傍線部Aより愛を込めて ~映画の傍線部解釈~

主にひとり映画反省会。人の嫌いなものが好きらしい。

感想「LEGO(R)ムービー」

 全てがサイコー!

 

 

【あらすじ】

 全てがレゴブロックで出来ているレゴシティで暮らしている平凡な作業員エメットはある日ひょんなことから世界を救うことのできる「奇跡のパーツ」を見つけ、レゴブロックを自由に操ることのできるマスター・ビルダーのワイルドガールに世界を救う「選ばれし者」だと思われてしまう。エメットはわけのわからないまま「スパボン」を使用して世界を破滅させようとしている「おしごと大王」との戦いに巻き込まれていく。

 

 【感想】

 最初、この映画を正直舐めてました。「レゴって言ったって子供向けでしょ?」とばかりに何でこんなに高評価が着くのかなぁとか思っていました。クレヨンしんちゃんの映画的な何かでもあるのかなぁとか思っていたのですが、実際見てみると確かに大人向けのメッセージもありつつ子供も退屈しない感じで非常によい映画でした。

 

 作業員のエメットは「平凡」以外に説明できるものがなく、マニュアル通りの右へ倣えを愛するキャラクターでした。普通の映画であれば「平凡」というのはマイナスな要素でコンプレックスを抱えてもよさそうなのですが、エメットの場合は「逸脱」や「創造」という発想が存在しないと言う感じです。

 

 そんな彼が「奇跡のパーツ」を発見し、ワイルドガールに「選ばれし者」と勘違いされて半ば強引に冒険の旅へ旅立たされる前半の展開は「普通」と呼ばれる者の悲哀がたっぷりで見ているのがキツいところもあります。エメットとしてはみんなと仲良くしているつもりだったのに、周囲の人の彼の評判は「モブその1」程度の扱いで誰も彼を個人の「エメット」として認識していなかったのは辛い。この辺から「あれ、これ結構大人向けじゃない?」と思い始めました。

 

 それからのエメットは散々でした。レゴを自由に操ることのできるマスター・ビルダーたちからは「何て平凡な発想」「使えない男」として見捨てられ、精一杯作り出した作品は「二段ソファ」という平凡すぎて逆にそんな発想しないと言われるようなものでした。ところが敵の襲撃からその「いかにも使えない」特性を持った二段ソファに助けられ、エメットの「創造力にはマニュアルも大事だ」という演説が認められ、一同は「おしごと大王」の本拠地へ乗り込んでいきます。

 

 ここに来るまで話の筋はわかりやすいのですが、小ネタのオンパレードで頭がクラクラするくらいでした。自分はあんまりアメコミ系映画観ないのでちゃんと拾えたのはわずかだったと思いますが、それにしてもほぼ小ネタオンリーでやりきった感じはしました。見る人が見たら面白いんだろうな。

 

 さて、おしごと大王に近づいてあと一歩というところでエメットは奇跡のパーツごと外の世界に落とされてしまいます。エメットの行き着いた先は、レゴで遊んでいる人間たちの世界。彼らからすれば「上の人」として神様扱いしている存在です。そこで観客は「エメット」がこの世界で遊んでいる少年の自己投影であり、「おしごと大王」はレゴをマニュアル通りに組み立てたお父さんであることを把握します。

 

  おそらく少年エメットは「もっと自由な発想が欲しい」と渇望していたのだろう。作業員エメットに「普通」という属性を持たせて、「普通な僕だけど自由にいろいろ作りたい」という欲望をレゴの世界で叶えていたのではないか。マニュアル通りのレゴではない何かが欲しい。でも、マニュアル通りに作ることも大切。マニュアルを超えて、初めて創造というものが生まれてくる。このパートから「普通とは(逸脱とは)何か」という視点以外に「トイストーリー3」にも似た感覚を味わうのはおもちゃをテーマにした映画の宿命なのかもしれない。

 

 作業員エメットは少年エメットの手によりマスター・ビルダーとして最終決戦に臨む。「自由なレゴの世界を」という争いは少年エメットと「おしごと大王」の和解という形で終わり、作業員エメットは等身大の自分を出すことが出来たワイルドガールと平和を喜ぶというエンド。大団円でよかったよかった。ただ続編を匂わせるような終わり方でもあったので、もしこの作品の純粋な続編が出るなら期待だな。

 

 この映画は主題歌も大好き。全てがサイコー。

 


Everything Is AWESOME!!! -- The LEGO® Movie -- Tegan and Sara feat. The Lonely Island