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傍線部Aより愛を込めて ~映画の傍線部解釈~

主にひとり映画反省会。人の嫌いなものが好きらしい。

感想「オール・ユー・ニード・イズ・キル」

 もう一度。もう一度。もう一度。もう一度。もう一度。

 

 

D

 

【あらすじ】

 宇宙から来た謎の侵略者ギタイと人類が戦っている近未来。ウィリアム・ケイジ少佐は急に作戦の前線に回され、パワードスーツの扱いもろくにわからないままギタイによって殺される。ところが気が付くと出撃前まで時間が戻っていた。夢を見ていたのかと思うが先ほどと全く変わらない様子に驚く。2度目の出撃でも命を落としたが、また出撃前の状態に戻っていた。幾度かループを繰り返すうちに戦場の雌犬と噂されるリタ・ヴラタスキに出会い、ケイジがギタイの能力によって死ぬたびに出撃前の状態に戻されていることを知る。そしてループから抜け出す方法は、何度も死ぬことで戦況を覚え、ギタイに勝利することであると告げる。

 

【ネタバレなし感想】

 原作読んだ人もそうでない人も見に行って損はない映画だと思う。まず映像がさすがのハリウッド。戦闘シーンがバリバリにカッコイイ。3D吹き替えで見てきたんだけど、とにかく飛び出る気味の悪いギタイと何度も繰り返される地上への降下。そしてシャキンシャキンな訓練の機械やザラザラした戦場の空気。ストーリーだけでなく映像も心底カッコイイ。

 

All You Need Is Kill (集英社スーパーダッシュ文庫)

All You Need Is Kill (集英社スーパーダッシュ文庫)

 

 

 原作が日本のライトノベルということで有名になったんだけれど、立派にループもののSFしていると思うからもっと胸を張ってもいいと思う。原作に忠実なコミックも読んだけど、原作のテンポを更に良くしている感じがしていいね。

 

 

All You Need Is Kill 2 (ジャンプコミックス)
 

 

 でも一番好きなのは原作のあとがきで、非常にシンプルなんだけどこの物語を読み終わったあとにグッとくる何かがあった。「ゲームで勝てたのは僕が強かったからではなく、僕が何度も死んだからだ」ということだけで、それだけでひとつ話が書けたのはやっぱりいいアイディアなんだと思う。


 映画の方はさすがにトム・クルーズに少年兵は割り当てられないので戦闘経験なく上まで登ってきた少佐と言う役割になっているけれど、この話の面白さにはなんら影響はされていない。それどころか、映画の改変が素晴らしい。「ループして強くなる」というのは変わらないけれど、ギタイの設定やリタに出会うタイミングに周囲の兵士の設定などが大きく変更されている。それでも「これもオール・ユーだ!!」と言い切れるくらいキレのある演出だった。ストーリーもよかったけれど一番は迫力の戦闘映像と映画オリジナル設定のループの苦悩を表現するトム・クルーズだ。原作通りコーヒーがポイントになるシーンがあるんだけど、そこのトムの演技がまたいい。そんなトムを幸せにしてあげるラストもまぁ満足するものなので今年の夏休みは映画館に直行だ!!

 

【ネタバレあり感想】

 とにかく最初のニュース映像の畳み掛けのシーンで「かっけええええ!」と思いました。なんていうか、切り取り方がおしゃれというか戦争ものにしては軽い始まり方なんですよ。実際終始重々しい感じでもないのでリアルな「戦争映画」ではありません。


 そして序盤のへっぴりトムは原作にないものでした。何かと逃げ出そうとしたり、嫌だ嫌だを繰り返したりと頼りないにも程がある。でも何回も死んでいくことで余裕の表情や戦士としての陰のある演技をしたりと演技の幅が豊かでスバラシイなと思いました。

 あと散々言われているとは思いますが、リタは死にません。むしろ能力が失われた状態で「ループ経験者」として登場するので原作でのラストはあり得ないんですよ。そして眼鏡っこの整備士の代わりに登場する変なオッサン博士がリタのサポーターになっています。萌えよりも軍隊が身近で現実的なアメリカらしい改変だなぁと思いました。

 そしてコーヒーのシーンなのですが、原作では出撃前にリタからもらうということになっていましたが、映画では設定の変更でまるで違うシーンになっています。簡単に言うとギタイを倒すためには「オメガ」というギタイの中枢をぶっ叩かなければいけないのですが、そこでオメガの脳と繋がったケイジ少佐のイメージから場所をはじき出してリタとそこに向かうわけです。ところが途中の廃民家でケイジは先に進むことをためらい、家にとどまることをリタに促します。何故か奥からコーヒーを見つけてきて、リタのプライベートを語るケイジ。実は彼はこの民家に来るのは初めてではなく、何度ここへ来てもギタイの襲撃に会いリタを死なせてしまう。ループ時にリタは300回好きな人の死を見てきたと話をするが、ケイジもリタの死を何度も何度も見ているのだ。この「自分の死だけでなく身近な人の死を何度も見る」と言う葛藤も原作の大きなポイントだったのだけれど、少し暗くなりがちなシーンだ。でも直接リタの死を繰り返すシーンをあえて描かないことで、ケイジの孤独を表現しているのがよかった。変に暗くならないけど、少し考えると残酷なシーン。その「オール・ユー」の世界に苦いコーヒーを使うのはいいと思う。でもリタのコーヒーには砂糖が三杯入る。この辺が映画と原作のリタの違いかもしれない。

 ラストは置いておいて、ずいぶんと変わった設定の中でも面白かったのが序盤の死にざまコレクション。逃亡選択後のシーンは随分と趣が変わっていて映画の方が好きです。そして腕立て伏せから逃げ出すシーンで通りかかるトラックの下を潜り抜けるというシーンで失敗して「お前、そんなに腕立てが嫌いだったか」というシーンやリタとの戦闘訓練で「はい次」「はい次」「はい次」ってバンバン撃たれまくるシーンは完全にギャグでした。

 つまりは「何度も死んで覚えていくアクションゲーム」なんだよね。強いのは何度も死んだから。この映画にはザラザラした死の香りが漂っている。死ぬのはケイジだけでなく、ヘリに押しつぶされる仲間や失敗するリタ、そしてクライマックスで犠牲になる仲間たち。簡単に「死ぬ死ぬ」って使うけれど、本当の死とは一体何なのか。そんなことを考える映画でした。とにかく満足度が満タンになりますので「どうしようかな……」と思っている人には自信をもってオススメします!