傍線部Aより愛を込めて ~映画の傍線部解釈~

主にひとり映画反省会。人の嫌いなものが好きらしい。

感想「バーバレラ」

 エロい人は見るものも違うのです。

 

バーバレラ [Blu-ray]

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【あらすじ】

 戦争もなくなって兵器も博物館に飾られるようになった未来、地球政府から行方不明の科学者を捜索するという任務を得た女宇宙飛行士バーバレラ。目的の星までやってきたが、磁気嵐にあって宇宙船は不時着。そこから彼女の大冒険が始まる。

 

 【感想】

 うーん、思っていたよりエロい。オサレエロだこれは。やっぱり名前の残る映画は伊達じゃなく何か持っていると思う。製作がフランスっていうのもエロい。何がエロいって、OPの無重力ストリップでかなりエロい。ただエロいだけじゃなくて、映像がオサレすぎて死にそう。なんだこのオサレエロ空間。このOPの間「どうやってこういうふわふわ空間の演出していたんだろう」ってことばかり気になってしまった。

 


ジェーン・フォンダ 「バーバレラ」1968年 オープニング - YouTube

 

 中身は単なるご都合主義の冒険活劇なんだけど、とにかく小道具とか美術や小ネタがいろいろオサレすぎて映像が楽しい。今となっては何だろうって感じの宇宙船の外装とか、ファーが敷き詰められて田舎によくあるワゴンRみたいになってる内装とか、それなのになんか美術品が飾ってある謎空間とか、栄養補給の謎液体とか、もうそういうギミックでお腹いっぱい。すげぇ面白い。

 

 もう宇宙船パートでメロメロなんだけど、目的の星にやってきてからこれまたすごい。謎の子供たちに拉致られて不気味な人形で謎の拷問を受けてちょうどいい感じに破ける服。そして柱に縛り付けられてアンアン悶えるバーバレラ。OPは置いておいて、初っ端からものすごくエロいです。そして最後まで見ても、この拷問が一体何のためのものかよくわからないのもポイントが高いです。

 

 そして助けてくれた御仁のお礼が「セックス(旧式)」っていうもので、今時の地球では「ピル(興奮伝達剤)」なるものを服用して手のひらを合わせるとめちゃくちゃ気持ちよくなるらしいです。そんなハックスリィの世界みたいなセックスなんて冗談、俺は姉ちゃんアンタに突っ込みたいんだと正直に伝える命の恩人。「あれは貧しい人たちがやるものよ!」と一度拒絶するバーバレラだけど、身体は正直なので旧式のセックスを堪能。すっかりハマってしまう。それにしても「(旧式の)セックスは貧しい人だけがする」ってすごい字面。いろいろここから考えてしまう。

 

 そして悪の都ソゴーに目的の科学者がいるって情報を得るんだけど、このソゴーの前の善人が捨てられている迷路がかなり悲惨。蘭の花を食べて生きているとか一体どういうことなんだ。飛ぶ気力を失った盲目のイケメン有翼人をバーバレラの魅力で飛行能力を取り戻したり空中戦と展開したりといろいろあって、悪の都に何とかたどり着く。どうでもいいけど「ソゴー」って聞くとどうしても「そごう」になっちゃうんだけど、多分「ソドムとゴモラ」のことなんだろうな。

 

 悪の都ではこれまたエロい女帝にイケメン有翼人と一緒に捕まって、「インコのエサになる」というビジュアルだけに特化したよくわからない拷問を受けるバーバレラ。そしてまたいい具合に服が破け、アンアン悶えるよくわからないエロ展開。そこからなんとか脱出すると革命軍のアジトで、また助けてもらったお礼にセックスをせがまれる。今度は今風の「クスリを飲んで手のひらを合わせたら気持ちいい!」をヤるのですが、なんかボンボンしてるだけで何かの宗教儀式のようにしか見えない。やっぱり濡れたりするのかなぁ。

 

 その後「女帝を倒すには見えない壁を見えない鍵で開ける」というミッションが始まるのですが、この辺のギミックが素敵すぎて本当にたまらない。見えない壁に見えない鍵というのも実際にカッコいいのですが、やっぱり敵に捕まって「セックスマシーンで拷問」が一番です。音響で気持ち良くして快楽の絶頂の時に死ぬらしいのですが、ただ気持ちいいだけで終わってしまいます。よくあるエロ漫画をそのまま映画にした感じがすごくたまんないです。

 

Barbarella (1968) in the Excessive Machine - YouTube

 

 その後は黒幕とかいろんな伏線回収で悪の帝国がなくなってハッピーエンドでおしまいです。エロパートがもうないのであっさりです。

 

 徹頭徹尾「エロい」しか感想のない映画でした。でもその「エロい」もかなりレベルの高いアート的な「エロい」なので見ていて楽しいです。ただストーリーを求めるとただのエロ漫画なのでオススメはしません。キッチュな映像を楽しみたい人にひたすらオススメです。

 

 あと、この映画を知ったのは「SFファンタジア第一巻」に書いてあったからというのが大きくて、今引っ張り出してきてよく見たら「セックスマシーン」のくだりは拷問って紹介されていないし、何故か女帝を「バーバレラ」と紹介しているし、「これ書いた奴映画観てないな!!」っていうのがわかってなんか40年越しくらいに面白かった。他にも読み返してみると『人間がいっぱい』の説明も微妙に違う気がするし、やっぱり原典にあたるのは大事だなぁと思った次第です、終わり。