 

【感想】

 ポスターがキレイで面白そうだなと思ったので見てみました。露悪的な内容とは聞いていたのである程度覚悟を決めて見てみたのですが、なんか想像以上でした。

 

 この映画ブログの人の特徴として、気になった映画の前情報やあらすじは極力見ないようにして映画を見るという癖があります。ひとことで紹介した「ファッション業界でシノギを削る女の戦い」みたいなのをマイルドに想像していたら、結構ドギツイ奴でした。勝手に「待望の新人!」「なによむかつく!(靴に画鋲入れる)」「何するのよ!(SNSで怪情報を流す)」くらいの奴だと思っていたら、結構この辺ガチでした。ほのぼの女の戦いを想像して見たらアカン奴です。ちゃんと「グロ注意」と書いておかないと、ぷんぷん(いやちゃんと調べないで見るから……)。

 

 そんで華麗な前半のファッション事情みたいなのが終わると、いよいよドギツイ描写の始まりです。直接的なシーンはないものの、「ああヤッチマッターだな」という描写が続きます。しかしかなり観念的な世界にイッチマッタ感じなのでただぼんやり見ているだけだと「??」という感じです。まぁ部屋にでっかい猫がいる時点で不思議の国のアリス的なアレだよなあという感じはしていたけど。月が昇る部屋で致してるのは「うわぁ」という感じです。うわぁです。

 

 そしてラスト。いきなり目玉を生み出して「丸尾かな」とか思いながらもなかなか冷ややかな終わり方だと思いました。人を喰った末路が中から罪悪感(?)に苛まれて潰れていくけど誰も彼女を心配していないっていうのがちょっと怖いなと。誰も他人を人として扱っていないというか、思い通りに動くモノかなんかだと思っているようなところがリアルなのか虚構なのかわからないのもグラグラして怖いなと。

 

 ポスターがキレイなので見ようと思ったけど、ちょっと想像と中身が違っていい意味で期待外れな作品でした。もっと人間的な話も見たかったなぁと言うのは欲張りの感想ですね、はい。

感想「アヒルと鴨のコインロッカー」

 瑛太マジ瑛太

※この映画は結末を知らない方が楽しめる映画なので鑑賞予定のある方はお帰りください。

 

 

【あらすじ】

大学に入るのに越してきた椎名はボブ・ディランの「風に吹かれて」を口ずさむ。すると隣の部屋から現れたカワサキと名乗る男は、隣の隣の部屋に住む日本語が読めないブータン人ドルジのために椎名に本屋で辞書を強盗するよう持ちかける。

 

【感想】

 なんとなく話題の邦画だよなあと思いながら鑑賞。よく結末がすごいみたいなところで出てくるので期待しないで見たけど、最初は本当に辛かった。小学生が学芸会で発表するような発声に時系列がバラバラで登場人物の一貫性がない。これで90分以上見るのは辛いなぁと思っているうちに話はどんどん進行していく。

 

 そもそも濱田岳がそんなに好きじゃないのでうーむうーーむと濱田岳が翻弄されまくるところをぼんやりと眺めていた。瑛太が怪しい人物炸裂しててとにかくちぐはぐ。「何だろ前衛的な雰囲気を出したいのかな」と我慢して見ていくと、ひとつひとつ怪しいベールが剥がれていく。そして疑惑のシーンで疑問は氷解する。そして思う「瑛太頑張ったなぁ」と。

 

 この謎の男カワサキは椎名にカワサキを名乗っていただけで、実は話に出てくるブータン人のドルジだったのです。そのための伏線は違和感たっぷりの前半にちりばめられていて、後半は答え合わせのようにするすると進んでいきます。ああそうかああそうか、ああそうだったのか。そんな感じで映画は終わります。

 

 しかしスカッとする映画なのかといえばそうでもなく、ドルジが果たした復讐は後味の悪いものだし、音楽の神様を閉じ込めるというのもなんだかうやむやにしている感じがして無理矢理終わらせようとしているなという感じもする。小説だとあまり気にならないのかもしれない。

 

 とにかく瑛太がすごい。前半の怪しいカワサキから後半の悲哀漂うドルジになる瞬間がすごい。この難しい役をよくやったなあという印象。瑛太すごいよ瑛太、というのが一番の感想です。忘れた頃にもう一度見たい映画だなと思いました。おしまい。