傍線部Aより愛を込めて ~映画の傍線部解釈~

主にひとり映画反省会。人の嫌いなものが好きらしい。

感想「ハンナ」

 僕はただ地上波放映の映画を消費しただけだよ。

 

 

【あらすじ】

 フィンランドの極北部の森に住むハンナは、元CIAの父エリックによってサバイバルや戦闘の訓練のみを受けて生きてきた。時が来たことを悟り、エリックはハンナに通信機を作動させる。彼らの目的はエリックのかつての上司マリッサを殺すことだった。先に小屋を出たエリックを捕えに来た部隊によってハンナは捕えられてしまう。モロッコの施設に拘束されたハンナはからくも脱出するが、そこで自分の身体検査の調査結果を手に入れるのだが、そこには「ABNORMAL(異常)」の文字があった……。


【感想】

 美少女が殺し屋として生きてきたという設定だけで見ちゃうようなアクションスリラー。潜んでいたのがジャングルじゃなくて雪原と言うところも個人的に良ポイント。トナカイに矢を射かけてしばらく歩かせた後に、「心臓、はずしちゃった」と頭をパーンと打ち抜くハンナ。そして真っ赤なタイトル画面。この辺りのエリックに仕込まれるハンナのシーンだけで半分くらいあってもよかったかも。でもシロナガスクジラの説明(精巣には30Lの精液があるらしい)とか必要あったんだろうか……?


 そしてCIAがやってきてハンナが連行されるのですが、この敵役のマリッサも悪役っぷりがかなりサマになってます。こういう記号的な悪役は大好き。ハンナはマリッサの影武者を殺して脱走しますが、この辺の描写ははっきり言って「適当(いい加減)」です。とにかくハンナが施設の外に出ればいいやという感じです。トラックの下にしがみつくハンナとか、謎ポイントだらけです。

 

 さて、基地から出ると一面の砂漠。そのうち、キャンプに来ていたソフィーという女の子に出会います。その後何とか逃げ切ってとある宿に身を寄せます。そこで初めて電化製品に触れて「鉄のイノシシじゃあ!」状態になるハンナ。このシーンも好きですね。文明社会に初めて触れる描写って基本的に大好きなんですが、そのたびに百科事典の項目を暗唱するハンナがちょいかわいい。

 

 ちなみにこの子、「音楽」を知らないんですよ。「音楽、音の組み合わせでとても情緒的」とかそんな情報しか持っていない。その理由もその後になんとなくわかるシーンもあるのですが、ちょっとエリック、その辺の育て方はどうなんだろうと疑問に思ってしまう。「そんな電気初体験状態でどうしてCIAの基地から逃げられたんだろう……?」細けえことはいいんだよ!


 その後ハンナはいろいろあってソフィーの家族についてフランスまで送ってもらうことになります。個人的にこの家族のお母さんが割とウザキャラですね。「お化粧はしないの。口紅は女性器を模している」と食事中に言う精神が淑女じゃありません。学者肌はそういうものなんでしょうが、母ちゃんとしては微妙です。でも、ソフィーはむちゃくちゃいい子でかわいいです。年頃の背伸びしたい「普通」の女の子の感じが全面に出ていて、「異常」のハンナと好対照になっています。ハンナを誘ってスペイン人の男の子たちとイチャイチャしているシーンとか「私、初めてドキドキしている!」という感じがやっぱり良いです。キスで使う筋肉の暗唱をするハンナは個人的に笑えるシーン。こういうちょっとロボ子的なところが好きです。


 一方マリッサはオネエな闇の仕事屋を雇い、ハンナを尾行させる。この人たちやたらと関わった人たちを殺していく。そんなにバンバン殺しちゃ趣がないよ、と思う。この映画の興ざめ点はとにかく人が簡単にたくさん死んでいくところ。ハンナに宿を提供したおっちゃんとか、ハンナの祖母とか、簡単にパキパキ殺していくもんだから恐怖も麻痺していきます。ハンナと別れたソフィー一家がどうなったのかはわかりませんが、この調子でいくと残念なことになっていそうです。ところでソフィーは目の前でハンナが追手を殺すところを見ちゃって相当ショックを受けているのですが、殺人事件を毎週解決している小学生の探偵君はPTSDとか負わないのかなーといつも不思議に思うのです。


 ついにドイツで最終決戦の前に、エリックと再会したハンナ。これまでのことで自分の出自に疑問を抱いてしまいます。簡単に言うとハンナは極秘実験により遺伝子操作で殺人マシーンとして生を受け、その実験の終了とともに処分されるところをエリックに連れられて母と一緒に逃げるところをマリッサに母だけ殺されたということだったそうです。「私は普通の人間じゃないんだ!」と専門的に言うところのイヤボーン化するハンナ。そんなこんなでオネエの暗殺者が迫ってくる。エリックは「ハンナ、逃げるんだ!」と死亡フラグ満々の台詞を残し、オネエはぶっ倒したけど駆けつけたマリッサに殺される。最終的にハンナとマリッサの一騎打ち。ハンナはゴム矢をマリッサの腹部にぶち込むけど、腰に銃弾を受けてしまう。マリッサは腹に矢をぶっ刺したまま逃げるけど、追いついたハンナはマリッサの銃を持って、冒頭の台詞を吐いて、真っ赤なタイトル画面。エンド。


 総評すると、いろんなところに突っ込みどころはたくさんありますが、「ハンナ役のシアーシャ・ローナンのロボ子演技かわいい」で終始乗り切れる萌え映画です。アクションの面ではキレッキレかというとそうでもないのであんまり期待しないほうがいいです。でもエリック役のエリック・バナの動きはカッコよかったです。

 

 あと見どころはマリッサ役のケイト・ブランシェットが神経質に鬼みたいな顔で歯を磨いているシーンですかね。あれは演技力の勝利です。めっちゃ怖いです。メインキャストが頑張っているのでそれなりにバランスとれている映画でした。最後の演出は定番と言えば定番ですが、あのくらいベタなくらいでちょうどいいんです。正直大してロボ子じゃないんですが、知識を機械的に暗唱して「知っている」と言っちゃうようなキャラクターが好きな人にはおススメです。