傍線部Aより愛を込めて ~映画の傍線部解釈~

主にひとり映画反省会。人の嫌いなものが好きらしい。

感想「女優霊」

 原点はやっぱりオリジナル。

 

女優霊 [DVD]

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【あらすじ】

 とある映画スタジオで、未公開の作品のフィルムに上書きしてしまったことがわかった。その映像を監督は「見たことがある」と言うけれど、「お蔵入りになった映像だ」と誰も取り合わない。そのフィルムに映っていた不気味な女性が実際に現れて、様々な怪事件を起こすようになる。

 

【感想】

 Jホラーの原点、ということで観ましたがやっぱりオリジナルは強い。雰囲気が違う。なんかこう、呪われている感じがちゃんとする。もう導入の時点で結構怖い。「何か出るぞ何か出るぞー」という盛り上げがあって、でも実際は何も出てこないのがいい。いつまでも「後ろを振り返ったら何かいそう」という感覚が残っている気になる。

 

 映画の撮影所での物語ということで、実際にそういう場所には霊がたまりやすいという話を聞いたことがある。何かしらの強い感情を常に発している空間には何かを引き寄せる力があるらしい。これは学校とか大人の遊び場でもある話らしい。

 

 中盤までは不穏な空気を漂わせながら物語が進んでいきます。監督の記憶の中にある映像が上書きされたフィルムに、というおかしな展開や「もう一人撮影所に誰かいるぞ」という感覚。しかもそれにおどろおどろしさがなく、さりげなく混ざっているという感じ。よくある「恐怖映像」を淡々と流したらこんな感じかなぁ、というところです。最近の民放の恐怖映像系の番組は「ここ怖がるところです!」ってアピールしすぎなのでこの映画を見習ってほしい。

 

 この映画で一番怖かったのが、女優の事務所の移籍問題でもめている女社長が乗り込んできたのに、「なんて言うものを撮っているの!」って逃げ出すシーン。別にお化けが映っているわけじゃないんだけど、彼女にだけ「それ」が見えているのが恐ろしい。そしてそれまでプンプン怒っていたのに急に顔を真っ青にして、「これを持っていなさい」ってお守りを渡してさっさと退散する。ただ怖がっている人を映しているだけなのに、それだけでそこに「何か」がいることを示している。かなり怖い。

 

 そしてラストの「女優霊」降臨シーンも大声で笑いながら登場するわ吹き替えの女の子に乗り移って豪快に笑い続けるわ、何とも愉快なお化けでした。この「何か」の怖いところは、誰かの怨念だとかそういう説明が一切なかったところです。結局そいつが何者なのか明かされることもなく監督が失踪してオシマイ、というじんわりとした終わり方もなかなかよかったです。

 

 びっくりしたりゴアシーンがあるわけでもないのですが、それでもじんわりと怖い。そういう映画ってなかなか素敵だと思いました、おわり。