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傍線部Aより愛を込めて ~映画の傍線部解釈~

主にひとり映画反省会。人の嫌いなものが好きらしい。

1990年代の渋谷を舞台にした『街』を2015年にプレイした

ゲーム

 今、この2015年の世の中の初夏に何故かドハマりしてます。

 

SEGA THE BEST 街 ~運命の交差点~ 特別篇

SEGA THE BEST 街 ~運命の交差点~ 特別篇

 

 

【ゲームの内容】

 渋谷の街を舞台に、8人の主人公たちがそれぞれの人生を追い続けるサウンドノベル。それは時にどこかで交差していて、時に気まぐれな選択肢が後からやって来たものの運命を大きく変えるこの時間軸で、彼らは無事に5日間を過ごせるのか!?

【全体的な感想】

 とにかくサウンドノベルと言う形態を最大限利用したゲームです。例えばAという人物のパートで右に進むか左に進むかという選択肢が生じて右を選択した場合、別のBという人物のパートでAとBが出会ってしまったためにBの身に不幸が生じ、Bの物語はそこで終わってしまいます。そこでAのパートに戻って左に進むという選択肢を選ぶと、BはAに出会うことがなくなり先に進むことが出来ます。これらの選択肢が8人複雑に絡み合い、最後まで物語を進めると言うゲームです。基本的にストーリーの出来がいいのは言うまでもないです。そして、2015年に遊んだから持てるメインの感想を置いておきます。

 とにかく懐かしい!

 サウンドノベルの傑作だよという評判なのでいつかやってみたいと思っていてなかなかプレイできず、当時からすれば20年くらい先の時代になってプレイしてみたわけです。しかしこれ、今プレイしてよかったのかもしれない。


 まず、全てが現在の感覚で見るととにかく古臭い。90年代のナウい表現で当時は時代の最先端だったものが、こうやって後から見るととにかく古臭い。

 

  • 「アニメとカニ興味はないノデ?」「ではいきませう」などオタク言葉
  • 全身ブランドスーツで決める大人の女性
  • 誇張された「テレビ屋」の表現
  • いわゆる「キレる若者」の扱い


 他にも全体的に衣装やメイクが当世風でいまめかしくなかったり、脚本そのものが「これは現代だとアウトだぞぉ!」というものだったり、なかなか当時を振り返る的な面で見ていくと非常に面白いです。特に飛沢陽平パート。ありゃ現代では成立しそうにない。

 
 あと特殊な用語などに説明(TIP)がついているのですが、まるっきり関係ない製作者の裏話的な話が展開されていたりするとそれがなんとなく「はてなブックマーク」ぽくて、物語の外のメタな世界がちょっと顔を出して興味深いと思いました。


 そんなわけで各パートの感想を各パートずつ書いていきます。以下、ガッツリネタバレになるので注意して下さい。

 

【七曜会/篠田正志】

 何故か脅迫されて、1万円ずつ脅迫する組織『七曜会』に入会させられた大学生の話。最初は全然ハマらなかったのですが、白峰を脅迫するあたりからぐっと面白くなって終盤正志が日曜日に迫る部分は非常に面白かったです。出来れば脅迫シーンももっと選択肢があって切り抜けられるか否かと言うスリルを味わいたかったなぁと思う。なんとなくトントン拍子で脅迫が進行していくのもちょっと不気味だったかも。でもワニ治郎脅迫は少ししんみりしたなぁ。オチは絶対「逆に日曜日を脅迫する」だと思ったんだけどなぁ。

 
【The wrong man 牛/牛尾政美】

 足を洗ったヤクザが宝石店強盗に巻き込まれ、更にヤクザ役の役者と間違われて役者のふりをしなくてはいけないというなかなかクレイジーなストーリー。非常に面白かったのだけれど、唐突に3日で終わってしまったのが残念。そして彼がみちるを好いてしまった理由が残るエンディングで、どうにも気になるのです。それにしても5日目に何故彼は警察署にいたのだろう? 
 

【The wrong man 馬/馬部甚太郎】

 牛尾と入れ替わって、宝石店強盗と間違われてヤクザになりきらなければならない役者のストーリー。これもなかなか面白かった。特にトイレで牛尾を会話するシーンは面白い。この珍妙さを演出できるシナリオもなかなかないと思う。ただ牛尾と同様3日で終わってしまったのが残念だった。印象に残っているシーンはヤクザの事務所で大暴れするところ。ひたすらバイオレンスで楽しかった。


【で・き・ちゃっ・た/飛沢陽平】

 高校三年生で年上の女の子を妊娠させたうえ、社長令嬢と婚約して昔の彼女が子供を連れて帰ってくるぶっ飛んだストーリー。完全なコメディであるとわかったうえで、それでも現代の価値観でこの話を見てしまうとあまりにもひどい。昔はおおらかだったんだなぁと実感できるシナリオでした。ただ優作を亜美と介抱しているシーンは胸を打つものがあったし、そして何よりオチがキレイで非常によかったので許す。


