傍線部Aより愛を込めて ~映画の傍線部解釈~

主にひとり映画反省会。人の嫌いなものが好きらしい。

感想「ヴィレッジ」

 犬鳴村的なこの先日本国憲法は無効ですみたいな奴の中の話。

 

ヴィレッジ [DVD]

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【あらすじ】

 閉ざされた森の中の村。廻りを取り囲む森は禁断の森で、恐ろしい怪物が住んでいる。ある日一人の男の子が病死した。街へ行って薬をもらって来れば助かったかもしれない。ところがそれでも村の者は頑なに森を出ようとしない。村に隠された恐ろしい秘密とは何なのか?

 

 【感想(ネタバレ)】

 映画館の予告か何かで「うわぁ面白そう」と思ったけど、「ガッカリオチだよ」という情報もあり、放置していたけど意を決して鑑賞。


 普通に面白かったです。確かにオチは弱いしホラーもホラーになりきれていないけど、閉鎖的な村の感じや色彩豊かな画面には魅了された。絵を見ているだけでも面白い映画だと思う。人物描写が薄いので絵だけ見る「雰囲気映画」としては結構レベルが高いと思いました。洋風八つ墓村的なものとしてみるといいかも。

 最初に男の子の葬式のシーンから始まる。そしておそらくキーパーソンと思われる人物、ノアが騒ぎ出す。「葬式の席で何やってんだ!」ということから頭が残念な人らしい。そのあと結婚がどうのこうの、村の見張りがどうのこうのというシーンが続く。このあたりで「なんて閉鎖的な村なんだ」という印象。そして最初に抱いた疑問が「これはいつの時代の話なんだ?」ということ。実はボケっとしていて葬式シーンの「1890~1897」という文字を見落としていたので「閉鎖的な村=周囲との隔絶=これ実は現代の宗教施設」という第一の予想がここで発生。以下「この村はアーミッシュの村なのでは」という疑問を持ち続け本編に突入。予想外の結末ということで「実は現代でしたwwwピッピロピwww」という結末だろうなと。

 根拠として過去の描写の割にはこぎれいな小道具たち。もしこれで本当に過去だとしたらただのハリボテ映画になってしまう。ハリボテならきちんとハリボテらしく描こうとするのが映画だと思っている。

 その後一応の主人公のルシウスとアイヴィーのキャラクター紹介。ルシウスは村に疑問を持つ青年。アイヴィーは盲目の少女。そんで同じくらいの年のノアは頭が残念な青年。アイヴィーの姉がルシウスに結婚を申し込むけど、フラれる。姉も現代で言う「ゆるふわ愛されガール」を狙っているような口ぶりだったのできっとこういうのはどこにでも沸くということなんだろうか。

 閉鎖的な村の様子が淡々と続き、動物が殺されたりとミステリアスな場面もあるけれどもちょっと気が抜けたところで緊迫の怪物登場シーン。これは結構怖い。暗闇で何かに追いかけられるというのは人間の本能レベルで怖いものなのかもしれない。ところが一瞬映った怪物が「やたらとこぎれい」で「あれ?」と思う。「化け物は人為的なものに間違いはないだろうけど、何故わざわざこんな手の込んだことを?」という新たな疑問が浮上。

 気が付けばいつの間にかルシウスとアイヴィーラブロマンスに突入。姉はさっさと違う男に乗り換えて村を挙げての盛大な結婚式を行っていた。なんというy(不適切な言動により省略)それからまた怪物騒動。何かと外に出たがっていたルシウスだけれども、アイヴィーと身を固めることにより村で生きて行こうと決心。姉をフったのもアイヴィーが好きだったからなのね。

 ところが頭が残念君のノアが「アイヴィーはぼくのものだ!」とルシウスを刺しちゃった。残念過ぎです。外の世界なら「責任能力の欠落によりナントカ」という奴です。こんな奴野ばなしにしちゃダメだよ……。

 瀕死の重傷のルシウス。このままでは助からないらしい。「街に行けば薬があるわ!」「でも禁断の森を通ってはいけないし」ここでも村の長老たちは「村の外に出ること」を執拗に嫌がる。なじょしてそっだら嫌がる?

 この時点で既に「禁断の森へ入ること」がタブーなのではなく「村を出ること」がタブーであると多くの人は気づく。やっぱりアーミッシュなのか?

 おっとここでネタばらし。この村は「かつて犯罪被害にあった者たちがこれ以上の悲しみを背負いこまないように、外界と隔たった環境で暮らしている村」であることが判明。つまりあれだけ騒いでいた怪物は全て仕込みだったというわけ。「二度と犯罪被害で苦しむものを見たくない(一応傷害事件だし)」「アイヴィーなら目も見えないし、いいんじゃね?」という合理的な理由によりアイヴィーは村を出て薬をもらいに行くことになる。

「待って、この森に怪物がいないことがわかったのにどうしてこれから森を抜けるシーンに突入するの?ネタバレしてちゃつまんないじゃん」

 実はここでアイヴィーの付き添いの男たちが逃げ出すシーンが一番怖いんじゃないかと思う。実体のないものをあるように信じ込まされて、まるで存在しないものにおびえている人間の姿を描いて見せたところはすさまじい。一番の見どころはここだと思っている。

 と思っていたら怪物やって来たよ! 本当はいるのかよ!
 どうせこれも仕込みだろうなーと思ったけど、動きがやたら怪しい。「閉じ込めておいたノアが怪物の衣装と一緒に脱走した」というカットが挿入。ダメじゃん。

 怪物(ノア)をぶっ倒してたどり着いたのはどう見てもアメリカンな一本道。巡回中の車に不審がられるアイヴィー。なんと村は国立公園の保護区域の中に存在していたことが判明。ここまでは予想していなかったけどそれが余計宗教じみていてある意味狂気を感じるよ怖いよママン。無事に薬を手に入れて、ルシアスは助かるようですよよかったよかった、でおしまい。一応「ノアが怪物に殺された。禁断の森に入ってはいけない」がより強化されましたとさ、というがっちりしたオチもついてくる。

 アーミッシュよりも数段イっちゃった宗教団体だったというオチがあったけど、まぁまぁ楽しかった。シックスセンスもどっちかというとガチっとしたストーリーというより途中までは少年とこわいよーこわいよーする雰囲気映画だと思っているので。

 ここまで読んで「よし見よう!」と思う人は少ないと思うけど、それでも色彩がきれいなので是非見てもらいたいな。