傍線部Aより愛を込めて ~映画の傍線部解釈~

主にひとり映画反省会。人の嫌いなものが好きらしい。

感想「誰も知らない」

 誰も知らないから、知られないで生きるしかなかった。

 

誰も知らない

誰も知らない

 

 【あらすじ】

 実際に起きた「巣鴨子供置き去り事件」を元に作られた映画。戸籍のない子供たちを4人育てている母親は、子供たちを置いて新しい恋人の元へ行ってしまう。生活費もなくなり、追い詰められた子供たちは誰も守ってくれない状況で生き抜く。

 

【感想】

 重いものを「重い」と表現しちゃいけないっていうのが割と信条。だから「重いテーマだぜ」とアピールしている奴は本当に重くないと思っている。もちろんこの話は実話をもとにした作品で実際の事件はもっとこの話より悲惨ということも聞いている。ただただ哀しい、そういう映画もあっていいと思う。


 表現にだけ言っても、とにかくキレイな画面という一言に尽きる。絶妙な太陽光の差し込み方、次第に汚くなっていく部屋。そして最後の夜明けのシーン。あの乱雑とした部屋にも彼らなりの秩序が存在して「確かにここで生きているんだ」という意地が見られた。子役の演技に感動というところもあった。確かに彼らの年齢で「やれ」と言われてできることではないと思う。そこをうまく引き出した演出や監督の技量が素晴らしい。


 子供って、意外と残酷な生き物なんですよ。ハチ公みたいに我慢強く待ち続けているつもりでその歪みがどっかしらに爆発しているもので、それが小さな事件として起こっていく。子供同士の部分だと、個人的に「どん兵衛」でケンカするシーンが好きです。これは子供でなくても、大体の人は経験することなんじゃないかな。

 そして何より忘れちゃいけないのが母親の存在。「この映画を見た後しばらくYOUが嫌いになった」という話も聞くくらいYOUがはまり過ぎていてうすら寒いものを感じた。あのくらいの距離で、自分はいいママを演じているけど非常に無責任。ああいう人は実際にいる。それは間違いない。事実をフィクションにしたけど、隠せない事実がはみ出ているような感覚。

 子供遺棄と言えば大阪の二児置き去り事件を元にした「子宮に沈める日」という映画が公開されたらしい。できれば見に行きたいけど、ちょっと無理そう。DVDあたりになってから見たいなぁ。