傍線部Aより愛を込めて ~映画の傍線部解釈~

主にひとり映画反省会。人の嫌いなものが好きらしい。

感想「暴走機関車」

 機関車が暴走したら、大体面白い。

 

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【あらすじ】

 刑務所から脱獄したベテラン犯罪者とチンピラ。逃走するために乗り合わせた機関車の運転手は心臓発作で機関車から落下して死亡。制御を失った機関車に乗り合わせた二人の運命は如何に。

 

 【感想】

 暴走特急セガール無双な感じのお話なのですが、こっちの映画は割と真面目に暴走機関車をどうにかしようと言う話です。突発的な事故により機関士が不在の列車に乗り合わせた脱獄犯たちと運悪く乗り合わせた女性職員の「何とかしよう」という感じにハラハラする感じです。

 

 この映画の素敵なところは、まずテンポが非常によいことです。序盤の脱獄シーンは非常にあっさりと進み「こんなに都合よく脱獄できていいの?」と少し不安になりますが、実際お話はそれからが本番なのでそこまでをダラダラやらないというのは好感度が高いです。それから舞台がアラスカなのですが、とにかく「寒そう!」というカットの連続もなかなか良いです。夏に見たい映画です。

 

 そしてこの映画の見どころは、極悪非道であるはずの脱獄犯たちの方を応援したくなるほど非道で無能な刑務所長の存在です。私怨全開で捜査をし、機関車の暴走でそれどころではない交通局の職員すら蹂躙するこの所長の存在がこの映画の一番面白いところです。クライマックスで私怨にかられすぎて謎の行動に出る所長に対して「お前、そんなことやってる場合じゃないだろう……」とツッコまずにはいられないです。

 

 最後に、この映画はもともと黒澤明が企画していたものだそうで、クロサワがやっていればもっと迫力ある映像になったのに……という感想が多いです。そうかもしれないのですが、これはこれで変な映画たちに比べたら結構完成度高いと思うので、夏の暑い日に適度にハラハラしながら見るにはちょうどいいんじゃないかと思います。でもクロサワビジョンで観たかった、というのは何だかわかるなぁ。