感想「東京物語」
クリアアサヒが♪家で冷えてる♪心ズキズキワクワク♪
【あらすじ】
広島の尾道から東京の子供たちを訪ねてきた平岡老夫妻。最初は快く迎え入れるものの、内科を営む長男一家や美容院を営む長女夫妻は次第に邪魔者扱いをする。一方戦死した二男の嫁の紀子だけは二人によく接する。熱海へ足を運び、旧友と会うなどして広島へ帰るとき、「楽しかった。子供らの顔もたくさん見れたし、もしものことがあっても大丈夫」と言い残す。言葉通り帰りの汽車で妻とみの具合が悪くなり、広島に着くとすぐ危篤に陥る。子供らはそれぞれ母の元へ駆けつける。
【感想】
小津作品は「生まれてはみたけれど」を見た記憶がある。その感想は「日常の小さな『あるある』を的確に見つけて大きくしていくのがうまい人だな」というものでした。自分の親に対して持っている感情と親も一人の人間なんだと思ってしまった寂しさと、そういうのは誰だって少しは抱くような『あるある』である。この「東京物語」も、その『あるある』が増幅されて引っ掛かる何かをまるで観客の心の中で育て上げさせるような魅力があった。
まず、最初の長男一家の子供らが人見知りをするシーンでやられました。「あーこのくらいの子供なら仕方ない、あるある!」としか言いようのないシーン。更にデパートにいけなくなった息子の「やだい!」という言葉も「あるある」です。でも、誰一人悪気もないしもちろん悪くない。娘夫婦の忙しさもわからないでもないし、それぞれ気を使う人々が本当に誰も悪くないのに、非常に居心地が悪い。
結局主題としては「遠くの親戚より近くの他人」ということなのだろうけど、結構映画評を見ていると「実の子供は冷たかった。義理の娘の方が親切だった」みたいな書き方しているのが結構あって短絡的と言うか、そこで実の子供らを断罪しては小津の書きたかったものに近づかないのではと思った。自分はこの映画で一番生々しかったのは長女で、実の親だからこそ逆に雑に扱えるのではないかと思った。義理の娘は親切なのではなく、そういう適度な距離を保っていられるポジションにいたからそうしただけで、別に特別いい人と言うわけでもないと思う。だから自分としては「遠くの親戚より」というより「血は水よりも濃い」という言葉の方がしっくりきた。人間距離が近すぎても、うまいこと付き合いができないということだろう。
とにかくカットがきれいで連続した絵画を見ているような気分になりました。熱海で海を見ている二人の絵が好きです。「動」の部分で見ると退屈ですが、「静」の部分に注目してみるのが、この映画の正しい見方だと思いました。冒頭の尾道の風景とラストの尾道の風景はほとんど同じ構図なのに、全く違う印象を与えるつくりがニクイです。ただ、今の人が見るとちょっと(かなり)退屈かもしれません。オトナになりたい人が見る映画だと思いました。