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傍線部Aより愛を込めて ~映画の傍線部解釈~

主にひとり映画反省会。人の嫌いなものが好きらしい。

感想「パルプ・フィクション」

 F●ck! Fu●k! Fuc●!

パルプ・フィクション [DVD]
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【あらすじ】

 コーヒーショップで強盗を働こうとするカップル。ボスの金を持ち逃げした男の始末をしに行くマフィアの二人組。その片割れはボスの出張中にボスの妻の相手をするよう言われていた。一方ボスは賭け試合の八百長をボクサーに持ちかけていた。全ての話は粗雑な小説(パルプ・フィクション)のように絡んだり絡まなかったりする。
 

【感想】

 タランティーノ監督の名作と言うことで「映画好きなのにまだ観てなかったの?プw」枠に入っていたこちら。最初はひたすら二人組がベラベラ喋っているだけだったのが、気が付けば引き込まれているような、不思議な映画でした。こういうのは好きですね。


 面白かったのはまず「F」言葉が作中ずーっと登場すること。どうやら250回登場するみたいで。字幕が普通の日本語なのに音声が「ふぁっくふぁっくふぁっきんまざー」とか言ってるんですから笑うしかないです。それなのに画面はひたすらオサレ。そして最近ではよく出回る手法ですが、この話はわざと時間軸をバラバラにしているところが画期的だったそうです。言わば映画の中で紀伝体をやった、というところでしょうか。それが何か深い意味があるような気がするけどそうでもないかもしれないというところがまた面白い。

 まず、ユマ・サーマンが美しい。トラボルタとの絡みが微笑ましい。マフィアのボスの奥さんとあろう方が「映画ファン丸出しの比較的庶民的なレストラン」にやってきたり、そこで「5ドルのシェイク」を頼んだり、そのあとヘロインで意識不明になっちゃったり、大変おちゃめさんです。この辺でタランティーノマジックにかかって、あとはラストまで一直線です。

 この映画で面白いのは編集手法だったり凝った美術だったりもあると思うけれど、個人的にじわっと漂う「間」が好きだ。ずっとくだらないことをべらべらしゃべっていたサミュエルとトラボルタがドアをけ破ってマフィアの殺し屋になる瞬間だったり、金時計を手に入れたブルース・ウィリスが調子に乗ってトーストを作り始めちゃうところだったり、急に死体の始末場所になってしまった我が家を表情ひとつで嘆くタランティーノ監督の顔だったり、テンポがよいというか物語に隙間が存在する。そこで「ふふっ」と笑いが起こる。非日常なのに、非常に日常的なのだ。

 もうね、八百長破って逃亡中のブルース・ウィリスがマフィアの親玉を車で引いて逃亡しようとしたくだりが最高に面白い。そしてどういうわけかオカマを掘られるボスを日本刀で助けに行くブルース・ウィリス。「何がどうしてこうなった!?」という展開なのに「どうせ特に意味はないんでしょ」という感覚で笑いながら見ていられる。そして全ては7年間ケツの穴に隠されていた金時計のためというのも面白い。

 最終的に何かに開眼してしまったサミュエルがかっこよく冒頭の素人強盗を撃退するところで終わるんだけど、この後サミュエルは足を洗ってトラボルタはブルース・ウィリスに射殺される運命だ。それが観客はわかっているんだけど、「どうせパルプ・フィクション」というところがわかっているから後味が軽い。低俗上等、高等な思想なんていらねえよという暴力的なまでのメッセージが込められている。そういう意味で大変な暴力映画だ。他の作品に比べるとそれほどバンバンしてたりボカスカやってる印象はないんだけどね。

 あと、出てくる食事が「5ドルのシェイク」を筆頭に全部おいしそうだっていうのもポイント高いです。ただのチーズバーガーなのにフランス語で「チーズ・ロワイヤル」っていうとすごくおいしそうに感じるわけですよ。ジブリもそうだけど、ご飯がおいしそうな創作物って偉大だと思う。