傍線部Aより愛を込めて ~映画の傍線部解釈~

主にひとり映画反省会。人の嫌いなものが好きらしい。

感想「ひきこさん vs こっくりさん」

 悪夢の競演パート2。

 

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【あらすじ】

 女子高に通う沙織の同級生の恵美は、ひどいいじめを受けていた。絶望して自殺を試みた恵美に、謎の女性が一冊のノートを手渡す。そこにはこっくりさんを呼び出し、相手を呪い殺す方法が書いてあった。恵美は復讐のためにこっくりさんを召還、自身に憑依させ同級生を巻き込んでいく。さらにこっくりさんの目的は、沙織の記憶の中にいる「ひきこさん」を呼び起こし、倒して妖怪の天下を取るということだった……。

 

【感想】

 冒頭に、ひきこさんに連れて行かれる男の子の映像が挟まれるのですが、これで割とネタバレになってしまっています。賢明な方なら謎の女性の正体なんて出てきた瞬間わかってしまいます。別に「なんと驚きの真相が!!」という感じでもなかったので良いのですが。


 そして前作「ひきこさんvs口裂け女」でも謎の女の子キャッキャウフフが展開されていたのですが、今作はバージョンアップして女子高のいじめとして描かれています。何故か体操着を着たまま切り刻まれるシーンは「これ何の企画?」と真剣に思いました。この後物陰で見ていた男性教員が「君がそんな体をしているからいけないんだよ」とか登場したり、そういうことはありませんでした。よかった、そういうビデオではなかった。


 そして恵美がこっくりさんを召還してからが本番です。それまでのイチャイチャいじめなどAVの冒頭のインタビューと一緒なのです。この恵美役の子は結構頑張って演技しているのが良いです。それまで友達だと思っていた子たち相手に容赦なく牙をむき、いじめっ子を呪い殺して、そしてひきこさんを呼び起こそうとします。この一連のシーンは一番ホラーテイスト溢れていて好きです。そして監督が女子高生モノを撮りたいっていうのもよくわかった。何気なくローアングルが多くて、やっぱり何かの企画ものっぽいところは多かったです。


 それからこの映画一番の見どころ、ひきこさんの登場シーン。完全に何かの儀式のように死んだいじめっ子を引きずるこっくりさん連合のサークルの中で、沙織が突然嘔吐。そして吐血。さらに目玉や髪の毛を吐き出し、大量の血液の中からぶくぶくとひきこさんが生まれます。まさに「ひきこ、爆誕!」というキャッチが欲しいところ。こっくりさん連合を操る謎の女性が何故か一人でひきこさんに掴みかかりに行き、謎の格闘シーンの末あっさり返り討ち。こういう映画で「退け!」と言って部下を引き連れて逃げる悪の親玉なんて聞いたことがない。


 その後更に戦いはヒートアップして、何故か最終的に「沙織の頭」の中で戦うことに。ひきこさんが今までひきずったコレクションが飾ってある部屋で、あるものを見つけて喜ぶ謎の女性、もといこっくりさん。その後あっけなく「私の家の勝手に入ってきたな!」とひきこさんに見つかりジ・エンド。女子高生集団も前作と同じ展開でやっぱりジ・エンド。今回もひきこさんは強かった!!!


 さて、この作品で恐怖を求めてはいけません。女子高生のいじめシーンとこっくりさん集団の逃走っぷりとひきこさんの身体能力を見る作品です。決して内容とかつじつまとか恐怖とか求めてはいけません。いじめパートの「俺、この戦争が終わったら結婚するんだ……」的な死亡フラグや「頭の中ってなんだ?」とか、深く考えてはいけないのです。ひきこさんとは考えるものではなく、感じるものなのです。ところで次は何と戦うんだろう? 八尺様?


 最後に、どうしても言いたいことがひとつ。いじめをストーリーにからませるなら「ひきこさんはいじめられてひきこもりになった」「ひきこさんはいじめられっこはひきずらない」などのひきこさんいじめられっこ説をやってほしかったな。その辺ツメが甘かったぜ。