傍線部Aより愛を込めて ~映画の傍線部解釈~

主にひとり映画反省会。人の嫌いなものが好きらしい。

感想「ニッポンの、みせものやさん」

 記録に残さなければ消えてしまう。

 

映画『ニッポンの、みせものやさん』 - 奥谷洋一郎監督

 


映画『ニッポンの、みせものやさん』予告編

 

【あらすじ】

 かつて「見世物小屋」として祭りの縁日に小屋を建てている興行師たちがいた。時代の移り変わりとともに消えていく「彼ら」に密着したドキュメンタリー。

 

【感想】

 興味深い内容でした。

 

 「見世物小屋」というとどうしても「奇形の展覧会」みたいなイメージがあるのですが、そういうのはほぼなくてこの映画は「仮設興行師という人の生き方」みたいなものがメインでした。最後の見世物小屋として活動している大寅興業を10年近く密着取材したものを編集したものでした。

 

 見どころと言えば、やっぱり序盤の見世物小屋を丸太で建てているシーンがかなり印象に残りました。おどろおどろしい小屋だけを見ると2000年代に撮影されたものとは思えないのですが、客の雰囲気は見事に「現代」です。あとこの映画のいいところは見世物小屋の「口上」を記録できたところにあると思います。この口上は多分この映画の中だけでしか聞けないと思うくらい現代にマッチしていません。「見てくださいこの可哀そうな女の子」「親の因果が子に報いというが」というフレーズは今の世の中なら炎上して瞬殺で燃え尽きます。そのくらいドギツいフレーズも満載でした。 

 

 興行師の生活がメインなので、大体の人が想像するようなキツイシーンはありません。さすがに現代にそういうのはありません。ただ、生きたまま蛇を食うシーンはちょっとショッキングかも。でも「昔は口減らしに売られた子が見世物小屋で働いたし、実際に自分たちもそうだった」という話が出てくるあたり、この辺の闇は深いのだと思う。でもその闇を無理に追う必要はないんじゃないのかというのが正直な感想だ。

 

 ただ、ちょっと監督のナレーションが唐突で音響的にも映像に合っていなかったのが残念。そして結論ありきでストーリーを作ってしまっている感じがしたから若干冷めたところもあった。特にラストはちょっとわざとらしい。最後は謎のノスタルジィと人情味に走ってしまったのでもっと淡々と追ってほしかったし、もっと「太夫」と呼ばれる人についてクローズアップしてもらいたかったかもしれない。 

 

 最終的に描いていたのが「古き良きテキ屋さん」になってしまったのはやっぱりタブーに触れるのが怖かったからかな。舞台挨拶等の評判を見るとそんなによくないらしいので、期待して見に行くとちょっと辛いかもしれないです。でも「仮設興行師」という職業についてのドキュメントとして見ると結構楽しめますのでご安心を。

 

 この作品はDVDにはならないそうですし、次の公開は未定だと思いますがまたどこかでひっそり公開するかもしれないですね。