傍線部Aより愛を込めて ~映画の傍線部解釈~

主にひとり映画反省会。人の嫌いなものが好きらしい。

感想「マッドマックス・怒りのデスロード」

 頭悪い映画大好き。

 

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映画『マッドマックス 怒りのデス・ロード』日本版予告編 - YouTube

 

【あらすじ】

 俺はごく普通の旅人マックス。ある日。ひょんなことからイモータン・ジョーとかいう支配者に捕まって生きながら血を抜かれる奴隷になっちまった! なんとかここを脱出しようとしたけど、何かフュリオサとかいう人が裏切ったから追いかけて総攻撃をしかけることになったらしくて、でもそれと俺が車の先頭にくくりつけられることに何の関係があるんだ! まともな奴らがいない世界で俺が大活躍する映画、見てくれよな!

 

【感想】

 知能が下がる映画大好き。無駄にヒャッハー、無駄に爆発、無駄に汚物は消毒だ! みたいな。「や、お前そこコスパ悪ぃからやめとき」みたいなことは考えてはいけない。どう考えてもギターが火を吹く意味がわからない。『マッドマックス2』を見ていたら「油がもったいない!」って思うシーンばかり。

 

 開始からマックスの逃亡劇でウォーボーイズがわらわら出てくるところで興奮して、イモータン閣下の過酷で雑な取水制限で笑いをこらえ、「いざ出陣!」でついにニヤニヤが臨界点に達して、「ヤマアラシ」の形状でとどめを刺されて、最後の長槍部隊の猛攻と「ババアつおい」でいろんな何かがぶっ飛び、映画館を出た頃は知性とか理性とかそういうのは一体何なんだろうって白く考え込むような映画でした。

 

 日本語吹き替えの評判の悪さに字幕2Dを選択してしまったけれど、3Dで見ておけばよかったなーと後で思いました。もうもうと立ち込める砂煙、火を吹くギター、爆発する岸壁、とにかく最初から最後までクライマックスのドッカンドッカンでストーリーなんてあってないようなものなのでこの豪華なジャンキー映像に酔いしれるのがいい「マッドマックス」の消費方法なんだろうなぁと思いました。

 

 単品でこの映画を見るのも楽しいのですが、やっぱり過去作を見ているとニヤニヤできるシーンはあっていいですね。オルゴールに不発の銃弾、マックスが乗って活躍しないインターセプターなどゆるーい連結が見られたのがよかったです。ギミックもそうなんですが、「1」のトーカッター役のヒュー・キース・バーンさんがイモータン・ジョー役というのも感慨深いですね。

 

 他にもウォーボーイズの信仰とか逃げ出した妻の役割とか、細部を煮詰めればいくらでも煮詰められそうなんだけどそれを上回る圧倒的なアクションシーンの質と量がこれでもかこれでもかと襲い掛かってきて、割とそれどころじゃないというのが一番の感想です。例えば木をみたことがないニュークスの心境の変化とかその辺を繊細に見ていくとすごく面白いと思うのですが、「あー、そんなこともあったねぇ、それも面白いね」くらいになっちゃう。とにかくメインはドドドドドバンバンボゴンボゴンブオオオオオンバキボコメキャバリであって、そういう「ストーリー」がおまけになっちゃってるところがまさに「活動写真」って感じがしました。

 

 それからPCについてですが、女性解放とかそういう局面もこの映画に含まれるのは確かだと思います。だけどそこだけ切り取ってベイマックスみたいに「この映画はPCに配慮しているから面白い」というキャンペーンをしてほしくないなぁというのが正直な感想です。「マッドマックスは面白い、更にPCに配慮している」ではなくて「PCに配慮しているからマッドマックスは面白い」という感想であふれていたらイヤだなぁと思ったのは本当のところです。今のところそういう「俺の趣味と一致したから絶対傑作である」という感想は見ていないのですが、政治的正しさと狂った世界の作品解釈ってごっちゃにすると反発しか招かないので扱いが難しいと思った次第です。どこでも虚構と現実の区別はしっかりしないとね。

 

 もし見ていないなら、せめて大画面で見たほうがいい映画です。映画と言うか、活動写真と言うか、アトラクションです。考えない、感じる映画。求める正義も悪も関係なく、ただ俺の気に食わない奴ァぶっ飛ばすというそれだけの思考でいいです。狂ってる? それ、褒め言葉ね。