傍線部Aより愛を込めて ~映画の傍線部解釈~

主にひとり映画反省会。人の嫌いなものが好きらしい。

感想「蛾人間モスマン」

 もうタイトルだけでめっちゃ面白いんですが。

 

蛾人間モスマン [DVD]

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【あらすじ】

 卒業記念キャンプで誤って仲間を死なせてしまったキャサリンたち。不幸な事故に偽装することにしたが、自責の念にかられてキャサリンだけは街を飛び出してしまう。それから10年後、新聞記者になったキャサリンは地元の「モスマンフェスティバル」を取材しろという命を受け、仕方なくポイント・プレザントの街へ戻ってくる。

 

【感想】

 これをハロウィン企画として放映する安定の午後ロークオリティもなかなかですが、この手の映画が大好きな人にはたまらない映画でした。モスマンはUMA界隈ではメジャーなポイント・プレザントで目撃されたフライング・ヒューマノイドのような赤い瞳に黒い影がチャーミングな奴です。そんな予備知識がなくてもこの映画はオモシロイです。容姿などはwikipediaを参考にしてください。

 

 もう冒頭からしておかしい。学生とは言っても見た目が成人になった人たちが川で遊んでいるうちにほぼいじめ状態になって溺死させてしまうのも頭悪いし、何より「飛び込んで石で頭を打ったことにしよう」とその場にいる全員が死体の頭に石をぶつけているのも意味が分からない。

 

 普通に目を放した隙に溺れていた、ではダメなのかね……?

 

 そんな頭も胸糞も悪いOPから一転、主人公のキャサリンが上司と仕事の相談をしているシーン。全体的にアホい会話をしているのだが、急に飛び出してきたパワーワードにどうでもよくなってしまった。

 

 なんだよ「モスマンフェスティバル」って。

 

 以降この「モスマンフェスティバル」が出てくるたびに笑いが込み上げ、おそらく真面目なシーンなんだろうけど「モスマンフェスティバル」という言葉があるだけで一気にコメディになるという最高な映画になりました。この辺の面白さは日本語に例えると何になるかなぁ。「つちのこ祭り」だとちょっと違う。「八尺様祭り」とか「大規模ひとりかくれんぼオフ会」あたりだろうか。映画の内容? 最初から期待してないよ。

 

 とにかく嫌々戻ってきたキャサリン。昔の仲間に会うもやはりよそよそしいけど、昔からキャサリンにホの字だったデレクだけは馴れ馴れしい。モスマンフェスティバル(笑)に連れだって行くけれど、モスマンをかたどった怪しげな看板を筆頭にモスマンをかたどった怪しげな飾りが乱舞する会場。もはや狂気です。そこで出会った盲目の老人が「モスマンに近づいちゃなんねえ!」みたいな雰囲気をバンバン出します。この老人、後の重要人物のフランクです。

 

 そしてキャサリンがポイント・プレザントに帰ってきた直後から仲間が一人、また一人とモスマンにやられていきます。しかしモスマンの姿はなく、鏡面状のところから出てくる貞子方式で攻撃してきます。橋の上をバッサバサ飛び回らないのか……?

 

 そしてフランクを通じてわかってくる驚愕(?)の真実。モスマンとは過去にこの地で拷問の末無念の死を遂げた原住民が悪霊となったものだそうだ。そいつは罪のない人を殺すことを憎んでおり、人殺しをしても罪を償っていない者を殺して回るそうだ。しかし移動範囲はポイント・プレザントのみに限られていて、今回キャサリンが帰郷するまで前回の呪いは発動することがなかったそうだ。「モスマンフェスティバル(笑)」はそんなモスマンの魂を慰めるために行われているそうだ。

 

 そしてフランクも過去に飲酒運転で子供をひき殺しており、モスマンの呪いを受けたことがあったそうだ。モスマンは鏡張りの棺に封印されたので鏡面状のものからしか登場しないし、目を合わさないと攻撃してこないので彼は自分で眼を抉ったのだそうだ。

 

 とにかく鏡のある場所はダメなんだ、とわかったキャサリンとデレク。そう言えば今仲間の一人が美容室をやっているんだった! 危ない! といきなりデレクが美容室に殴りこんでその場の鏡を全部叩き割ってしまう。「なにすんのよ! この鏡高いのよ!」と怒る彼女に「信じてもらえないかもしれないけど君の命がかかってるんだ!」と力説するデレク。

 

 鏡割らなくても、鏡のない場所に連れて行けばよかったんじゃないかなぁ……?

 

 結局デレクの頭が悪いことが原因で彼女はモスマンにやられてしまいました。状況変わらず狙われるキャサリンとデレク、あと生き残ったもう一人にフランクはなんか力のありそうな骨のナイフを渡して「これで傷をつけて心臓に近い部分の血をモスマンの眠る場所に捧げるとモスマンは封印される」とのことだ。

 

 それでモスマンの襲撃を何とか交わしつつ封印の儀式を決行するが、逆にモスマンが実体化して襲ってきました。これまでは「鏡面状のものからしか出てこない」という制約がありましたが、血を捧げたことで何らかの力に目覚めたようです。命からがら逃げてきたキャサリンとデレクがフランクに詰め寄るとフランクは悪びれもせず「試したものはいないからわからなかった」と。

 

 この映画のこの適当な展開、好きよ。

 

 それからフランクは急にこの町の町長に向けた悪意を爆発させ、モスマンフェスティバル(笑)で盛り上がる会場へ行って町長の演説を遮り、「これからモスマンがこの町を滅ぼすのだ!」とか言い始める。どうやら前回モスマンが降臨したのにもこの町長が絡んでいて、つまり人殺しをした奴を認めた奴ら全員人殺しと言うよくわからん理屈の元、フェスティバル会場で暴れまくるモスマン。この辺のパニック映画っぷりはなかなか面白かったです。「目をつぶせば大丈夫」と言っていたフランクがモスマンに襲われるのはなかなかシュールでした。

 

 結局ヒロイン補正でキャサリンが何とかモスマンに勝つのですが、更にこんな映画らしいチープなオチがまた最高で、もうB級映画ファン向けのための映画だなぁと思いました。「登場人物全員クズ」「最終的に怪物を応援したくなる」「過去を語る胡散臭い老人」「ヒロイン補正最強伝説」「そりゃねえよ(脱力)という展開」この辺を濃縮したような映画が好きな人にはオススメです。そういうのが好きな人以外は、見る必要はありません。見なくていいです、こんな映画。