傍線部Aより愛を込めて ~映画の傍線部解釈~

主にひとり映画反省会。人の嫌いなものが好きらしい。

感想「サイボーグ」

 注意:サイボーグはヴァンダムではありません。

 

サイボーグ [DVD]

サイボーグ [DVD]

  • 出版社/メーカー: 20世紀 フォックス ホーム エンターテイメント
  • 発売日: 2001/10/26
  • メディア: DVD
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【あらすじ】

 ペストが流行し、文明が崩壊した近未来。ペストの治療法を研究しているアトランタへ向かうサイボーグ女性と出会った傭兵のギブソンは彼女を狙う悪党がかつて恋人を殺された敵であることを知り、途中で合流した女性と一緒に悪党を追う。

 

 【感想】

 まず、何となくツタヤで「何かあと一本借りようかなー」とうろうろしていたのが始まりです。それから気になるタイトルを引っ張って、ジャケットにでっかくヴァンダムがいるんですから「これは」と思って大した期待はしていないけれど借りるしかないと思って借りた次第です。こういうセレンディピティがあるからレンタル屋は好きだ。

 

 で、肝心の内容は期待通り、いや期待以上の出来でした。早い話、褒めるところが若いヴァンダムの回し蹴りだけという素晴らしい出来だったのです。

 

 DVDを再生すると、流れてきたのは北斗の拳ことマッドマックス的な世界。最初のセットはなかなか凝っていて、全裸女性が磔にされて殺されているところで「おっこういうエグイのがいっぱい出てくるのかな?」とちょっと期待しました。ちなみにエグイのはちょっとだけでした。期待してもいいことはないです。

 

 画面では一組の男女が悪党から逃げ回っています。どうやらこの人たちを助けるのがヴァンダムというところらしいですが、さっくり男の方がやられて「君だけでも逃げて……」と女性だけが逃げることになります。この辺で「ほほう、サイボーグ化した無敵ヴァンダムが悪党をハイキックでバッタバッタか」といういい意味でB級具合を期待してしまったのがよくなかったです。

 

 次のシーンでヴァンダムが出てくるのですが、なんと逃げてきた女性の頭部がパカっと開いて「私はサイボーグ。ペストの治療法を記憶しているの。アトランタまで連れて行って」とお願いする。サイボーグお前かよ! ヴァンダム生身かよ! と第一のガッカリを味わっているうちに話はどんどん進んで、悪役らしいグラサンかけたオッサンが仲間をたくさん引き連れてまるでエグザイルのように登場するじゃないですか。このエグザイルが強いみたいで、ヴァンダムは一撃でダウン。サイボーグ姉ちゃんは連れて行かれてしまいました。

 

 どうやらヴァンダムはサイボーグ姉ちゃんに興味はなさそうだけれど、エグザイルには個人的に因縁がありそうだ。アトランタまで行くために船を強奪してその辺の人を皆殺しにしたエグザイル。そこの生き残りの姉ちゃんとヴァンダムでエグザイルを追うことになります。

 

 何がすごいって、ここまでの展開がめちゃくちゃ速いのに必要な台詞がほとんどないもんだから客の方で「らしい」「ようだ」の推測をめちゃくちゃしまくらなければならないところ。特にヴァンダムの過去についてはほぼ一切言語化されておらず、断片的に挟まれる回想らしきシーンで事態を把握しなければならない。この回想もかなり細切れで意味がわからないものになっており、寝る観客はここで寝るだろう。

 

 それから特に意味もなくヴァンダムの回し蹴りや女優の全裸とかがあって、何とか一行はエグザイルに追いつきます。エグザイルの目的はペストの治療法を手に入れて世界の神になること。混沌と破壊の世界を望むエグザイルは博愛目的でペストの治療法が広まることがイヤなのです。それにしてもそれならサイボーグ姉ちゃんぶち壊せばいいと思うんだよなぁ。その辺深く考えちゃいけない。

 

 エグザイルに追いついてあと一歩のところまでやってくるけれども、強いエグザイルたちにヴァンダムもたじたじ。ついでにサイボーグ姉ちゃんは「あなたにエグザイルは倒せない」「アトランタに着いたら倒すことができる」と何やら意味ありげなことを言う。それから下水道らしきところを通って逃げるヴァンダムたち。途中で「狭い道で180度足を開いて壁でつっぱり、敵を待ち伏せ」なんてヴァンダミングなシーンもあったけれど、全然盛り上がらず。全て演出がひどい。かなりガッカリアクション。

 

 それからエグザイルに海岸でボコボコにされるヴァンダム。ついに磔にされてしまったけれど、何やら思い出し怒りで磔状態から脱出。どうやら昔殺されたと思っていた義理の娘がエグザイルの側近になっていたらしい。この辺めちゃくちゃわかりにくい。多分「映像で説明するオレカッコイイ」という状態になっていたと思うのだけれど、少しは台詞で説明してもいいんやで。

 

 そしてアトランタについて最終決戦。「アトランタについたらエグザイルは倒せる」とサイボーグ姉ちゃんは言っていたけれど、特に何がどうということはなく怒りのヴァンダミングアクションによってエグザイルは退治されたのでした。やたらと強かったので「実はこいつもサイボーグか!?」と途中で思っていたのにそんなことはなく、非常にガッカリしたのです。そしてサイボーグ姉ちゃんを研究所に送り届けたヴァンダム。「世界を救うのは彼かもしれない……」なんて思わせぶりな台詞があって、おしまい。

 

 そもそも、タイトルが「サイボーグ」なのに、サイボーグが話にほとんど絡んできません。正直「サイボーグ」である必要がまーーーったくありません。それなのにタイトルが「サイボーグ」。体感的には「ヴァンダム怒りのマッドマックス」くらいのタイトルでいいです。この話、真面目にサイボーグにする意味がない。ぶっちゃけ体中を電脳化する理由が全く分からない。この内容なら記録媒体を運べばよかったんじゃないのか? とかそういうことは思って行けない気がする。

 

 そういうわけで遠慮なく指を指して笑える内容の映画だったのですが、一番面白かったのはwikipediaにある「続編として『サイボーグ2』(アンジェリーナ・ジョリーの映画初主演作でもある)と『サイボーグ3』の2本が制作されたが、何れもヴァン・ダムは出演していない。*1」の記述です。ちなみに今作のスタッフも誰も関わっていないようです。よく続編作ろうと思ったなぁ。