傍線部Aより愛を込めて ~映画の傍線部解釈~

主にひとり映画反省会。人の嫌いなものが好きらしい。

感想「スカイ・クロラ」

 生きてるってこと証明できなければ死んでしまっているのと同じなのかなぁ…(by FFⅨ)

 

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【あらすじ】

 森博嗣原作の小説を映画化。函南優一はパイロットとして新しい基地に配属されたが、指揮官である草薙水素から前任者である栗田仁郎についての情報が何も得られない。函南も草薙も「キルドレ」と呼ばれる思春期から成長しない、更に負傷しないかぎり死なない人種である。戦争は平和な場所から生きている実感を抱かせるためにするものだという世界の日常であり非日常の話。

 

【感想】

 原作は未読なのですが、押井作品にしてはサラリとしているなーと言う印象です。特に謎解きもないし、ありのままの情景が淡々と流れていく感じ。そして戦闘シーンは豪華にバーンと。余韻はあまり残さない。

 

 おそらくこの作品の中心は「キルドレ」なのだと思います。草薙が「キルドレ」の苦悩を体現して、三ツ矢が「キルドレ」について具体的に語り、最後に函南が「キルドレ」としての在り方を示すという三方向から描かれています。「キルドレ」については原作を読んだ方がきっとわかると思うので、特に考えないことにします。

 

 それよりも気になったのが、基本的に登場人物に生気がなかったことです。声優が棒読みと言うより、キャラクターの眼に光がない。動きがなめらかでない。たぶん「キルドレ」という死なない存在を匂わせるための演出なのだと思いますが、最初は見ていて不気味でした。次第にキャラクターの中の感情が見えるようになって初めて彼らの気持ちがわかったような気がしました、最初は「この調子で大丈夫なのだろうか」と不安すら感じました。

 

 で、賛否分かれそうなラストなのですが「希望か絶望か」と聞かれたら「絶望」はないと思うのです。「函南優一」はティーチャと戦い、これほどまでになく敗れます。そして後続のパイロットもまた使用済みのマッチを折る癖を持った、おそらく甘い顔の男なのでしょう。彼をそのまま受け入れることで、草薙は栗田仁郎からも函南優一からも解放されて新しい物語が始まるのでしょう。でも戻らない函南を待つ飛行場の様子はなかなかリアリティがあって、素直に悲しいと言うだけの感覚ではない何かを感じました。

 

 最後にどうでもいいのですが、函南と草薙が抱き合うシーンで拳銃を持ったままというのがすごくエロいなぁと思いました。生の象徴と死の象徴の混在ってなんかものすごくビーンと来ます。たぶん普通の人はそう思わないと思います、だからこの辺の感想はながしておいてください、ハイ。