傍線部Aより愛を込めて ~映画の傍線部解釈~

主にひとり映画反省会。人の嫌いなものが好きらしい。

感想「E.T.」

 E.T. おうち 帰る

 

 

【あらすじ】

 少年エリオットの前に、あるとき地球に取り残されたエイリアンがやってくる。エリオットはエイリアンを「E.T(エキストラ・テレストリアル)」と呼び、家族に隠れて交流を深める。やがて言葉を覚えたE.T.はテレビやコミックを見て「家に電話をして迎えを呼ぶ」と言い始める。

 

【感想】

 なんで今まで見てなかったんだろう。120分後に涙があふれる映画だった。

 

 スピルバーグの映画って言葉で説明するのが難しいといつも思ってる。『インディ・ジョーンズ』も『未知との遭遇』も面白いんだけど、それを言葉にすると面白さが半減する気がしてしまう。そういう映画を作れるのはスゴイと思う。

 

 これは「通過儀礼」の話で、出会いと別れの中からエリオットが成長する話なんだよね。それまで家庭不和でギスギスしていた空気がE.T.がやってきた後「同じ秘密を持つ」ということで兄弟が団結し、最終的には「同じ目的を持つ」ということで母親と兄の友達まで全面的に後押しをしてくれる。その感情のグラデーションが見事としか言えない。少しずつ始まる物語が最終的にどんどん大きくなっていく。それと音楽のボリュームが一致している。これだけですごく面白い。

 

 エリオットにとってE.T.は家庭内での居場所がないところに現れた「居場所」だった。彼を守ることがエリオットの小さな使命であり、それまで庇護されてきた母親から飛び出していく要因にもなった。そうやって大人になれたエリオットの前から役目の終わったE.T.は星へ還るのです。E.T.はエリオットの子供時代の象徴であって、またいつまでも一緒にはいられない存在なのです。

 

 この手の「子供時代の象徴とサヨナラ」の映画には本当に弱くて、『インサイド・ヘッド』は映画館で大泣きしたし、この映画の着想になっている『ドラえもんのび太の恐竜(オリジナル)』は何度見ても最後で泣く。『のび太の恐竜』は本当に好きで、最初はどうしようもない動機から始まった物語がピー助をかくまい育てて、最後は元の時代に戻してあげる。もうその筋書き一点で「良い映画」だ。これを思い出しているだけで涙が出てくる。涙腺が弱くなっていけない。

 

 ついでだから言うと、そういうわけで『のび太の恐竜』のリメイク版には本当に失望している。ラストの怒涛のテンポが非常に悪くなっていて、尻切れの冒険だからこそあった急激な感情の落差が一度落ち着いてしまってスピード感がなくなっている。名台詞の「はやく超空間に入って!」もない。あとラストの「あったかい顔」は何か違うんだよ。もっと凛々しく大人になった顔をしていてほしかったのに、なんか「冒険が終わってほっとした」という感じだけに見える。あのシーンを絶賛する人のほうが多いけど、自分は絶対に許さない。ついでにゴールデンヘラクレスオオカブトとかいう謎の映画も認めない。

 

 あまりにも有名だから見ていないという人も多いだろうけど、これは万人受けするけれどちゃんと中身のある映画だから安心してほしい。そして120分後に一緒に泣きましょう、終わり。