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傍線部Aより愛を込めて ~映画の傍線部解釈~

主にひとり映画反省会。人の嫌いなものが好きらしい。

感想「卒業」

洋画 アメリカンニューシネマ

 いろんな意味で「卒業」。

 

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【あらすじ】

 大学を卒業したベンジャミンは自身の卒業を祝うパーティーで、どうにもならない不安を抱えていた。そこへ両親の会社の共同経営者のロビンソン夫人がやってくる。ロビンソン夫人はベンジャミンと関係を持ちたがり、嫌々ながらもベンジャミンはロビンソン夫人と逢うようになる。やがてロビンソン夫人の娘のエレーンが大学から戻り、ベンジャミンはエレーンに惹かれる。しかしロビンソン夫人は彼女との仲を許さなかった。

 

【感想】

 言わずとしれた名作なのですが、どうしても教会から花嫁を奪うシーンと主題歌ばかり有名で肝心の内容をよく知らないまま「何が卒業なんだろう」と思っていたのですが、もうこれは「卒業」の話ですね。いろんな意味で。

 

 まずダスティン・ホフマン演じるベンジャミンの性格が本当にすごい。何やら優等生ということで大学を卒業したけれど、将来に漠然と不安を抱いていて人馴れしていない。そこを欲求不満のロビンソン夫人に付け込まれるのだけれど、本当に痛々しい。何が悲しくて知り合いのカーチャンと同じくらいの年の女の人に「卒業」させて貰わなければならないんだろうか。この辺で上手に断れないベンジャミンが既に哀れで、後半に行けばいくほどこの哀れさが急加速してくる。

 

 日中はプールでぼんやりして、夜は年増とベッドを共にする日々を送るベンジャミン。双方の親からの勧めでエレーンとデートすることになるけれど、ベンジャミンはわざと車を飛ばしてストリップバーにエレーンを連れていく。わざと悪ぶって嫌われようとするけれど、結局ベンジャミンとエレーンはなんかいい感じになってしまう。

 

 そもそもロビンソン夫人はできちゃった結婚で100%納得して結婚してエレーンを生んだわけでない。女として娘に嫉妬する母親と言う割とおぞましい一面を見せながら、ベンジャミンはロビンソン夫人とエレーンの間で右往左往する。最終的に最悪な結末を迎えるけれど、どう見ても「はっきりしなかったベンジャミンの自業自得」にしか見えない。この映画において童貞は罪だ。

 

 そしていろいろ吹っ切れたベンジャミンは開き直って「エレーンのストーカー」として生きていくことになる。その後のベンジャミンの付きまといは当時はどう映ったのかわからないけれど、現代から見れば純愛でもなんでもない、ただのおぞましいストーカー野郎にしか見えない。それなのにあまりにも可哀想で、医学生の彼氏がいるのに相手をしてあげるエレーンも何だか不安になる。「ごめんね」で済めば警察はいらないし、どう見てもメンヘル野郎に同情なんかした日には大変なことになる。

 

 そしてそんなエレーンの様子を知った両親はエレーンを退学させ、さっさとその学生と結婚させようとする。「ストーカーには遮断するような行動をとってはいけない」という現代のライフハック通り、ベンジャミンはあの手この手を使って結婚式の教会を特定し、彼女を奪いに行きます。そこであの有名なシーンに繋がるのですね。てっきり今まで双方本意ない結婚からの行為だと思っていたよ。現代なら「結婚式で見た修羅場」みたいなスレでおいしく消費されそうな話だ。

 

 結局、一時のテンションでできちゃった結婚をする羽目になった母親と同じく、エレーンも一時のテンションに身を任せてベンジャミンについて行ってしまいます。バスに乗って、最初は嬉しそうな二人なのですが徐々に不安そうな顔になっていきます。これはこの後の二人の運命の暗示であるなんてよく言われますが、後先考えないで一時のテンションに身を任せるとよくないってことなんだと思います。先の見えない時代で先を考えるなんて難しかった時代だと思うのですが、やっぱり後先は考えないと『俺たちに明日はない』になってしまうと思うのです。おわり。