傍線部Aより愛を込めて ~映画の傍線部解釈~

主にひとり映画反省会。人の嫌いなものが好きらしい。

感想「映画ドラえもん のび太の宝島」

星野源出せばいいと思いやがって。

 

 

【あらすじ】

宝島はあると言い、みんなに笑われるのび太ドラえもんに頼んで出してもらったひみつ道具「宝探し地図」で宝島を探すと、太平洋上に出来た新しい島に宝物があるらしい。ドラえもんのび太は早速宝島へ向かう。

 

【感想】

※この感想を書いている人は原作旧ドラ原理主義ということを踏まえて読んでください。

 

新ドラが苦手だとわかっていても気になるドラえもんの映画。月面探査は見てきて気になったところはいくつかあったけどそれなりにドラえもんの映画やってる感はあったので特に心がざわめくことはなかった。ただ原作でも好きな地底人の話を魔改造されたのがちょっと辛いくらいか。この勢いで「ハロー火星人」も映画化されたらまた泣く。


だから「宝島」も油断してしまった。「それなりに見れる奴だろうなぁ」と。アカンかった。どうしてくれるんだ。


最大のダメなところは見終えた後に「そう言えばタイトルなんだっけ」となってしまったところ。タイトルの回収がこんなに出来ていない映画も珍しい。


「宝島」と言えば少年が海賊の残した宝の地図を手に入れて冒険に出かけるロマン溢れる小説で、ドラえもんでも原作に宝島をモチーフにしたものはいくつかあるし、過去に「南海大冒険」という映画もある。その中で「宝島」を選んだのだからこれは立派な海賊やお宝が出てくるのだろうなと思うわけじゃん。わけじゃん。


宝の地図も海賊も宝もメインじゃないとはどういうことだ。何が「かけがえのない宝物は地球だ家族だ」だよ。言うなよ言わせんなよ恥ずかしい。

 

それで「宝島」のモチーフは本当にモチーフでしかなくて、映画の本題には一切出てこない。何それ、子供舐めてるでしょ。「それっぽい映画だからいいでしょ星野源だしー」じゃないよ。星野源だけでしょ。


いろんなレビューにもあったけど、「家族の確執を描きたくて冒頭ののび太の家族のやりとりを入れたんだろうけど、それが不十分すぎて何が言いたいのかわからない」っていうのは本当に致命的だと思う。具体的には「夏休みの宿題をやってからどこかに行きなさい」というママに「パパならこの気持ちわかるでしょ」とのび太が甘えると「宿題はやったほうがいい」と答えたパパにのび太が逆ギレっていう展開。これは旧作ファンなら「海底鬼岩城だワクワク」となるところで、鬼岩城だとその後のび太は皆の協力もあって必死に宿題を片付けてから海底キャンプに出かけるんだけど、今作でそれはない。ただのび太が不貞腐れただけで終わり、この段階でこの問題を解決するどころか問題が置き去りになっている。この時点で映画としての信用がなくなる。


その後、まぁいろいろ楽しいシーンは出てくるんだけど楽しいのはシーン単発で物語としてはのび太の宝島問題と全く離れたところに向かっていく。それで一応海賊は出てくるんだけど、彼らは何故海賊しているのかとかそういうのは全く問題にならないで、急に地球のエネルギーがどうとかそういう話になる。しずかちゃんのそっくりさんに至ってはもうこじつけレベル。コジツケールを使用したのかな。


「よし南の島で海賊とドラえもんたちが戦って……」
「ちょっと待て。最近のチルドレンは海賊と言えば手足が伸びるとか喋るトナカイとか思ってるんじゃないか」
「それか呪いの金貨で不死身の存在になったと思っているか」
「これでは『宝島』の話を理解してもらうのにまず宝島の説明をしなくてはいけないではないか」
「いっそ時空海賊とかにして略奪シーンなどはない方向で」
「いいね!」
「あと親子連れが来るから親子系の感動は入れて」
「いいね!」
「剣の戦いはお母さんたちに不評になりそうだからパソコンバトルみたいなのは斬新でいいかも」
「いいね!」
「最後にのび太が自分で頑張ったみたいなのが入ればなんか感動するでしょ!」
「いいね!」


みたいな会議があったのかどうかはわかりませんが、大体こんな感じです。なんかね、全ての要素が悪いわけじゃないのにちぐはぐでまとまりがないんですよ。後半の親子喧嘩のシーンは飽きてつまんなかったです、本当に。


そしてこれもいろんなレビューにあったんだけど、「それをドラえもんでやる意味はあるのか」一点に尽きるわけですよね。親子の感動系なのはわかった。だけど、だけど。それってドラえもんでやる意味あるの? 今回の戦いでドラえもんあんまり関わってないじゃん。それにのび太の冒頭の謎のパパdisがこのためにあるってわかった途端「うまい伏線」じゃなくて「無理やりなエピソードの挿入」にしか見えない。


客層を意識してるのかどうかわかんないけど、ゴリ押しの親子感動系、しかも後半台詞だけで何とかするって、もうあんまりだよ。亡くなった奥さんもどこかで聞いたことある台詞だし、父子バトルも取ってつけたような感じだし、何よりこの親子喧嘩自体が映画のテーマなんだろうけど、まるで親子に感情移入できなくて(それは冒頭のシーンで滑ったせいなのが大半だと思う)ラストが本当にしれーっとしてしまった。海底鬼岩城ののび太はなぁ、一応夏休みの宿題全部終わらせてから冒険に出かけたんだぞ……。


とにかく、シーンひとつひとつはそんなに悪くないのに全体がガタガタで映画としてはうーんという感じ。ドラえもんでやりたいことは何ですか、というのをもう一度問直したい。NOT FOR ME ってことですかね。ドラえもんの映画は子供がドキドキワクワクするもんであって、親が涙するもんじゃないと思うんだよ……ドラえもんの世界はやっぱりドラえもんで完結してほしいんだよ……ううん……おわりぃ……。