傍線部Aより愛を込めて ~映画の傍線部解釈~

主にひとり映画反省会。人の嫌いなものが好きらしい。

感想「八十日間世界一周」

 気球に乗ってどこまでも

 

 

【あらすじ】

 資産家のフォッグは80日で世界を一周できるという賭けをして、執事のパスパルトゥを伴って世界をめぐる旅を行う。

 

 【感想】

 お正月あたりにBSでやってたのを見ました。「音楽が有名だよね」くらいのイメージだったのですが、やっぱり受け継がれる古典だけあって面白いです。気球で出発のインパクトは大きく、音楽も相まって「素敵な絵だなぁ」と感心しました。

 

 スペインで闘牛をしたりインドへ向かい、サティ(未亡人を夫と一緒に焼くやつ)の儀式に合いそうになっている女性を助けたり香港でフォッグとパスパルトゥがはぐれたりなどして旅の様子は賑やかに描かれます。スペインやインドの街並みとかセットなんだろうけど、なかなか作りこまれていて見どころたっぷりです。

 

 そして横浜に到着するのですが、この「日本」の感じがいかにも「当時の人の考えている日本」って感じですごく面白かったです。どう見ても中国の市場のような商店に、鎌倉にいるかと思ったらどうみても京都にいるっぽい一行とか、パスパルトゥが働いていたサーカスは入場口が花道だったり団員がどう見ても中国雑技団だとか突っ込みどころがたくさんあるのが面白かったです。もしかしたらインドとか香港とかもそんな感じに結構雑なのかもしれない。ちょっと「ブレードランナー」の世界が頭をよぎったりもしました。

 

 あと、このあたりで休憩が挟まったのにびっくりしました。よく見たら3時間超えの映画なんですね。各国のエピソードが単発でポンポンリズミカルに来るので時間の感覚がどこかへ行ってしまっていました。

 

 それから無事にアメリカ大陸に渡って大陸横断鉄道に乗りますが、これもまた大変。バイソンや羊の群れをやりすごしたり、途中にいる先住民に挨拶したりとなかなか列車は進まず、最終的に先住民族に列車が襲われパスパルトゥが連れて行かれてしまいます。ここで実はパスパルトゥは執事というよりヒロイン的な存在なのではないだろうかと思ってしまいました。

 

 なんとか商船を買収してイギリスにたどり着いた一行でしたが、フォッグをずっと銀行強盗と勘違いしたフィックス刑事によって逮捕されてしまいます。すぐに誤解は解けましたが、おかげで約束の時間に間に合いそうにない。賭けに失敗してしまったと気を落とすフォッグだけれど、ひょんなことで「間に合う」ということに気が付きます。

 

 ここから「時間に間に合わせなきゃ!」と焦るフォッグとパスパルトゥのコンビが面白おかしくていいです。間に合うか間に合わないかというときに変なおばちゃんにつかまったフォッグがなかなかよかったです。「急いでいるんだ!」と手を振り払うこともできただろうに、ちゃんと寄付をして話も一応聞いてあげてたあたり彼は本当に紳士なんだなぁと思いました。

 

 彼が間に合ってめでたしめでたし、と思ったら何ともかっこよいEDが始まりました。オサレなアニメーションで各国の思い出を振り返るキャスト紹介はとてもよかったです。音楽よし、物語よし、映像よしです。ただ長いことくらいが現代ではネックかもしれませんが、割とあっという間に時間が過ぎていきます。80日間が3時間で味わえてしまうんですから、これはお得ですよ奥さん。