傍線部Aより愛を込めて ~映画の傍線部解釈~

主にひとり映画反省会。人の嫌いなものが好きらしい。

感想「クレイマー・クレイマー」

 元祖イクメン

 

 

【あらすじ】

 会社員のテッドは非常に仕事熱心だったが、急に妻のジョアンナが息子ビリーを置いて出て行ってしまう。テッドはビリーの世話と仕事の両立に悩みながら、ビリーとの絆を育んでいく。

 

【感想】

 父子ものの傑作ということで泣きに行きました。まぁ普通に泣けますよね。これは辛いし、感動要素もある。役者がとってもいい。ダスティン・ホフマンが出ているだけで泣けてくるのは何故だろう。フレンチトーストの場面は最初と最後で重ねてくるの反則だと思います。グダグダな最初のフレンチトーストと比べた最後のフレンチトーストの完璧な作り方と裏腹の苦そうな感じ。辛い。

 

 この映画の見どころはもちろん父子の絆なんですけど、それと同時に「描かれていないもの」にも注目できるのかなぁと思いました。もちろんこの映画に決定的に足りない者は「母親の心情」です。何故出て行ったのかとかどうして子供を引き取りたいと気持ちを変えたのかといったことが観客にはイマイチ伝わってこないのです。

 

 もちろん彼女の中ではしっかり理由もあって、心変わりの理由もはっきりしているのでしょうが、それを映画の中で名言することはありませんでした。それはこの映画がテッドの視点で描かれているからで、彼が彼女を真に理解していないということを表していると思いました。自分一人で完結してワーッとなっちゃう人っているよねーと思いながら見ていました。自分の意見や感情はちゃんと定期的に伝えよう。

 

 現代から結構昔の話なのでシングルファザーがどのような境遇にあるかということも問題提起としていいなぁと思いました。もちろんシングルマザーも大問題なのですが、周囲の無理解みたいなものはファザーのほうがやっぱり風当り的に強そうです。子供の世話をしなくてはいけないからという理由で今までの仕事を辞めさせられるというのは辛いですね。この辺はマザーも一緒ですね。保育園やベビーシッターの拡充は社会的に必要だなぁ。

 

 この映画、明確に心情がわかるのはテッドだけで、あとはテッドから見た光景ということが徹底していてジョアンナはもちろん、ビリーの心情すらそんな感じなのです。だから見る人によってこの映画の印象は結構違ってくるのではないだろうか。男性なら「わかるわかる」となるし、女性なら「そんなの男の勝手じゃん」となるかもしれない。そんな風に含みを持たせている幅広い映画だと思いました。おしまい。