傍線部Aより愛を込めて ~映画の傍線部解釈~

主にひとり映画反省会。人の嫌いなものが好きらしい。

感想「タオルケットをもう一度2」

 絶望なんて知らなかった 君に会えるまで 信じていたから

 

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【あらすじ】

 田舎の村に住む主人公の男の子と牛ちゃんと幼馴染のぱりぱりうめ。ある日牛ちゃんが宇宙人にさらわれてしまった。牛ちゃんを愛する男の子は牛ちゃんを探しに行って行方不明になってしまった。ぱりぱりうめは男の子を探すために光恵というアナウンサーの言葉を信じて都会に行く。その頃、宇宙人によって地球侵略の準備が進められていて……。

 

 【感想(ほんのりネタバレ)】

 覚悟はしていました。「鬱」「グロ」という前評判を気にせずプレイしました。幸せなんか知るか、どんとこいという気持ちで挑みました。


 ダメでした。


 戦闘は相変わらずまったりでおまけ程度の物ですが、話を進めるうちにどんどん雲行きが怪しくなっていきます。そもそも「牛と相思相愛」という時点で何かがおかしいと思うべきなのですが、この程度でツッコミを入れていては後々のプレイが難しいので「そういうことなんだなぁ」と割り切るしかありません。


 でも、「牛と子供を作る(文字そのままの意味です)」「クローンで失敗作は処分される」をド直球で打ち込まれるとへこみます。そしてPPU(ぱりぱりうめ)の風俗街での暮らし。落ち込みます。そんな中でのムードメーカーの牛ちゃんが救いでした。この牛ちゃんがかわいいんだよね。人間じゃないのに、最後までヒロインのように愛おしい。


 そしてアナウンサーの光恵さんやケツアゴ博士(これもひどい名前)と一緒に生き残った人間たちと逃げる主人公たち。主人公はUFOから落下したせいで記憶が全部なくなっています。というより、牛ちゃんと逃げた主人公は厳密にいうとクローンで、オリジナルは宇宙船の奥で眠っています。男の子の記憶が戻っても、誰もいいことはないのです。見てないけどクレヨンしんちゃんの「ロボとーちゃん」状態なわけです。もうこの時点で救いは一切ない。


 その後の展開は悲しすぎて何も言えない。最終的に主人公はPPUの心の中に入っていきます。ここから先はグラフィックが変わり、PPUの何とも言えない汚い本音の世界になります。男の子を探しに行って汚されたこと。再会したのに相手が覚えていないこと。散々見てきた殺戮のこと。必死で逃げてきたのにそれも敵わないかもしれないこと。汚い世界に閉じこもるPPUを思い出すことが、彼女の唯一の救い。そして救いはかなって、そこでエンド。


 いやね。ここまで徹底されると流石に後味すっきりですよ。究極の魂の救済があったのちのエンディングですよ。追い詰められて追い詰められて最期ちょっといいことがあって「よかったね」って一言があって、それで終わり。とってもきれいな物語。時に人にとって死は救済になる。多分生きて彼に会えないままの彼女より、死んでも偽者でも彼に会えた彼女は救われたと思う。ラストはゆめにっきとか言われているけれど、そういう表現の典型だと思うことにした。深い悲しみが積もり積もると、ああいうことになる。


 プレイ時間は大体8時間くらいかな。敵が強くて進めなくなることはないし、回復アイテムもバンバン出てくるからクリアするだけなら楽ちんですが、精神的なところでは覚悟をしておいてください。終わった後、何かしら底にたまっていたようなものが抜け出ていく感じです。すべては魂の業のなせる業です。このイベントすべてを考えた作者が素晴らしい。