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傍線部Aより愛を込めて ~映画の傍線部解釈~

主にひとり映画反省会。人の嫌いなものが好きらしい。

感想「不安の種」

邦画 ホラー

 ぼくのいえには、オチョナンさんがいます。

 

不安の種 [DVD]

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【あらすじ】

 大学生の誠二は学校に通うために富沼市にやってきてから不思議なことに見舞われる。彼女の陽子は幼少期の体験により霊が見えるなどと言う。バイク便ライダーの巧はある日生垣に半身を捕らわれた不思議な男性を助けようとして、怪奇現象に見舞われる。この街はどこかおかしい。同名短編ホラー漫画の映画化。

 

【感想】

 久々に良質でガチっとしたホラーを見た気分です。でもこれは原作が本当に良くできていて怖い。ほとんどバラバラのエピソードをつなぎ合わせた脚本は本当に頑張ったと思う。個人的に好きなエピソードがピンポイントで映像化されていたのでそのあたりは大満足です。具体的には生垣ライダーとマネキンの手ですね。この作品は「よくわからないものに対する恐怖」を描いたものだから投げっぱなしでいたほうが絶対良かったと思うけど、ひとつの作品にする都合でエピソードをつなげたのは仕方ないけどある意味恐怖半減だったかもしれない。

 

 

 でも原作の生理的に嫌悪感しかない化け物はそんなになかった印象。どっちかというとじわじわビックリ系のテイストになっていたり、何故かわけわかんない長回しのシーンがあったり、不安になると言えば不安になる感じだった。でもクライマックスの場面は「よくあるよなあこういうシーン」みたいに予定調和になっていた気がする。細部がとっても凝っていたからラストまでこの調子で突っ走るかと思ったけどそうでもなかった。でも映画であの原作の投げっぱなし表現はできないから、しょうがないか。


 不安になる要素のほかに、この作品は時間移動がクソみたいに複雑で「え、今どのシーン?」と思うようなところが多い。大体冒頭で明らかになっている結末と実際の結末が違うのだから、ある意味物語の禁じ手をやっている気がする。冒頭で示されたひとつの結末に向かって進む物語が途中でひっくり返って、在り得たかもしれない予定調和の未来が待っている。正直予定調和が途中で崩された時は「おお!」と思ったけど、そこから先が本当に予定調和な演出だったのが残念。もっとぐちゃぐちゃにひっくり返してもいいのに、と思った。


 そしてこの映画の見どころと言えば「おちょなんさん」なんだけど、正直DVDで見たとき「釣り目おちょなんさん」が見えなかった……わざわざ巻き戻して「おちょなんさん」を確認したくらい。彼こそ「ビックリ系」で出してもいいと思うんだけど、意外とじわじわ系な演出でした。できればOPあたりに彼をぶっこんでもよかったのかなあと思います。目玉大行進も面白かったけどね。あの不協和音わらべ歌も狙いすぎてて逆に気持ち悪かった。歩くのも走るのも這うのも舞うのも大嫌いなら、一体何をしているんだろう。ただそこにいるだけなのかなぁ。「不安の種」の化け物の気持ちはそんなものかもしれない。


 最後に俳優陣。陽子役の石橋杏奈の壊れ演技が非常によかった。もっとそのあたりにスポットあてた映画あったら見たい。あの演技は100分見ていても飽きない。そして誠二役が「人にやさしく」の須賀健太でびっくりした。ああ、大きくなったなあと。彼は今週末公開の「青鬼」にも出るし、そういう方面で売り出すのかな。個人的には結構ホラー巻き込まれ主人公似合うと思うので期待。