傍線部Aより愛を込めて ~映画の傍線部解釈~

主にひとり映画反省会。人の嫌いなものが好きらしい。

感想「ムカデ人間」

 発想からして既に最低。

 ※内容が最低すぎるのでジャケットでひるんだ方、閲覧は自己責任でお願いします。 

 

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【あらすじ】

 森の中で車がパンクしたアメリカ人女性二人が助けを求めた一軒家には、シャム双生児の分離手術で名高いハイタ—博士が住んでいた。博士はよくわからない幻想に取りつかれ、人間の肛門と口をつなげた「ムカデ人間」を作ることを目的としていた。捕まってしまったアメリカ人女性2人と日本人男性を使って、悪魔のような人体実験が始まる。

 

 【感想】

 どうしてこうなった。

 まず発想が最低。最低にも程がある。一体何を食べて生活していればこんな発想が思いつくのかわからない。なんてこった、アメージング。

 とにかく物語に沿っていきましょう。まず森の中で立ち往生するアメリカ人女性リンジーとジェニー。「森の中で車が故障する」はホラー映画三大死亡フラグです。あとふたつは知らないけど。しかも「旅の途中」の「アメリカ人女性」で「ちょっと頭悪いアピールが激しい」と、死にたいとしか思えないシチュエーションです。

 そして迷い込む博士の家。執拗に水を勧めてくるあたりでもうキてます。一度逃れそうになりますが結局捕まり、拘束台の上へ。若い女性が二人入ったので既に捕まえたトラック運ちゃんのオッサンは「(体格的に)君は適合しないね♪」と言ってあっさり安楽死。代わりにどこからかルンルンと日本人男性をさらってくるのですが、彼がどうやって捕まったのかは謎です。しかもこの日本人男性カツロ—くん、完全に大阪弁でヤクザの口ぶりです。一体何があって彼はこの国へやって来たのでしょうか。まるで謎です。

 やっと博士が途方もない計画の全容を説明。まずは三人の膝の靭帯を切って立てないようにする。そして人体Aの肛門と人体Bの口を縫合、人体Bと人体Cの口を縫合、よって人体Aの口から入った食物は最終的に人体Cの肛門から排出されるという、身体の繋がったムカデ人間の出来上がりというわけだ。この博士、シャム双生児の分離手術の権威だったらしいけど、何をどう考えたらこうなるんだろう。人間って恐ろしい。そこでリンジーは一度脱走を試みるも捕まってしまい、一番過酷な真ん中になってしまうことに。この辺は少し追いかけられるホラー的なところがありました。

 しかし博士が「シャム双生児分離手術の権威」とか説明しているところで「ソーセージでも食ってろボケ!」と絶妙なタイミングで怒鳴るカツロー君。彼は「このドイツ人が!」という意味だったのでしょうが、絶妙です。このシーン愛してる。

 そして博士の念願のムカデ人間の完成!ババーン! というところですがビジュアル的にはイマイチ地味。一応大事な部分は隠れているので人間が跪いているだけですからね。博士はムカデ人間に芸を教えようとしますが、もちろんうまくいくはずもなく、三人はただ泣き崩れ、先頭のカツローは罵声を浴びせるのみである。ここで面白いのが、カツローがひたすら日本語で恫喝しているところ。彼は英語は話せないのだ。博士はドイツ語と英語を使い、アメリカ人女性は英語のみを用いていた。アメリカ人女性は口をふさがれているので言葉を発することができず、円滑なコミュニケーションが断絶した状態でこの変な世界は成り立っている。この辺はひたすら「人間が極限まで貶められる」状態を作っていると思う。バカにしていたけど、哲学的にみると面白いかも。でも本当に汚い。しかし、博士「声帯も切っておけばよかった」ってさあ……確実に面倒くさい器官を残しておくとか、本当にツメが甘い人物だ。

 やがて最後尾のジェニーが衰弱していく。そりゃ一度食べて出したものを食べたものしか食ってないんだから、栄養が廻らないのも当然である。その辺博士は「ジェニーは弱ってきたから違うのをくっつけよう」と言って行方不明者の捜索にやってきたおまわりさんにも水を飲ませようとする。当然怪しいので捜査令状を取りに行くおまわりさん。その隙に意地でも逃げ出そうとするムカデ人間たち。カツロ—が頑張ってメスで博士の足を刺し、首の皮をかみちぎるというガッツで監禁されている地下室から途方もない階段を上っていくわけです。連結部分がちぎれそうで本当に痛そうですが、まあ仕方がない。

 最終的に博士が追いつくんだけど、何を思ったかカツローが「神様、俺は親も子も捨てて生きてきました。でもね、これが人間なんですか?これが天罰だとしても、俺は人間であると信じたいです」というようないきなり唐突に意味のある言葉をしゃべり、「ねえちゃんたち、おっさん、奇妙な世界やなぁ」とガラスの破片で自害。博士びっくり。礼状持った警官も来てびっくり。警官博士を追い詰めるけど、相打ちでみんな死亡。弱っていたジェニーも死亡。先頭と末尾が死に、話せないし動くことのできないリンジーは果たしてどうなるのだろうか? というところでオシマイ。

 さて、こんなドぎつい内容ですが見る価値はないかというと、そうでもなくどちらかというと面白い。中身がスッカスカのお涙頂戴より何百倍もいいです。意外と精神的にキツイのですが見た目のグログロ度が低いのも見やすいところではありますし、テーマは「人間の尊厳」とか、そういう哲学的な面も前面に出されていて深いと言えば深いし、博士の異常者具合も針が振り切れていて素晴らしいです。個人的趣向で言うと「俺は変態だ」と開き直るのはそんなに好きじゃないので、何か謎の存在しない使命感らしいものに支配されていてほしかったです。

 で、これ「2」もあるんですよね。「2」は連結が12人らしいです。ついでに三部作になる予定らしいです。どうすんだよこんなクソみたいな設定で。評判では「無印」以上にエグいらしいのでオラ今からワクワクしてきたぞ。