【ゲーマー刑事走る!/雨宮桂馬】

 ザ・オタク!な刑事が爆弾魔の予告状に振り回されて渋谷中を駆け巡るストーリー。謎解きはアナグラムが中心で最終盤までプレイヤーが能動的に考えなくても進むことが出来るので楽ちんといえば楽ちんだけど、物足りないと言えば物足りない。「ミニパソ」「~でせう」など時代を感じるオタフレーズが満載なのもこのシナリオの特徴。最初は正直ぞわっとする時代性を感じていたのですが、ずーっとやってるとなじんでくるものなんですね。

 このシナリオには各方面からツッコミが入っているけれど、「正しい選択肢→爆弾はイタズラ」「間違った選択肢→爆弾で渋谷は消滅」というなかなかアクロバットな展開をする点で「???」と多くのプレイヤーに思わせたところが痛いと思う。それに、ぶっちゃけ真犯人2日目くらいでなんとなく予想できてしまっていたんだよね……なんか「カマし」をかける奴が怪しいっていうパターンでずーっと見てきたから……何となく最後はしんみりでした。


【やせるおもい/細井美子】

 紅一点女主人公。5日間で17キロ痩せなきゃいけない女の子の話。これも今のご時世なかなかできそうにないシナリオだし、完全コメディと言ってもデブだのブタだのカバだのトドだの連発されたらいくらなんでもプレイされている「ふくよかな方々」は納得できないものもあるだろう。でも摂食障害になるような過度なダイエットが危険であるという概念がイマイチ広がっていなかった頃だと思うので、そういう啓発になったらいいんじゃないのかなぁとは思う。あとエイリアンはちょっとなー。


シュレーディンガーの手/市川文靖】

 気が付いたら俗悪なシナリオばかり書いている純文学作家のストーリー。いわゆるチュンソフトサウンドノベルの悪趣味が全開で、このノリを楽しめる人とそうでない人の差は歴然としているはず。テイストとしては「かまいたちの夜2」のあの気持ち悪い感じが近いです。シナリオとしてはいつも間違い電話に悩まされるかわいそうな人。最後は予定調和のようなところがあって、まぁそれはそれでいいかなぁと。あとダンカンがなかなかよかった。


【迷える外人部隊/高峰隆士】

 フランスで外人部隊に所属していた青年が渋谷で悩むストーリー。個人的にかなり時代性が出ていると思う。いわゆる「俺の存在意義は何なんだ」的な若者のアイデンティティがどうのこうのという感じで、悪く言うと中二病です。途中の暴力描写はもっとキレッキレでもよかったかなぁと思います。ラストは拍子抜けというか、世の中甘くないぜと言うか、なんかガッカリしました。もっとエグく終わらせてもよかったんじゃないかなー。でも伍長は好きです。

 

 以下、隠しストーリーです。

 

【花火/高峰厚士】

 高峰の父ちゃんの裏話的な奴です。おまけだからなんだけど、バッドエンドとかもっと選択肢があってもよかったかなー。



【青ムシ抄/青井則生】

 これは……「電車男」以前のキモチワルイヲタクのノリですノデ! ひたすら気持ち悪いノデ! でもその気持ち悪さが愛おしさに次第に変わっていくのはなんなんですかネェ……愛とはヒジョーに美しい!!


 ぶっちゃけ全力でキモイです。この話だけ全編アニメパートで飛沢陽平パートで大活躍した気持ち悪い「青ムシ」の脳内ワールド全開の話です。ひとつ言いたいのは、これ絶対製作した人個人的に楽しんで作ってるだろ!? ってことです。


 飛沢パートが現代でNGって言ったのですが、これは現代でも当時でもNGだろう……真面目にエロパロマンガのタイトルを考えたり、デパートの屋上でパンチラ狙ったり、「リア充爆発しろ」を実際にやろうとしたり、このシナリオが日の目を見ることはないと思います。だから隠しなんですけど。実際に「青ムシ抄は最後まで読めなかった、胸糞」というレビューが多いです。


 で、最初は「キモイよぉ~」と>>1さんみたいな顔で進めていたのですが、何故かどんどん青ムシがかわいく見えてくるんですよ……きっと青ムシがきれいなアゲハ蝶に脱皮するノデェェェ!って感じなんですよ。実際、話を進めていくほど、「青ムシに友達はいない」「チクることでしか繋がりがもてない」とか、割と同情できなくもない。悪いのは完全に黒川だし、黒川の妄言に青ムシと白ブタは従っていただけだ(盗撮は完全に青ムシの責任だけどな!!)。
 

 で、疑惑のラストですがメイン主人公のエンディングで一番謎の多いあの人のエンディングにつながる訳で、ここで『街』というゲームのそこはかとない意地の悪さを感じました。このぶっ飛んだ世界の気持ち悪い「青ムシ」も渋谷の住人で、主人公たちを乗せて渋谷を回ったタクシーの運転手と一緒で誰かと直接的に、または間接的に関わっているはずだということをハッと思い出させる感じでした。正直「見なきゃよかった」という気持ちと、「これでいいんだ」という気持ちが交錯してなかなか後味悪い感じでよかったです。青ムシ、君のことは1週間くらい忘れない。

 

 
 そんなわけで、気になる人はやってみてください。今見ると、とってもレトロなゲームですよ。