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傍線部Aより愛を込めて ~映画の傍線部解釈~

主にひとり映画反省会。人の嫌いなものが好きらしい。

感想「ガタカ」

 なんだ、ただのヒューマニズムか。

 

 

【あらすじ】

 そう遠くない未来。遺伝子操作で優秀な人間を意図的に生み出すことが出来るようになり、社会は遺伝子によって完全に管理されていた。ヴィンセントは遺伝子操作を受けずに生まれた「不適合」だが、宇宙飛行士になるという夢があった。ところが「適合」に劣る「不適合」の彼は宇宙飛行士になることができない。そこで「適合」しているジェロームの遺伝子を買い、不正をして宇宙センターに就職する。

 

【感想】

 近未来の管理社会モノということでワクワクしたのですが、意外と人間味あふれる描写でガチガチのディストピアを期待して見ると期待が外れるかもしれません。多分、映像が大人しいからだと思う。「これは!」という場面がないのが大きいのかもしれない。主人公が最初に世界の説明を全部モノローグでやっちまったのが大きいかもしれない。ただ、こういう設定を映像で見せるとかなり生々しいので「モノローグ」で柔らかくしたのかもしれない。被差別階級にある(?)主人公の立場を映像で描くのはかなり大変だったのかもしれないし、本筋よりそっちがメインと思われるかもしれないから。

 

 ただ、淡々と物語が進むのはこういう近未来SF初心者にはとてもいいかもしれない。例えば「トゥモローワールド」や「ソイレントグリーン」みたいにガチガチの暴動があったり、「未来世紀ブラジル」みたいに訳の分からないガジェットや映像で脅しをかけてくるようなアレではちょっと引いてしまう。この辺から「お、管理社会って怖いw」みたいな感情を持ってもらえたらいいと思う。この映画が面白いと思ったら、次は「未来世紀ブラジル」を見てほしい。

 

 内容については結構シンプルだなぁと言う感想しかなくて、途中でオチが読めてしまうのもガッカリ感がありました。でも物議を醸しだす真のオチまではちょっと読めずに、割と解釈必要な宙ぶらりんな感じになっているのかなぁとも思いました。なんていうか、ふわっとしてるんですよね、全体的にふわっと。管理社会の闇の割には毒がない。それもそのはずで、「努力をしたから偉くなりました。努力大事ですよ」というメッセージが強固すぎて、他のテーマが全部見えない。兄弟愛も、なんていうか添え物っていう感じ。

 

 最後のアレなのですが、アレに至る説明が全くないのが不可解なんですよね。ヴィンセントが主役で彼の内面がよく出ているのはわかるのですが、ジェロームの葛藤のようなシーンが圧倒的に足りなくて、だからラストだけが唐突に浮いているような気がするんですよ。その辺が割と不親切設計だなと思うのです。

 

 これだけいろいろ書いていますが、要は「ディストピア映画として見たら割とはぁとふるな物語で拍子抜けするぞ!」というところです。個人的にハードル上げ過ぎた感じがします。 何より「不適合者がどう惨めに生きているか」という描写が少なすぎて、ヴィンセントにイマイチ感情移入できないんですね。「お前、何高望みしてんだよ」ってなっちゃう。ちらっと映る不適合者の区画をもっとクローズアップして「本来ヴィンセントはこうやって暮らしてなくちゃダメだよ」みたいなシーンを入れれば、もう少し映画としてメリハリがあったのかなぁと思います。生意気ですね、ごめんなさい。