傍線部Aより愛を込めて ~映画の傍線部解釈~

主にひとり映画反省会。人の嫌いなものが好きらしい。

感想「らせん」

 恐怖のスパイラルというか世界から逃げると言うこと。

 

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【あらすじ】

 監察医安藤満男は怪死した友人の高山竜司の検死をし、その遺体から不審なメモが見つかる。かなり不審な死に方をした高山の恋人に話を聞くと「ビデオに殺されたんです」と訳の分からないことを言う。やがて安藤は「呪いのビデオ」の存在にたどり着き、自らも呪いのビデオを見る。ところがビデオを見ないにも関わらず変死したものが出始めた。安藤は「呪い」の正体を探す。

 

【感想】

 前作『リング』の原作準拠の続編なのですが、趣がガラリと変わってホラーじゃなくなりました。貞子も怖くないし、お化けのシーンもそれほどありません。それよりも「ひとり、またひとり変死していく」という部分が怖いかもしれません。

 

 実は「リングらせんってJホラーの金字塔だけど見てないよな」と思って今回鑑賞したのですが、高山の解剖シーンではっきりわかりました。『らせん』だけ昔見たことあった。でも高山の解剖シーンだけ妙にリアルで覚えていただけで、残りの話は『リング』を見ないとよくわからないものだったので忘れていたのでした。何で観たんだろう、テレビでやっていたのかなぁ。

 

 今作は『リング』から継承された謎を解きつつ医療的に呪いを科学すると言うコンセプトですが、どちらかというとより人間の執念と言うものが見え隠れした感じで後味の悪い終わり方だなぁと思いました。怨念の塊の貞子は心に付け入る隙のある高野舞と安藤にすり寄って見事復活を果たす、という感じに見えたので余計憎悪の感情は怖い、という印象です。

 

 ただ全体的に『リング』に比べて退屈なシーンは多かったです。「科学する」ということなのでお化けがヴァ―という画面に比べれば単調になってしまうのは仕方ないのですが、一番の違いは前作が「死にたくない」と必死だったのに対して今作では安藤が「もう死にたい」とずっと思っていたところでしょう。死にたい人が死に向かっていくのは死にたくない人が向かっていくのに比べてやっぱりドラマがないんですね。

 

 そして一番の不満は原作からの変更点ということですが、やっぱり安藤と高野が寝るのは展開としても安直だし、何より安藤は妻子持ちなんだからやっぱりダメだろうというところです。せめて少しくらい罪悪感とか背徳とかそういうの強調してほしかったなぁ。死にかけの男が女々しいというのはわかるんだけど、なんか違うんだよなぁ。

 

 そしてラストは貞子大増殖と言うオカルトと言うよりパンデミック的な終わり方。私も貞子さん、あなたも貞子さん~♪というなんか地獄みたいな世界が予見されてエンド。正直安藤の行動が全て貞子の掌の上、という感じがやっぱり主人公として見苦しいし、明確に自作に続くという形で終わった『リング』に比べて終わり方に潔さがない。何より貞子が実体化したことで「得体のしれない者の恐怖」ではなく「貞子という怪物との戦い」にシフトチェンジしているのにそれが展開として明示されないまま終わるっていうのが何となく気持ち悪いんだと思う。嫌いではないけどね、何か物足りないんだ。このままだと人類は貞子に負けるっていう未来しか見えないからね。

 

 これでこの物語はおしまいだけど、『リング2』で違う世界が描かれているから、今度はそっちに期待しよう。