傍線部Aより愛を込めて ~映画の傍線部解釈~

主にひとり映画反省会。人の嫌いなものが好きらしい。

感想「フリージア」

 原作通りにやるなんて原作ファンなら百も承知だよ。

 

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【あらすじ】

 敵討ちが合法になり、仇討ちをする執行代理人として活動する叶ヒロシ。彼をスカウトしたヒグチとは因縁があり、かつて軍が秘密裏に行った「フェンリル計画」の生き残りである彼らは敵討ちの執行の中で過去の清算を行う。

 

 【感想】

 正直に言えば、原作の大ファンです。だからこそ「映画」は見たくなかったのです。でもヒグチをあのつぐみがやっている、ということでとりあえず見た次第です。この作品においては原作通りにできないことは百も承知でした。だからとりあえず「ヒグチ=つぐみ」を見ようと言うだけの好奇心です。電波メガネも友達もお母さんも溝口ヒャッハーも実写化してスクリーンなんてとんでもないことになるしかないです。

 

 実は数ある漫画の中でこの「ヒグチ」という女がかなり好きで、ヒサエとのやりとりの中で見る彼女の存在感を示すシーンがすっごく好きなのですが、そういう「ヒグチ」ではなく映画オリジナルの「ヒグチ」になってしまったことがちょっと残念でした。つぐみにあの「ヒグチ」をやってもらいたいなぁと思わずにはいられません。ついでに言うとヒサエの最後もすごく好きです。

 

 そういうわけで、映画の内容には何の期待もしていませんでした。溝口パイセンが原作よりアホの子になっているとか叶が電波じゃないとかなんかいろいろあるのですが、もうストーリーが全然違うので話にならないのでストーリーの内容については省略。多分このお話自体はきれいにまとまっていたと思います。叶の成長が明確に描かれていたのが、もう原作を読んでいると「おぉ……」となるわけです。「これは叶じゃない、別の次元の叶だ」と思わずにはいられない。原作の叶も確かに成長するんだけど、そういうわかりやすい成長の仕方をしていないからなぁ。

 

 その成長のシーンの伏線になるナポリタンスパゲティを最初に喫茶店で食べるシーン。唐突に外にいたデモ隊が暴徒化して店内にまで押し入ってくるのですが、それでも叶は平然とスパゲティを食べ続ける。「あ、これこそ松本次郎の世界だ!」とこのカットだけですごく納得して、原作の狂気を全てこのカットに割り振ったんだと言う気がしました。溝口も原作のように狂って自滅するのではなく、頭が足りないばかりに自滅した感じがするのであの狂気も叶の狂気も全てこの喫茶店のカットに詰まっているのです。

 

 もうこのシーンを見たら「あ、これでいいや」ってなってしまったので後は「幽霊殺しをよく頑張ったなぁ」とか「ヒグチはこんなにかわいい子じゃない!」とかそんなことをダラダラ思いながら見ていました。そういうわけで冒頭の暴徒シーンは松本次郎ファンなら必見です。あと、アクション系は邦画にしては結構頑張っていたと思います。少なくともお遊戯会ではないので安心してみてました。以上です。