傍線部Aより愛を込めて ~映画の傍線部解釈~

主にひとり映画反省会。人の嫌いなものが好きらしい。

感想「ネイチャー」

 迫る映像美。人類最癒初体験。

 

 

【あらすじ】

 命の源「水」をテーマに、地球上の自然を大スケールで描いたドキュメンタリー。3D映像で見たことのない地球を、あなたは体感する。


【感想】

 自然ドキュメンタリーなんであらすじもクソもないんですが、本当に素晴らしい映像でした。3Dならではの表現を大胆かつ巧みにつかい、一生懸命「絵」を見せようという気概が作品から溢れていました。


 序盤の熱帯雨林の木から地上に下降するシーン、火山の火口のシーン、高山地帯を滑空するシーン、そして極めつけは海に入るところの迫力たっぷりの波のシーン。こちらまでグラグラするような気持ちのよい映像がこれでもかこれでもかとちっぽけな人体を押しつぶしにやってきます。特に波のシーンは映画館で3Dグラスかけて一回体験してもらいたいです。お気に入りのシーンはフラミンゴの一斉ダンス。大画面で見るから迫力はもちろん、鮮やかな映像がピンクの集団をきれいにとらえていて大変ロマンチックです。あと、ゴリラの家族は「どうやってそんなに接近したの!?」という大出血サービスです。子ゴリラの愛くるしさでキュンキュンできること間違いなし。


 ただ、何分自然ドキュメンタリーなのでこれといった話がもちろん存在しません。ひたすら自然のド迫力に飲まれて飲まれて90分という作品です。海の中のシーンでは波やサンゴ礁の映像と一緒にアルファー波も大放出される感じで「このまま死海のほとりにでも浮かんでいたい」と本気で思いました。画面の中ではミノカサゴの弱肉強食が展開されているのですが、視界がぐよんぐよん動いてどこか別の世界に連れていかれました。


 動物以外にも見どころはあります。砂漠の砂のサラサラした感覚やビクトリアの滝から落下する感じは地形マニアも満足いくものになっています。とにかく質感がある映像というところが素晴らしいです。子象の乾いた感じや泥水のびしゃびしゃした感覚もダイレクトに表現されていて良いです。殺菌されたものしか見ていない都会っ子にゾウパートをちょっと見せたい。


 残念なところと言えば、自然ドキュメンタリー大好きっ子としてみると、ゲラダヒヒとかオジロヌーVSワニとか多分どこかでみたことある映像だってことです。それにしても3Dで迫力満点なのには変わりありませんが。あと、自然にクローズアップした直後のメイン動物が「グンタイアリ」っていうところも虫ダメな人には刺激たっぷりでキツイかもしれません。あと、全体的にアフリカの映像ばかりですのでロッキー山脈とかサミー人とかそういうのはありません。次作があるならアフリカ以外自然も見たいなあ。


 乾期の後の雨が降るシーンで終わるのですが、「ザ・生命の躍動!」という映像が見事です。雨に濡れたライオンがかわいすぎて映画館の椅子に座りなおしてしまいました。それからエンドロールがアフリカンなミュージックで「森ガール?真の自然を見ておけ!」みたいなアフリカ押し。その後ちょろっとあったメイキングは2Dで、如何にして迫力ある絵を撮影したかが少し紹介されていました。熱帯雨林の下降シーンの壮大さが一番心に残りました。あの撮影はビクトリア滝に並んで絶対怖かったと思う。


 ただ欲を言うと、「メイキングで90分見ても文句ないよ」というところです。滝川クリステルの声は淡々としていて邪魔にはならなかったと思うので、「とにかく癒されたい」「自然に興味がある」という人は行って損はしません。都会の真ん中で自然浴をした気分になれますよ。