傍線部Aより愛を込めて ~映画の傍線部解釈~

主にひとり映画反省会。人の嫌いなものが好きらしい。

感想「自殺サークル」

 あなたはあなたと関係しますか?

※この映画及び感想には強い力がありそうなのでメンタルの弱い時に見ないでください。

 

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【あらすじ】

 新宿駅の構内で女子高生54人が一斉に電車に飛び込んだ。現場近くから人の皮をつないだ長いベルトのようなものが見つかり、自殺した人にはそれと同じ形で皮を切り取られた跡があった。事件性は見つかりにくいが、捜査を進める中で自殺の連鎖は止まらなかった。

 

 【感想】

 園子温作品ということで鑑賞。有名な女子高生54人飛び込みの冒頭のシーンだけは知っていたのですが、それ以外はほぼ前知識なく観ました。古屋先生のアナザーストーリーは読んでいましたが、かなり違う話でしたね。

 

自殺サークル

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 飛び込みのシーンのエグさも半端ないのですが、全体的に漂う「狂気」が何ともいえない作品でした。女子高生の飛び込みを受けて高校生が「俺たちも死のうぜ!」と屋上で盛り上がって、そのまま集団で飛び降りるシーンは鳥肌しか感じませんでした。まるで「明日のデートは遊園地に行こう」という感覚でみんなで手をつなぎ、「いっせーの」で飛び降りるまでの異質な空気が本当に危ない。人間ってこうやって生きたり死んだりするんだ。

 

 そんなエグさばかり前面に出がちだけれど、この映画のゾッとするところはそれだけで終わらない。意味深に繰り返されるアイドルの歌、インターネットに流れる奇妙な言説、そしてどう考えても正常ではない空間。そんな「おいおいヤバいだろ」っていう空気を濃縮させた雰囲気を作り上げてボーンとぶん投げたら壁にべちゃっと張り付いたような、そんな作品。エグさのエッセンスが半端ないのです。

 

 ただ途中のローリーのミスリードパートは画面の前で「一体何が起こっているんだ」とエグさの鑑賞ではなくはてなマークが何個も並ぶような感じで、そこはすごくよかったです。「エグイ→エグイ→エグイ→唐突なギャグ」という感じで脳みそが吹っ飛ぶような、そんな感じです。あの白い布は何なのか、そこを深く考えてはいけないんだと思います。

 

 それで、「あなたはあなたと関係しているのか」という根源的な問題ですが、これは多分SNSで多数アカウントを使い分けるのが当たり前な現代でもっと生きてくる問いだと思うのです。回りくどいのですが、簡単に言うと「お前は誰だ」ということなのですがこれがなかなか答えられない。結局「私は私だ」という人はこの世を脱出するしかないのだろうけれど、「私と私」の関係ではなく「私と私に関係する誰か」が見つけられた人はこの世に滞在することができる、みたいな終わり方なのかなと思いました。よくわからん。わかんなくていいと思うけれど。

 

 途中の「そうだったのか!」というシーンはなかなか「レベルを上げて物理で殴る」的な展開で結構好きです。それからスケルトンの置き電話に時代を感じました。何でもスケルトンにすりゃいいって時代があったからねえ。