傍線部Aより愛を込めて ~映画の傍線部解釈~

主にひとり映画反省会。人の嫌いなものが好きらしい。

感想『悪魔のいけにえ』

 最近暑くなってきたのでそろそろホラーを見ないとと思い、古典的名作を鑑賞しました。夏にホラーを見るのは国民の義務です。

 

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【あらすじ】

 テキサスの某所。墓荒らしが出没している中、5人の男女がドライブをしていた。途中でヒッチハイクをしていた男を乗せるが、急に気味の悪いことを言い自傷行為を始めたので車から追い出した。その後5人は恐怖の惨劇に見舞われる。

 

【感想】

 古典はやっぱり面白い!

 

 スプラッタ・ホラーの元祖として、そして元気よくチェーンソーを振り回す殺人鬼レザーフェイスくんといい、後半叫びっぱなしのヒロインといい、まさしく「元祖」なんだと思った。ニューヨーク近代美術館にフィルムが保管されているだけある。

 

 何が一番面白かったかと言えば、やっぱりレザーフェイスくんとの追いかけっこのシーンですね。チェーンソー抱えてのっしのっし走ってるのに何だかスピーディーに感じてしまうのはヒロインが追い詰められているからですかね。このどうしようもない緊張感はホラーの醍醐味です。あとびっくり箱のシーンで普通にびっくりしました。あれはびっくりする。

 

 そして特筆すべきはどう見ても不快な印象しか持たない絶妙な小道具たち。人間の骨で創られた謎のアートとか、冒頭の墓場荒らしのシーンとか、木にぶら下がっている時計とか、全てが不吉な予感がしてじわじわと観客を恐怖の淵へ追い込んで、有名なカーク惨殺シーンで一気にどん底に突き落とす、まさしく逆カタルシスです。ちなみに自分は落ちている歯が一番イヤでした。もうすぐ親知らずを抜く予定なのでそういうのを見るとぞわっとするんですよ。

 

 更に追いかけっこが終わってほっとしたと思ったら、再度レザーフェイス家へ連れて行かれるヒロインの展開はちょっと胸が熱くなりました。そして絶対ミイラだと思っていた爺ちゃんが生きていたのもびっくり。この辺から「恐怖」に混じった「これ笑っていいの?」パートに入ります。レザーフェイス単体でもオカシイのに輪をかけてオカシイ家族がやってきて、ヒロインの仲間は既に全員やられているというまさに絶望状態。もういっそ一思いに殺してくれ状態。

 

 そんで驚いたのが「爺ちゃんが生きていた!」ってことです。「爺ちゃんは殺しの天才なんだ!」「ハンマーをちゃんと持って」とか、よぼよぼの爺ちゃんに頼むのは無理ってもんです。何とか逃げる隙を製作側として作ったんでしょうけど、この辺りの狂った家族描写は完全にホラーの域を超えています。ただの気持ち悪い何かです。だが、それがいい

 

 最終的にヒロインは血だらけになりながら助かるのですが、トラックの荷台で最初は恐怖にひきつっていた顔からだんだん「生き延びてやった!ざまあみろ!」という狂ったような笑いになって、悔しがるレザーフェイスを見るシーンは最高です。それにキレてやたらめったらチェーンソーをぶん回すレザーフェイスも芸術的です。なんかこのシーンだけで全てが始まって終わるんだなぁって思った。

 

 この作品の何がスゴイかって言えば、これだけ殺人鬼の映画で怖い怖い言われているのに、直接的なゴアシーンが皆無だっていうことです。「痛そう!怖い!」ではなく純粋に「怖い!」を描いているからこれだけ怖くなったんだと思います。血が一番出るのはラストのシーンですが既に気持ち悪い感じじゃなくて何だかさわやかなんですよね。あんなに血まみれでさわやかなヒロインも他にはいないだろうな。

 

 とりあえずめちゃくちゃ面白かったです。ストーリーも特になくて、ただただ映像の暴力に酔いしれるだけのとてもシンプルに怖い映画でした。そういえば例の首フック、『Salada Fingers』で見て「気持ちわるっ」と思ったらこっちが元ネタだったんですね。下の動画は本気で閲覧注意です。あ、でもこの感想を面白い面白いって読んできた人なら大丈夫かもね。自分は3のBBQも好きですが4に登場する子が大好きです。こいつも歯を持っていたなそういえば……。

 


Salad Fingers 4: Cage - YouTube