傍線部Aより愛を込めて ~映画の傍線部解釈~

主にひとり映画反省会。人の嫌いなものが好きらしい。

感想「変態村」

 変態だー!!

 

変態村 [DVD]

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 【あらすじ】

 売れない歌手のマルクは老人ホームの慰問の後、次の訪問先に向かう途中の山道でバンがエンストしてしまう。大雨の中近くの村はずれに住むバルテルが助けてくれ、バンを修理すると申し出る。「村へ近づいてはいけない」というバルテルの忠告はあったが、マルクが村を覗くと家畜で自らを慰めている男たちの姿があり、逃げ帰るがバンは直っていない。彼はコメディアンであった過去からマルクの境遇に同情するが、不貞を働いて逃げたらしい元妻のグロリアとマルクを次第にダブらせていく。

 

 【感想】

 変態だー!!


 すみませんこれが言いたかっただけですすみません。それだけで見ようと思った動機が軽すぎてこの変態どもの前に吹っ飛びましたごめんなさい。

 映像は大味なアメリカナイズでもなくヨーロピアンテイストで進んでいきます。序盤のヤマはなんと言ってもプギープギー鳴いてるブタさん相手に「よし、ハメろ」という村人たちの構図。ここで「俺はなんていう映画をセレクトしてしまったんだ!」とエレクトできなかったら即座にDVDをデッキから引っこ抜いた方がいいですね。

 バルテルが本性を見せてからの心のエレクトはどうにもならなかったです。変なレイプシーンより髪の毛を虎刈にしてしまうところが残虐でいいですね。ああいう精神支配的なシーンはたまりません。何よりバルテルが完全にスイッチ入っているのがいい感じです。すみませんこっちも変なスイッチ入りました。

 そして女装レイプに罠に引っ掛かり一晩屋外で過ごすマルクさんパないです。犬を探す変な人も変な感じでいいです。連れ戻されて磔にされちゃって、もう好き放題のやり放題です。人間の常識的なコミュニケーションが通じないまるで「世にも奇妙な物語」的なところがダークでぶるぶる来ます。端的に言うと「気持ち悪いのが癖になる」です。変態です。

 そしてこの映画の山場「村人の気持ち悪いダンスシーン」。何をどうしたらああなるのかよくわからないくらい意味が分からない気持ち悪いシーン。清々しいまでの気持ち悪さに思わず声を出して笑ってしまいました。もうこの映画に撮って「不快になる」「気持ち悪い」は褒め言葉です。

 そしてクリスマスの夜、すっかり服従させられたマルクとご満悦のバルテルの元にあの変な人が「僕の犬がいた!」と子牛を連れてくる爆笑展開。そして楽しいクリスマスの夜♪ というまたしても「気持ち悪い」展開。さらに村人がこぞって「不貞を働いた元妻グロリア」として哀れなマルクを取り囲み、またしても「よし、ハメろ!」というどうしようもない展開。誰も彼が男だと言うことを気にせず、時間が経った演出なのか寸止めで終わったのかよくわからない演出の後、なんとか変態どもから逃げ出すマルク。ここからの展開はある意味精神世界なので深く考えてはいけないゾーン。途中で磔の死体を見つけるけど、あれははたして本物のグロリアだったのかマルクの本当の姿だったのか、それは象徴でしかない。

 最終的に底なし沼に沈む村人を助けることもなく、「グロリア、愛していると言ってくれ」という頼みに応じマルクは「愛しているよ」と告げる。そして流れるエンドクレジット。「いやー気持ち悪かった」と原題などを調べると「Calvaire」で、マルクを神としている村人に対するマルクの受難を示しているとかなんとか、日本人には難しいことが並んでいました。しかし受難を言い訳にやりたい放題やったものです。これにはキリストも苦笑い。

 とか思っていたら流しっぱなしだったクレジットの最後で「ギャーッ!」と急に悲鳴が入っておしまい。最後にビックリオチをかましてくるあたり、やっぱりこれは「人を不快にさせるための映画」みたいです。イヤーな気分になりたい人には、強くお勧めです。