傍線部Aより愛を込めて ~映画の傍線部解釈~

主にひとり映画反省会。人の嫌いなものが好きらしい。

感想「『LUPIN THE IIIRD  次元大介の墓標」

 あばよ、次元。

 

 

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映画『次元大介の墓標』公式サイト

【あらすじ】

 秘宝「リトルコメット」を狙い、大使に化けて東ドロアに侵入したルパンと次元。すぐに正体がばれて逃げようとするが、次元が狙撃される。間一髪で逃げ出した2人だったが、次元は狙撃手の使っている弾丸に見覚えがあった。それは1週間前、西ドロアで東西平和のためにコンサートを行ったクイーン・マルタの暗殺に使用されたものと同じだった。そして次元の名が刻まれた墓標が見つかる。ターゲットの墓を事前に用意して、殺しを楽しむというヤエル奥崎に次元は狙われていた。彼に狙われて生き延びた者はいないと言う。何故ルパンではなく次元が狙われたのか。そして不二子も関わり、宝石泥棒からきな臭い事件へと発展していく。

 

【ネタバレなし感想】

 お引越し後第一弾はオトナのアニメです。「こういうアニメも見たかったんだ!」という感じの映画だった。非常にオトナ。非常に男。そしてダンディでリアリズム。不必要な情報がほとんどなく、ストーリーもスリムでいて後味が非常にビター。しかも往年のルパンファンならば「おお!」と思わせる要素もあり、51分と短い作品なのにそれを感じさせないボリューム。なんだか渋い。内容は次元が狙われるっていう話で次元メインで動くけれど、もちろんルパンや不二子もたくさん活躍する。お決まりのカーチェイスのシーンもあるし、敵の狙いなど一筋縄でいかない展開も相変わらず。


 TVアニメ「LUPIN the Third -峰不二子という女-」の流れを汲んでいて、従来のテレビスペシャルの雰囲気は全くない。説明口調で状況を語ることもなく、「内容はルパンⅢ世なんだけど地上波では放送できないなぁ」と思ったのが正直な感想。明確に人はバンバン殺されるし血はドバドバでるし、不二子ちゃんはアレだし。深夜では何とかなっても間違いなく金曜ロードショー枠では放送できない。「わールパンだってー」と子供にせがまれてもちょっと見せられるものではない。「ねーパパー、ショーガールってなぁに?」「なんでヌルヌルしてるの?」で困ってしまう。そういう生々しいシーンが苦手な人にはオススメできない。

 

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 全体的に思ったのは、今度実写化もされる「ルパンⅢ世」なんだけど、彼らのキャラクターって案外確立していないかもしれないということ。ルパンは泥棒をする、次元は何だかんだ言ってルパンについていくという行動だけが決まっていて、そのほかの生い立ちや好物、心理的描写など細かい部分は全く気にならない。最近のキャラクターメイクでは細部にこだわるというところがあるけど、「ルパンⅢ世」のキャラクターに細部はない。物語に巻き込まれる形でキャラの特性が発揮されている。これって結構すごいことなんじゃないかな。そして魅力的な今回のライバルはヤエル奥崎。彼もキャラクターとしては非常に目立つけれど、こだわりの理由など細部は存在しない。こういういい意味で「気にしないで見られる物語」って面白いと思う。

 とりあえず次元がひたすらカッコイイ。世界一のガンマンの意地を見せる次元と、非常に狡猾ではあるけれど強敵で紳士なヤエル奥崎。キッタない感情の世界よりもプライドが支配する世界。ルパンならではの派手なギミックと不二子ちゃん大ピンチがあって、ハラハラドキドキして、ラストでひゅっと臓物が落ちるような感覚は是非味わってほしい。

 

 

【見た人はわかるネタバレ感想】

 次元がブロードウェイしたあたりのシーンで腕時計を確認した人は、正直に手を挙げなさい。怒らないから。自分もそうだったから。いろんな意味であのシーンは展開とかそういうことではなくドキっとしたと思う。

 この話の大事なアイテムは、例のアレではなくて煙草だと思う。「くたばれ!ノストラダムス」のラストに似ているんだけど、それを踏まえてキレイなオチに仕上がっていたと思う。あのオチも含めてTVで放映するのは難しいんだけどね。あとラストの疑惑のあの人。あれ何なんですか。映画終わって劇場にライト付いた瞬間周りがざわざわしてましたよ。続編でもあるんですか次は五右衛門が主役ですか。

 最後に、個人的に不二子ちゃん襲ってる使徒みたいなメカをヤエル奥崎がどんな顔で作っているのか考えるとせつないというのが印象に残りました。あれは依頼されて作ったのか、それとも奴の趣味なのか、その辺はどうだったのかはよくわからない。