傍線部Aより愛を込めて ~映画の傍線部解釈~

主にひとり映画反省会。人の嫌いなものが好きらしい。

感想「ひきこさんvs口裂け女」

 少しずつJホラー強化月間開催します。

 

ひきこさん VS 口裂け女 [DVD]

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【あらすじ】

 事故により十年間昏睡状態にあった女性二人が目を覚ました。「ひきこさんが来る」と怯える二人を当時の友達が看病するが、彼女らは常人には見えない何者かに怯えている。ついに一人が発狂し病院から脱走、閉鎖病棟へ逃げ込むがそこには「口裂け女」が封印されていた。彼女を探しに来た看護婦により解き放たれた「口裂け女」と「ひきこさん」の都市伝説最強の座をかけた戦いが始まる。


【感想】

「みんなひきこさんにひきずられて死んじゃったの!」
「アタシ、きれい?」


 「あそこに奴が!奴が!」と怯える人に「そんなもの存在しないんだよ」と否定すると死亡フラグだから、たとえ狂人だと侮っても「そーですねー」といいとも返事をしておくのが無難であるよ。いつ如何なるときそういう事件に巻き込まれるかわからないので、振る舞いはきちんとしようと思いました。あと下手に証拠を掴んで動き回るのも危険です。知らんぷりも大事です。


 さて、都市伝説史上最強の女性がキャットファイトをするというのが本作の醍醐味ですが、物語が進みはじめるのが55分ころ、そこから物語が怒涛のように進んで90分で終わるのですから、これも一つの様式美として生暖かく見ておくべきですね。また、往々にこういう作品は女の子のイチャイチャが描きたいだけのシーンが存在しがちで、この作品にも「このシーンいらなくね?」という場面が多めに存在します。そういうのはひとつの醍醐味として気にしないことですね。


 この作品は口裂け女の誕生を「整形失敗説」によって作っていますが、それにしても生成過程がひどすぎる。「どうしてこうなった」的なキャラ配置が気になりますがそれもご愛嬌。あと胸部から大量出血しているのに己の罪の告白を長々と行う婦長の生命力がパねぇ。口裂け女のかわりにひきこさんと戦えるんじゃね?


 辛抱して待っていた肝心の対決シーンですが、かなりあっけなく終わりました。なんか唸り声みたいな声にならない雄叫びが「うううええええおおおおお」と流れているだけであとは組み合っているだけというもう少し何とかならなかったのかという絵柄。絵をみて恐怖より二日酔いの翌朝のテンションを思い出してしまいました。あの唸り声、絶対トイレで「もう二度と飲みません」って言ってる人の唸り声と一緒だよ。


 この映画の見どころは「ひきこさんを頭の中から追い出すよ!」のシーンと「ひきこさんを召喚!クズな親父を倒した!」のシーンくらいで、特に後者は怖いはずの映画なのに手を叩いて笑えるようなテンポの良さがあって、「これただのスプラッタコメディだ」と開き直れる潔さがありました。


 一言で表すと「様式美」が詰まった夢のある作品でした。怖いのが苦手な人でも平気です。ちょい血がバンバン出てくるシーンもありますが、あとはおねーちゃんたちが「うおええええ」って絡み合ってるだけですから。「なーんだJホラーって怖くないんだー」とか思って「感染」とかに手を出すと死にますけどね。次は「フレディVSジェイソン」を見てみよう。結構似たようなところがあって面白いぞ。


 まるで関係ありませんが、本作で口裂け女の本名を「カシマレイコ」としていましたが、カシマさんと口裂け女は一応別の妖怪です。このあたりもいい加減なあたりがまた愛おしい作品ですね。