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傍線部Aより愛を込めて ~映画の傍線部解釈~

主にひとり映画反省会。人の嫌いなものが好きらしい。

感想「エド・ウッド」

 彼の人生に敗北の文字はない。

 

エド・ウッド [DVD]

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【あらすじ】

 駆け出し監督エド・ウッドは自分の作品を作ってくれる配給会社を探しているときに往年の怪奇スターであるベラ・ルゴシと知り合う。性転換した男の映画を作るのに「あの怪奇スターが出る」「僕は女装趣味だから気持ちはわかる」という強引な理由で映画を一本作るが、まるで評判は悪い。次作はプロレスラーを使って本格的に怪奇映画を撮ろうとするが、資金が足りない。なんとか完成にこぎつけるも、プレミアに来ていた客からポップコーンを浴びる始末。さらに年老いて仕事のなくなったベラは麻薬中毒になり、弱っていた。入院したベラにエドは「また映画を撮ろう」と約束する。そしてベラの遺作になる予定のSF映画の製作が始まる。

 

【感想】

 ジョニデの女装! めっちゃキレイ!


 ティム・バートンエド・ウッドが大好きだったということで作られた伝記的作品。でも、十分奇妙な男のコメディとして見ても成立する。奇妙過ぎて前半は話についていくのがやっとかもしれないけど。


 クソみたいな映画に当たると本当に「時間を返せ」と思うことも多い。でも製作者からすると全て「これは俺の一大傑作」になるわけで。でも悲しいかな、俺の傑作はお前の駄作なのが世の常。どんなに一生懸命作品を作っても、駄作呼ばわりする奴は絶対いるし、逆もある。自分としては大したことない奴が大絶賛されるというのも、よくあることである。そこで「俺としてはいいと思ったんだけどダメだったかー」となるか、「世間の目がおかしい、俺はこんなに大傑作を撮っているのに」となるか、それでその後の道が変わってくる。


 エド・ウッドはどちらでもなかった。世間の目は気にせず、観客を罵倒することもなくただ単に自分の撮りたいものだけをひたすら撮った。しかも対象は、幼いころに夢見た怪奇映画の世界である。現代で考えると、エドの映画そのものが「中二病黒歴史ノート」になっていると思う。思ったことを具現化できると、人はテンションがあがって他人からすると訳の分からないことを考え始める。マタニティハイで子供に変な名前を付ける母親もそんな気持ちかもしれない。エドは常にマタニティハイなのだ。


 この映画の見どころはグダグダな映画の撮影とジョニデの女装のほかに、エドとベラ・ルゴシの奇妙な友情もあると思う。モルヒネ中毒で死期の迫っているベラのために仕事を探したり入院させたりするエドが痛々しい。自分の子供のころの憧れが社会の隅でゴミのような扱いを受けているのを知ったら、皆がエドのように尽くせるだろうか。エドは思い立ったらやらないと気が済まない性質なのだろう。それが映画作りでは思い切りから廻っていたけれど、人間と人間のつながりの部分では非常にうまく行っていたのではないだろうか。言ったことは大体やる人は信用が厚い。出来の良し悪しではなく、「とりあえずやる」という精神は見習いたい。


 そして人と人の気まずい空気を作る間の取り方が面白い。何事も即決するエドに振り回される周囲の温度のギャップが丁寧に描かれている。チープすぎる映画の撮影もひとり楽しそうなエドと半分「大丈夫か?」というスタッフの絶妙な空気に支配された空間が面白すぎる。明らかに歓迎されていない完成試写会に堂々と現れるのはちょっと面白かった。


 映画はダメダメでもその生きざまは映画にしたら面白かったというすげぇ皮肉が最高です。エンディングの「その後の人生」のテロップがまた味わい深い。何かを考えたい人向けのコメディだと思いました、まる。