傍線部Aより愛を込めて ~映画の傍線部解釈~

主にひとり映画反省会。人の嫌いなものが好きらしい。

感想「SING」

ラストはいいんだよ。

 


【あらすじ】

潰れかけの劇場の支配人バスタ・ムーンは起死回生の企画として歌のコンテストを実施することにする。賞金を目当てに冴えない日常を繰り広げるメンバーが集結するが、賞金は架空のもので夢見ていた一同は落胆するも「コンテスト」を成功させようとする。


【感想】

いや、いいんだよ。歌は文句ないんだよ。ラストの盛り上がりはやばいんだよ。だけど、だけど、もうちょっと何とかならんのかっていうのが正直な感想。


※以下クソ酷評(しかも長い)なので辛い方はお戻りください。


いや、歌はいいんだよ。ラスト最高だと思うけどさ。


一時期「シン・ゴジラには無駄に足を引っ張る無能がいない」という話があったけど、おそらくこの作品は「無駄に足を引っ張る無能」だらけの作品なんだと思う。それが「ズートピア」との違い。ズートピアは事件に必然性があるけど、この作品には「必然性」が見当たらない。行き当たりばったりだけどなんか頑張った、みたいな印象。ラストはいいんだけどさ。


まず支配人のコアラのキャラが最後までよくわからなかった。トカゲのおばあちゃんとの関係もよくわからないし、おばあちゃんの足の引っ張りはもちろんコアラのやってることが本当に行き当たりばったりで辛い。ブロガーが芸術家とかアーティストとか名乗り始めたみたいな不安になる迷走感がある。ラストはいいんだよ。


それに各人の問題も見ていて胸糞なものばかり。ゴリラはモロに人種差別、貧困問題だしブタは女性蔑視だしハリネズミデートDVだしネズミとゾウは何らかの精神的疾患を感じさせる。いや、それらの問題を取り上げるのはいいんだよ。だけど、落とすだけ落として中盤でひとつも盛り上がらないのは如何なものか。歌がすごいと聞いていたのに中盤の空洞は頂けない。ラストはいいんだよ。


個人的にイルミネーションのギャグが好きじゃないだけかもしれないけど、ギャグに必然性を感じないのよ。話の流れで「フフっ」となるのではなく、ギャグをやりたくて話をギャグに寄せてる感じ。ラストがやりたいから過程を無理矢理悲惨にした、みたいな。


コアラがクズという評を見るけど、このコアラのクズというかキャラに必然性が見られないんだよね。洗車シーンもギャグのためにやってる感じだし、話に一貫性を感じない。劇場を潰したくなかったらもっとやるべきことたくさんあるだろ……という感じ。


そんでこれも他の評に多かったけど、ネズミのキャラ設定が甘い。何故彼が暴言を吐くのかの理由がわかるシーンが少ない。ズートピアはゾウのアイスクリーム店で表現していたところだと思うんだけど、それが明示されないからモヤモヤする。


ゴリラパートは完全に「天使にラブソングを2」で辛くなった。基本的にコミカルなシーンがない。辛い。それ以上に辛いのがヤマアラシパート。「失恋」じゃねえよ彼氏がデートDVモラハラ野郎だよ。学生相談室とかだったら全力でサポートしないとダメな案件じゃないですか。ブタの育児パートは比較的心が安らぐシーン。ゾウは完全に本人の問題なので辛いシーンは特にない。


そんで散々言われてるんだけどネズミのキャラが本当に迷子で困った。小さくて虐められるシーンが何度かあればわからないでもないんだけど、そういうのが特に見当たらないのが辛い。ゾウとの比較キャラなんだろうけど、ただのうだうだ言いまくる不快なオッサンになっている。彼の存在意義は何だろうともう一度映画を見たんだけど、「俺は本物しか認めねえ」という彼がゾウの歌声を聞いて震えるシーン。これのために彼がいたのかと思うと悲しくなってくる。


唯一よかったのが「吹き替え声優」というのも皮肉な話。内村光良は役者経験も豊富だし、役柄によくあっていたと思う(クズという意味ではない)。ゴリラがスキマスイッチ大橋卓弥ハリネズミ長澤まさみ、ブタは坂本真綾でネズミは山寺宏一。そしてゾウがMISIA。本業が歌手の方々は演技の面に不安はあったけど、キャラクター的に不安を抱えている役だったのでそれがいい効果を出していたと思う。MISIAのボソボソした声が歌のシーンでぶわぁーっとなるところは最高。そう、ラストは最高なのである。


もうさ、最後のシーンだけ延々とやってりゃよくね? ってくらい序盤~中盤のシーンにダメダメ感が漂っている。ダメダメな僕らが頑張ったカタルシスが欲しいのは分かるけど、ラストでぶち上げるだけの伏線がほぼ存在しない。そうなるとただ歌が上手いだけじゃんってなる。それは単にキャラの掘り下げが足りないだけだと思うんだよね。比較的ブタパートは育児に追われる冴えない主婦が最後はダンスも出来てるよっていうわかりやすい筋は見えた。でもゴリラパートはぶっちゃけ相当しんどいしハリネズミパートはモラハラ彼氏にビシッとした鉄槌がないのでカタルシスが減る。ネズミはまず葛藤がないしゾウはもう最後歌えばいいよって参加賞じゃないんだから。最後感動したのはゾウが歌ったからじゃない、MISIAの歌が最高だったからや。映画に感動してねえんだよ。


こんだけ豚みたいにブーブー言ってるんだけど、おそらくイルミネーションのアニメと相性がかなり悪いんだと思う。ミニオンズの何がいいのかよくわからない。一応『月泥棒』を見れば彼らの魅力がわかるのかと思ったけど、全然わからなかった。鶴瓶の声が和むわぁとかそんな印象しかなかった。なんだろう、どうしてこんなにイルミネーションと合わないんだろう。その理由が知りたいわ。そういうわけで今後もイルミネーションの映画を見れたら見てみようと思う。そんな映画鑑賞もありかなぁ。おしまい。